九州アジアリーグに参戦2年目の北九州下関フェニックスが熱戦を繰り広げています。
2023年シーズンはホームゲーム、ビジターゲームを39試合ずつ、計78試合を戦います。7月2日(日)の試合が39試合目で、ちょうど半分を消化しました。
そこで、北九州下関フェニックスの2023年シーズン前半戦の戦いを振り返ってみたいと思います。(数字は全て7月2日の試合終了時のものです)
北九州下関フェニックスは、2021年に実業家・堀江貴文氏が設立。2022年シーズンから「福岡北九州フェニックス」としてヤマエ久野・九州アジアリーグ(当時)に参戦しています。初年度の成績は39勝35敗で3チーム中2位でした。2023年度は本拠地に山口県下関市を加え、「北九州下関フェニックス」と改称してヤマエグループ・九州アジアリーグに参戦しています。
フェニックスを率いるのは、千葉ロッテマリーンズ、ミネソタ・ツインズ、阪神タイガースで活躍した「幕張のスピードスター」西岡剛監督。選手も兼任しており、2022年シーズンは開幕戦を含む25試合に出場。2023年シーズンも7月2日の試合で今季初出場を果たしました。初打席で初打点を挙げ、元気な姿を見せてくれました。
北九州下関フェニックスは2023年シーズン、39試合を戦い、18勝17敗4引き分けの成績を残しています。勝率は.514で、昨年度独立リーグ日本一の首位・火の国サラマンダーズと7.5ゲーム差の2位です。(2023年7月7日現在)
今年の北九州下関フェニックスは宮崎県都城市で開幕戦を迎えました。
3月18日(土)、19日(日)に今季より新たに参戦した宮崎サンシャインズとの2連戦を行い、12-1、5-2と連勝しました。
開幕戦には昨シーズン11勝を挙げた荒巻千尋投手(背番号34)が先発。今季から参戦した新球団・宮崎サンシャインズを相手に5回までパーフェクトピッチングを披露しました。
続く第2戦には、昨季まで香川オリーブガイナーズでプレーした橋爪海人(背番号18)が先発しました。初回に本塁打を許しましたが、6回を被安打3、2失点と粘り強い投球でチームの連勝に貢献しました。吉岡翼選手(背番号28)が4打数4安打と大活躍。
都城市での開幕戦を連勝で飾ったフェニックスは、2週間後に本拠地(北九州市・下関市)でホーム開幕戦を行いました。
4月1日(土)は北九州市民球場に大分B-リングスを迎えての試合が行われました。始球式には武内和久市長が登場。
試合は先発・大江海透投手(#17)の好投と、元巨人の平間隼人選手(背番号0)の活躍で、4-1でフェニックスが勝利しました。
翌4月2日(日)には、今季より本拠地に加わった下関市・オーヴィジョンスタジアム下関での試合でした。先発の元中日・タバーレス投手(背番号99)から荒巻投手、橋爪投手、本野一哉投手(背番号14)とつなぎ、大分B-リングスに得点を許しませんでした。最終回に吉岡選手がサヨナラ安打を放ち、1-0と劇的な勝利。開幕4連勝としました。
ここからは、選手の個人成績を振り返ります。まずは投手編から。
大江 海透投手(背番号17)防御率 2.74(リーグ4位) 4勝(リーグ4位タイ)1セーブ
3月のオープン戦で自己最速の152キロをマークするなど、順調な仕上がりを見せた大江投手。ホーム開幕戦と翌週の試合で2勝を挙げるなど幸先の良いスタートを切りました。5月以降は中継ぎでの登板が目立ち、6月27日(火)のホークス4軍戦では初セーブを挙げ、翌28日(水)の同カードでは、サヨナラ勝ちを呼び込む好投を見せ勝利投手となりました。
荒巻 千尋投手(背番号34)防御率 3.39 5勝(リーグ2位タイ)2敗
今シーズンの開幕投手を務めた荒巻投手。今シーズンも持ち味のチェンジアップが冴えわたり、前半戦で5勝をマークしています。(7月2日終了時)。粘り強い投球が身上で、得点圏にランナーを背負っても冷静に後続を断ちます。野球を離れると、ヘアカット(散髪)を得意としており、Instagramでその様子を見ることができます。
松本 直晃投手兼任コーチ(背番号66)防御率 3.86 2勝3敗 5セーブ(リーグ3位)
昨シーズン、20セーブを挙げリーグのセーブ王となった松本投手は今季は投手コーチを兼任。大学卒業後、軟式野球チームを経て独立リーグ、NPB(西武ライオンズ)とステップアップしながら得た経験を、若手投手陣に伝えています。シーズン当初は昨シーズン同様にクローザーを務めていましたが、台所事情の関係で6月18日(日)の宮崎戦と27日(火)のホークス4軍戦では先発を務め、それぞれ勝利投手となりました。
本野 一哉投手(背番号14)防御率 2.42 2勝2敗 13ホールド(リーグ1位)
昨シーズン、チームトップの13ホールドポイントを挙げた本野投手、今シーズンもセットアッパー中心の登板です。開幕前に「最優秀中継ぎのタイトルを狙う」と話していましたが、前半戦を終え、早くも昨シーズンの数字を超える15ホールドポイントをマークしています。今シーズンは自己最速の149キロをマークするなど好調の本野投手。26イニングで32個の三振を奪っており、奪三振率の高さにも注目です。
櫻井 政利投手(背番号21)防御率 5.35 2勝4敗
高2夏に甲子園に出場し、同年秋の国体で全国制覇を経験した櫻井投手がローテーションの一角を担います。独立リーグ初のプレーとなった昨シーズンは調整に苦労している部分も見えましたが、今シーズンはその不安も解消。5月14日(日)の火の国戦以降は先発での登板が続いています。6月13日(火)の宮崎戦では、あわやマダックス(100球以内での完封勝利)達成なるかという好投を見せました。
橋爪 海人投手(背番号18)防御率 3.57 0勝2敗 2セーブ
開幕第2戦に登板した橋爪投手ですが、以降はセットアッパーを務めることが増えました。6月16日(金)、17日(土)の宮崎戦ではともに9回に登板。2日連続でセーブを挙げ、クローザーという大役を見事に務めました。
北見 春介投手(背番号29)防御率 6.43 1勝1敗 3ホールド
昨シーズン、クラブチームの福岡ベースボールクラブでプレーしていた北見投手がトライアウトを経てフェニックスに入団しました。4月7日(金)の初登板以降、徐々に安定感のある投球を見せるようになり、勝ちパターンでの登板も増えてきました。韓国語を勉強しており、チームの韓国人選手とコミュニケーションを取るシーンをよく目にします。
ここからは打者の成績を振り返ります。
大河選手(背番号23)打率.386(リーグ1位) 23打点(リーグ4位タイ) 11盗塁
秀岳館高校(熊本)時代に甲子園春夏連続ベスト4という成績を残し、高校ジャパンにも選ばれた元横浜DeNAの大河(松尾大河)選手が今シーズンもフェニックスでプレーしています。開幕から4番に座り、前半戦の打率はリーグトップの.386。6月18日(日)は2月に誕生した愛息の前で6打数5安打の固め打ちを見せました。盗塁も積極的に試みており、早くも昨シーズンを超えた11盗塁をマーク。
平間 隼人選手(背番号0)打率.358(リーグ4位) 26打点(リーグ2位) 5本塁打(リーグ1位タイ) 18盗塁(リーグ2位)
元巨人の平間選手が、随所に元NPBらしいプレーを見せています。開幕戦は3番に座り、以降の試合でも上位打線に入ることが大半です。都城市での開幕カードこそノーヒットに終わったものの、以降はヒットを量産。打率.358はリーグ4位です。また、5月3日(水)の宮崎戦で今シーズン第1号をマークすると、以降コンスタントにホームランを放ち、現在はリーグトップタイの5本塁打を記録しています。守備範囲も広く、再三にわたりチームのピンチを救いました。
薮 怜汰選手(背番号10)打率.253 17打点 4本塁打(リーグ3位タイ) 7盗塁
昨シーズンは同リーグの大分B-リングスでプレーした薮選手が今季から地元・北九州市でプレーしています。長打力と機動力を併せ持っている選手で、前半戦だけで4本の本塁打をマーク。盗塁こそ7個ですが、積極的な走塁が目立ちます。左投手相手の打率は.346と、サウスポーを得意にしています。
イスラエル・モタ選手(背番号33)打率.321 9打点 4本塁打(リーグ3位タイ)
昨シーズン、火の国サラマンダーズに在籍し本塁打王に輝いたモタ選手が、シーズン途中にフェニックスに加入しました。モタ選手の魅力といえばやはり長打力でしょう。入団4試合目となった5月21日(日)の古巣相手の試合では3打席連続ホームランを放つなど、実力を存分に発揮しています。怪我のため欠場が続いていますが、復帰すればフェニックス打線が大いに厚みを増すでしょう。
吉岡 翼選手(背番号28)打率.333 17打点 1本塁打 15盗塁(リーグ3位)
福岡大学時代に首位打者を2度獲得し、昨年もシーズン終盤までリーグ首位打者を争った吉岡選手。オフにはホークスの牧原大成選手、野村勇選手、嶺井博希選手らと一緒に自主トレを行い今シーズンに臨みました。開幕から5戦で17打数11安打という成績を残すなど今季も好調です。盗塁も既に15個決めており、シーズン前に掲げた「100安打と盗塁王」という目標に向け着々と数字を積み上げています。
宇土 憲伸郎選手(背番号6)打率.280 19打点 1本塁打 13盗塁(リーグ5位)
長崎・創成館高校出身の宇土選手もフェニックスで2年目のプレーとなりました。昨年はセンターでの起用も目立ちましたが、今シーズンはショートに定着。チャンスを作る側の選手として果敢に次の塁を狙っており、13盗塁はリーグ5位の成績です。持ち味の積極的なプレーで、目標とするリーグ優勝と打率3割を目指します。
コウキ選手(背番号77)打率.295 3打点 1本塁打 3盗塁
コウキ(松田康希)選手はシーズン開幕後の4月30日に入団。昨シーズンはアメリカ・カンザス州の独立リーグのチーム・Gardencity Windでプレー。.476とハイアベレージを残しています。セールスポイントはアメリカ仕込みのバッティングで、長打力とミート力に注目です。コウキ選手は今どきの選手には珍しく、バッティンググローブを着けずに打席に入ります。「バットに松ヤニを塗って土を混ぜていくと手触りもよく、パワーが湧いてくるように感じます」とのことです。
和希選手(背番号26)打率.294 18打点 1本塁打
昨シーズン、BCリーグの武蔵ヒートベアーズでプレーした和希(中村和希)選手が開幕前の3月にフェニックスに入団しました。NPB(東北楽天)でのプレー経験を持つ和希選手のセールスポイントは力強いバッティングで「打席では強く振ることをずっと大事にしています」と話します。難しいボールも器用に弾き返す和希選手のバットコントロールは一見の価値ありです。
中村 道大郎選手(背番号1)打率.327 13打点 1本塁打
フェニックスの初代キャプテン・中村道大郎選手は2年目の今シーズンも元気にプレーしています。守恒中学校から戸畑高校に進んだ“純地元”の選手です。キャプテンとしてグラウンド内でチームを引っ張るだけでなく、グラウンド外での活動も積極的に行っています。今季も開幕からスタメンに定着。目標とする打率3割2分をキープしています。
宮本 貴章選手(背番号27)打率.257 5打点 1本塁打
右の長距離砲・宮本貴章選手。昨シーズンは開幕戦と最終戦にホームランを放ちました。今シーズンはオープン戦初戦で4番に座り、開幕戦の宮崎戦でホームランを放つなど、オフに大河選手とともに打撃改造に取り組んだ成果を見せています。ここ最近は出番を減らしていますが、一発で試合の流れを変えることのできる選手ですので目が離せません。
開幕時は荒巻投手、橋爪投手、大江投手らで先発を回していましたが、現在は主に荒巻投手、櫻井投手、タバーレス投手らが先発を務めます。日程がタイトな時期は、守護神の松本投手が先発に回ることもありました。
リードしている試合の終盤は、橋爪投手、本野投手、大江投手が登板します。試合の状況等に応じて登板順が変わりますが、安定感抜群の3投手ですので、勝利がグッと近づいてきます。
真っスラが持ち味の豊山礼央投手、投げっぷりの良い高良一成投手、安定感のある藤本亮太投手、力強いストレートが印象的なパク・シオン投手、そしてGMと投手コーチ補佐を兼任する金本享祐投手も控えています。投手起用にぜひご注目を。
今季、フェニックス捕手陣は武蔵選手、田中歩選手、藤木貫太選手、霜門佑哉選手の4名体制です。主に武蔵選手がスタメンマスクを被りますが、田中選手や藤木選手がスタメンに名を連ねることも増え、レギュラー争いが激しくなっています。
武蔵(渡邉武蔵)選手(背番号9)
田中歩選手(背番号5)
藤木貫太選手(背番号25)
内野手はサードが大河選手、ショートが宇土選手、そしてセカンドが平間選手とほぼ固定されています。ファーストは主に中村選手が起用されていますが、長打力が魅力の高橋駿選手が出場するケースも。今後はモタ選手が守ることもありそうです。パワフルな打撃が持ち味のユン選手もスタメンを狙います。今後は、西岡兼任監督が守備につくこともあるかもしれません。
今季のフェニックスは外野に好選手が揃いました。
怪我で欠場していた時期を除いて、ライトは吉岡選手でほぼ固定されていますが、レフトのポジションを和希選手、コウキ選手、積極的なバッティングが持ち味の鈴木理央選手が、センターを薮選手と機動力抜群の中田航大選手、そしてパワフルなプレーが魅力の横山晴人選手が激しく争っています。好調な選手が起用されるケースが多いようです。