「北九州市の“人”をもっと知る」インタビュー企画・KITAQ Style 1000Project。
第1回は料理人・廣口宗寛さんをご紹介。
廣口さんは現在、小倉北区・ちゅうぎん通りの「Future Studio」を中心にフリーランスの料理人として活動中。昨年(2021年)11月に開催された、日本酒に合うペアリング料理を創作するコンテスト「The World’s Best Sake Pairing」で優勝し、注目度も高まっています。廣口さんが描く「未来の料理人像」とは?詳しく話を伺ってきました。
廣口 宗寛
1986年北九州市生まれ。高校入学と同時に料理の道へ進む。料亭、割烹などさまざまな店舗を経て独立。現在はちゅうぎん通りの「Future Studio」での料理の提供を中心に、オリジナル商品の開発やイベントの企画など、従来の料理人の枠を超えた活動を精力的に行っている。
まずは、14の国と地域(日本、アメリカ、フランス、ベルギー、ドイツ、イタリア、イギリス、中国、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ)から100名を超えるシェフや料理研究家が参加したという「The World’s Best Sake Pairing」について話を伺いました。
ーー「The World’s Best Sake Pairing」での優勝、おめでとうございます。
ありがとうございます!
今回(2021年)のテーマ「日本酒と牡蠣のペアリング」に合わせて5つの料理を応募し、1位と4位を獲りました。
1位を獲ったのが「牡蛎 玉露煮 有明海苔 赤味噌 ソース」、4位が「牡蛎 鯖魚醤 漬け」です。
1位の「牡蛎 玉露煮 有明海苔 赤味噌 ソース」は、料理でいうところの“出会いもの”の考え方でレシピを考案しました。
“出会いもの”とは、同じシーズンに出回る旬の食材の組み合わせのことをいいます。昔から日本で使われている考え方で、わかめ(海)とたけのこ(山)の掛け合わせなどがこれにあたります。
今回は、佐賀県産の牡蠣を嬉野(佐賀県)の玉露茶で低温調理しました。ソースには有明海の海苔と赤味噌を使用。日本酒は佐賀県の東一(あずまいち)を合わせました。海~海岸~畑~山というものを意識しています。
コンテストへは、エントリーできる最大の5作品を応募しました。
すごく自信があったものと確実に美味しいだろう、というものは落選し、2作品くらいトリッキーな料理が交じってもいいだろうと考えて作ったものが両方とも入賞して驚きました。
ーー「ペアリング」とはどういうものなのでしょうか?
ペアリングはよくマリアージュと混同されますが、僕が考えるペアリングはマリアージュのように口の中だけで完結するものではありません。
例えば、日本酒の味と牡蠣の味が合うという話はマリアージュです。ペアリングは産地や“考え方”が合うものを指していると思っています。また、味が全てではなくて、「おいしそう」と思えるかどうかも込みだと思っています。
今回応募した作品では、佐賀の日本酒には佐賀の牡蠣を合わせ、同様に宮城、広島、福岡のもの同士でペアリングしました。
ーー残りの3つの料理についても教えてください
ひとつめは宮城の牡蠣と、ウニを使ったソースを組み合わせた「牡蠣 雲丹ソース みりん卵黄仕立て」です。日本酒も宮城県の一ノ蔵さん。金のラベルと卵黄の黄色で色も掛け、ペアリングに味だけじゃなくて色の概念も持ち込んでみました。
熟成させた牡蠣としゃりに、自作のわさびを合わせた「赤酢 牡蠣寿司 熟成わさび」です。日本酒は奈良県の花巴。日本酒をさらに発酵させて作るので、紹興酒のような味わいです。
牡蠣の殻を殺菌海水で煮詰めて作った塩に北九州市の蔵元・天心さんの日本酒「音~OTO~」と小倉織を合わせた「牡蠣塩 【オイスターソルト】」です。この塩をグラスにつけて、ソルティードッグのように日本酒を飲むんです。
ペアリングって全てが食べ物だと思うなよ、という挑戦です。僕の中では牡蠣からとった塩も牡蠣なんです。
いちばん自信があったのですが、結果は落選。このペアリングは少し先取りしすぎたのかもしれません。
ーーコンテストに優勝して身の回りで変化などありましたか?
周りの皆さんがとても喜んでくれました。
でも、「牡蠣の料理コンテストで賞を獲った」と伝わっているのかもしれません。そうじゃなくて日本酒と牡蠣のペアリングで賞を獲っている、ということを伝えられればと思っています。
これまでにも何度もコンテストに参加していましたが、なかなか良い結果に結びつきませんでした。
今回ようやく1位を獲れたので、今後もコンテストに出やすくなりました。仮に次のコンテストに落ちても、気落ちすることなく積極的に参加しようと思います。
あと、優勝特典の酒蔵ツアーで、山形の酒蔵「出羽桜」さんとオンライン対談しました。自分が知ってて美味しいと思っていた出羽桜さんと話すことができてとても嬉しかったです。