北九州下関フェニックス 竹森 広樹球団社長インタビュー

2022年よりプロ野球独立リーグ・九州アジアリーグに参入しているプロ野球チーム「北九州下関フェニックス」の竹森 広樹社長にお話をうかがいました。第2回目のインタビューでは、「北九州下関フェニックス」の運営に関して、現在お考えになっていることをお聞きしました。第1回目インタビューはこちら

北九州下関フェニックスの2シーズン目となる2023年シーズンは、43勝28敗で昨年と同じくリーグ2位という結果でした。
竹森広樹球団社長は「より地域の皆さまに愛される球団を目指し、魅せる試合を運営することと様々な地域貢献活動を行うことに注力しました」と2年目のシーズンを振り返りました。

今回は竹森社長に、北九州下関フェニックスの運営についてお話をうかがいました。

フェニックスが目指すもの

これまで北九州で2年間プロ野球チームを運営してきましたが、地域の方に支援していただける価値のあるチーム作りがまだ十分にできていないと思っています。スポーツチームの力で北九州下関地域を盛り上げ、しっかりと地域に貢献していきますということをお伝えするのが来季以降の課題です。

今後、球団が力を入れていきたいことのひとつに、「子ども向けスポーツ教室」があります。
球団のスポーツ教室というとボーイズリーグなどの子どもに野球を教える、というものをイメージしがちなのですが、今は運動しない子どもも多いので、普通のスポーツ教室の中にボールの投げ方や走り方など、野球の要素をちょっと入れるだけでいいと思っています。

野球のボールではなく、バドミントンの羽根を投げてもいいと思うんですよ。フェニックスのジョニーコーチも、特殊な羽根を練習に活用しています。子どもたちも、飛んできた羽根を取るだけなら誰でも楽しくできるんじゃないでしょうか。

人口が減ったとはいえ、北九州にはまだ90万人以上住んでいるので、小学生も中学生もたくさんいるんですよ。スポーツ教室に参加した子どもたちが選手のファンになって、「あのときに教えてくれた選手が所属しているチームの試合を今度の休みに見に行こう」と興味を持ってもらうのが、すそ野の広がりだと考えています。

チームの目標として掲げている「地域貢献」については、このような子どもたち向けのものを大切にしつつ、やはり「プロスポーツ」のチームなので、本業である野球の成績でも地域に貢献していきたいと思っています。

フェニックスの新本拠地・下関市

新本拠地・下関では13試合を10勝1敗2分けという好成績。サヨナラ勝ちも4度ありました

2023年から北九州市に加え、山口県下関市が本拠地に加わりました。2023年夏の「市報 しものせき」でフェニックスの選手情報を掲載していただくなど、下関市にはさまざまなご支援をいただきました。

今年、オーヴィジョンスタジアム下関でベイスターズとホークスのファームの試合が行われたときに、ホークスベンチがある三塁側だけでなくベイスターズの一塁側スタンドにもお客さんがたくさん座っていて、下関市の野球熱の高さに驚きました。今後も下関市の皆さま方や前田下関市長と協力しながら、フェニックスを下関でも愛される球団にしたいと思います。

フェニックスのお客様

的場池球場で三塁コーチャーズボックスに入る西岡剛兼任監督(2022年9月撮影)

TwitterやInstagramで情報をチェックしないような年齢層高めの方が、フェニックスに意外とハマってくれているんです。
2022年のシーズンで、的場池球場(八幡西区)で北九州市民の招待を行ったときは、普段の北九州市民球場の客層とは全く異なる、近所に住む野球好きの年配の方が暑い中楽しそうに試合を観てくれました。

現状、この年代のお客様に情報を届けるには、市政だよりでの告知や新聞広告を出すのが効果的だと思います。この方たちにフェニックスの試合をまた楽しんでいただけるよう、しっかりと情報を届けていきたいですね。

フェニックスが取り組む情報発信

1年目のシーズンが始まる前に長崎県平戸市でキャンプを行ったとき、地元の人たちを中心に100人くらいの人が見に来てくれたんです。そのときに、お客様にお伝えできる選手の情報がなかったので、急いで職員に選手一覧を作らせて、コンビニでコピーして配ったら相当喜ばれました。名前と年齢、背番号、出身校を書いているだけなのですが、やはり情報があるとより選手を身近に感じ応援できるということを改めて感じました。

今年、若手職員を中心にYoutubeで「2軍ちゃんねる」というチャンネルをスタートしました。登録者数が実際のファンの数だと思っていて、登録者数を増やそうと試行錯誤を重ねている最中です。

いずれは、福岡ソフトバンクホークスが運営している「ホークスTV」くらいのクオリティで試合の夜にダイジェストを流せるようになりたいですね。そうすれば、フェニックスに関心を持ってくださる方も増えると思います。

フェニックスのファンサービス/ファンクラブ

ホームゲームの試合後には選手によるお見送りが行われています

ホームゲーム終了後の選手によるお見送りは好評です。お客様も最初は恥ずかしそうにしていましたが、すぐに慣れたようです。そうして選手と仲良くなったお客様は、お見送りの後も選手とずっと話しているんです。この距離感が独立リーグの魅力のひとつだと思います。
ファンクラブもかなりお得な価格設定にしているので、ぜひご加入ください。

フェニックスの将来構想

この2年間、北九州市民球場やオーヴィジョンスタジアム下関をはじめ、さまざまな球場を利用させていただき、改めて自前で球場を持つ必要性を感じているところです。

自前で球場を持っていれば、昼間の練習を見に行って選手と話すことも簡単にできます。ピッチャーと話して「今度、この試合で投げるんですよ」と言われると、じゃあ見に行ってみようか、となりますよね。

試合の日に音楽ダンスイベントやウォーターサバゲーなどをするのも楽しいでしょうし、スタンドにテントを張って家族でバーベキューを楽しみながら観戦するなど、新しい試みにもチャレンジできます。自前の球場を持っているといろんなチャレンジが可能になります。

フェニックスと「街」

2023年3月には旦過市場で出陣式を行いました。

Jリーグのチームには、地方都市で活動していても東京の企業がメインスポンサーを務めている、という事例が少なくありません。それが悪いことだとは思いませんが、やはり地域に根ざし、地域貢献して地域を盛り上げていきましょうっていうのを旗印にするのであれば、やはり地域の企業がお金を出し合って、おらが街の球団、おらが街のチームにする、というのが理想的です。そして、それが成り立つ仕組みづくりをしていかなければならないと強く思っています。

私も最初はここまで球団に携わる予定ではなかったのですが、実際に当事者として入ると、試合中に一喜一憂するようになり、かなり試合にのめり込みます。お金を出すことでチームの様子が気になり自分ごととして応援するようになりました。

地元の企業がフェニックスの選手を会社の人みんなで応援するという輪がたくさんできると、その輪が、選手たちとスポーツ教室などを通じて係わった子供たちの輪など地域でできた色々な輪と重なり合って、街にもフェニックスにも大きな変化が期待できるのではないでしょうか。