北九州市に来たばかりで知り合いがいない、などの理由で、いわゆるソロ活を余儀なくされる機会も多々あるかと思いますが、初めてのお店に一人で入るのはなかなか勇気がいるものです。
そこで、一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のカウンターのあるお店をご紹介していきたいと思います。
店主さんとおしゃべりしたり、他のお客さんと仲良くなったり。 “一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。
【café CACTUS】
最初の一歩
小倉駅から旦過市場までアーケードが続き、老舗から新店舗まで様々なジャンルのお店で賑わっている、魚町銀天街。その銀天街の旦過市場側の入り口からほど近くにある『中屋ビル』は、魚町銀天街と並行する魚町サンロード商店街を貫く形で立っており、その1階に【café CACTUS】があります。
魚町銀天街と魚町サンロード商店街を結ぶ小さな通路の途中にあるカクタスは、ちょっと隠れ家的な雰囲気。ですが、ガラス越しに中の様子が見えるので入りやすく、何よりショーケースに並ぶケーキやお菓子につい引き寄せられます。コロナを経てレイアウトも少しずつ変更し、現在は少なめの座席数になっているので、ゆっくりと過ごすことができます。
店内には各種焼き菓子やアイシングクッキー、紅茶など、テイクアウトできるものも豊富なので、ぜひふらりと立ち寄ってほしいと思います。
カクタスの自慢は自家焙煎の珈琲
店内で過ごすなら、是非いただいてほしいのが自家焙煎の珈琲。店主の丹波地さんはバリスタとして修業していたこともあり、エスプレッソをはじめとした珈琲には力を入れています。
私はカフェラテをいただいたのですが、こんなかわいいラテアートも施してくださいます!見てほっこり、飲んでほっと一息でき、心地の良い時間を過ごすことができます。
テイクアウトもできるスイーツですが、珈琲との相性も抜群なので、店内で一緒に召し上がるのもおすすめ。人気のベイクドチーズケーキの他、季節に合わせたスイーツもあるのでその時々の気分で選ぶ楽しさもあります。
“カクタス”に込められた想い
カクタスは“サボテン”という意味なんだそう。サボテンは花を咲かせるのが難しくて時間がかかるけれど、大切に育てた分、トゲトゲしたサボテンとは想像が出来ないくらいかわいくて綺麗な花が咲く。丹波地さんはそんな話を聞き、起業まで10年かかった自分とサボテンが重なって、「これからお店を大切に育てることでサボテンのような花が咲いてほしい」という思いを抱くようになります。
さらに、英語でもイタリア語でも“サボテン”は“CACTUS”。開業当初の売りでもあったエスプレッソはイタリアスタイルとアメリカシアトルスタイルがあり、英語とイタリア語が共通している、ということに縁を感じ、カクタスと名付けられました。かわいらしいロゴも、サボテンの妖精が花を咲かせるように、横顔に耳飾りで花を表現したい、という丹波地さんのイメージを元にデザインしてもらったそうです。
カクタスのはじまり
カクタスは12年前の2011年にオープン。10年ほど空きビルとなっていた『中屋ビル』は、起業を希望する若きクリエイターたちを集めて入居者と相談しながら一緒に改修や施工を行いリノベーションすることで、『メルカート三番街』として新しく生まれ変わりました。
もともと起業を志していた丹波地さんはこのプロジェクトに入居を希望。10年ほど起業を考えながらもなかなか条件に合った場所がなくその間珈琲の勉強を続けていたそうですが、メルカート三番街は立地も良く家賃や改修費も抑えられ、そして何より、「一人でオープンするよりみんなでオープンした方が心強いと思った」と丹波地さん。プロジェクトの一員として「やっぱり自信がない」とは言えない、という状況にも身が引き締まったそうで、カクタスは他の10店舗と共にスタートを切りました。
紆余曲折の12年間
そうしてついにお店を始めることとなった丹波地さんでしたが、当初から様々なハプニングもありました。オープンが決まっていた2011年は、東日本大震災があった年。内装の打ち合わせをしている段階だったそうですが、資材が手に入らなくなるかもと言われ、予定より早急に内装を決めなければいけなくなったそう。
さらに無事オープンしてからわずか1年半後、近隣の火事の影響で4ヶ月間の営業停止を余儀なくされました。それでも、不思議と選択肢の中に場所を移る、という考えはなかったと言います。建物さえ元に戻れば、という思いで4ヶ月待ち続け、再開の際は餅まきなど明るいムードの中、復活記念イベント『フッカツ祭』が行われ大盛況。同じ場所で再び、カクタスは動き出しました。
そしてまたお店は軌道に乗り、カクタスは一時期は3号店まで増え、丹波地さんは一日中走り回る日々に。しかし、そんな日々にもだんだんと疲れを感じ始め、2号店を閉めたタイミングで、今度はコロナ禍に突入しました。
カクタスを支えたもの
そんな紆余曲折の12年だったカクタス。初めての起業に対する不安や火事という災害にも負けず乗り越えてこれたのは、メルカート三番街の仲間がいたから、と丹波地さんは語ります。起業を決めた理由も仲間と一緒だという心強さが大きかったという丹波地さんですが、忙しい日々の中でも「自分が遅くまでやっていても、まわりも明かりがついていると『大変なのは私だけじゃない、みんなが頑張ってるんだから自分も頑張らなきゃ』と励まされた」と言います。火事の後のフッカツ祭もメルカートの入居者や近隣商店街の仲間意識があったからこそ、明るくにぎやかなイベントとして再スタートを切ることができました。
そして、これから
「カフェという空間でお客さん同士の出会いがあったり、気分転換になったりしたらいいな、コミュニティの場になったらいいな」という思いでカフェを始めたこともあり、開店当初は本好きな人たちが集まるイベントを企画するなど、お客さんとの距離も近かったカクタス。ですがコロナを経て、人と会わない生活に慣れた人も多くなったように感じます。そんな状況の中、「なんで自分がカフェをやりたかったのか、コロナ禍でいろいろ悩んで考えた分、初心にかえれた」と丹波地さん。
カフェは、もやもやしたことを愚痴ったり友達と話したり、気分転換をしてバランスを保てる場所。やっぱり会って表情を見ることが大事で、自分自身も「結局カフェっていう“空間”がないとモチベーションが上がらないんだな」と気づいたと言います。そして、「些細なことで誰かの希望になれたりがんばる力になるようなカフェになりたいとコロナ禍でいっそう強く感じた」と語ってくれた丹波地さん。顔と顔を合わせて、会話を交わして、落ち着く雰囲気に身を置いて、美味しいものをいただいて、心を解放する。カクタスで、『カフェで過ごす』という時間をじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。
さいごに、丹波地さんからメッセージをいただきました。
「カフェと言う空間で人と人とが繋がるような時間になればと始めました。コロナ禍で色々と営業内容が変わってしまいましたが、これからもお客様がカフェで過ごす時間を大切にお店を育てていきたいです。」
詳細情報
小倉北区魚町3丁目3-12 メルカート三番街 1F-2号室
営業時間/日・祝・月曜日 13:00~18:00 木・金・土 13:00~19:00(ラストオーダーは閉店30分前)
定休日/営業日はInstagramの投稿をご確認ください
協力:門司港ゲストハウスポルト