北九州でカウンターを極める(番外編)~『洋菓子・赤坂くるむ&6W枇杷屋&HEDGEHOG』編~

北九州市には、ぜひとも行ってほしいこだわりのお店、個性的なお店がたくさんあります。

一緒に行く人がいない、となるとなかなか行くタイミングもむずかしいものですが、ひとりで行ってこそ、ゆっくりとその雰囲気を味わい、お店の良さを堪能することができるはずです。
普段はカウンターのあるお店に特化してご紹介していますが、“初めてのお店に一人で入る”というハードルを飛び越えてでも、「行ってよかった!」と思ってもらえるような、そんなお店をご紹介していきたいと思います。

【洋菓子・赤坂くるむ&6W枇杷屋&HEDGEHOG】

最初の一歩

この『北九州でカウンターを極める』シリーズも、番外編を含めると今回でめでたく20回目を数えることとなりましたが、今回ご紹介するお店はその中でも一番場所がわかりにくいかもしれません。

公共機関で行くなら、国道3号線を走るバスに乗って『赤坂』で降り、徒歩5分ほど。

駐車場が軽4台、普通車2台分ありますので車でも安心・・・なのですが、注意点が!

お店は住宅街の中に突然現れ、そこにたどり着くまでの道は一方通行。もしウッカリ通り過ぎてしまうと、ぐるっと回ってくることになります…。

ただ、お店が開いているときにはとってもわかりやすい“OPEN”の赤い垂れ幕がかかっているので、だいたいの場所の検討がついていれば見落とすことはないと思います。

普通車は道沿いの看板の先に2台分ある駐車場に停め、入口の奥に佇むかわいらしい三角屋根の建物を目指してください。軽自動車用はお店の横に4台分ありますが、入り間口が少し狭くなっているのでお気を付けくださいね。

・・・と、たどり着くまでは少々ハードルがありますが、「こんな場所にお店が??」と誰もが驚くであろう場所にお店を発見した時の感動はひとしおです。

そして中に入ると、その非日常感にさらなる感動があなたを待っています!
とにかく“わくわく”がたくさん詰まった【洋菓子・赤坂くるむ&6W枇杷屋&HEDGEHOG】、さっそくご紹介していきたいと思います。

実は・・・3店舗が集まっている複合型

【洋菓子・赤坂くるむ&6W枇杷屋&HEDGEHOG】って、長い店名だな~と思った方もいらっしゃるかもしれません。実は、同じ建物内で、ご家族で3店舗営んでらっしゃるんです。
同じ建物内・・・と言っても、これがまた不思議で、とても魅力的な建物。

まず見えてくる三角屋根のかわいらしい建物の1階が【洋菓子・赤坂くるむ】、2階が雑貨屋【HEDGEHOG】になっています。そしてその右手奥には、瓦屋根の立派な古民家が。こちらはアンティークなどを扱う【6W枇杷屋】と赤坂くるむの洋菓子をイートインできるスペースになっています。

まず先に奥の古民家が明治時代に建てられ、その後大正になって三角屋根の部分を増築。現在はこの二箇所でお店をされていますが、実は古民家の庭の奥には茶室もあり、さらに裏手には昭和に増築されたという建物も!

こちらの二箇所はまだ手付かずの状態とのことで残念ながら中に入ることはできませんが、いずれは店舗スペースとして拡大していきたい、という計画もあるようです。今は物置のようになっているので、ガレージセールを開催して少しずつ整えていきたい、とのこと。現在の店舗スペースだけでもかなり魅力的なので、古い建物が大好きな私としては今後も楽しみで仕方ありません!

そんな魅力的な建物はのちほど改めてご紹介するとして、まずは3店舗を詳しく見ていきたいと思います。

洋菓子・赤坂くるむ

【赤坂くるむ】は、オムレットとエクレアがメインの洋菓子屋さん。ショーケースにはオムレットとエクレアがずらり!ロールケーキやマカロン、焼き菓子も売っています。

元々ケーキ屋さんで働いていたという店主さん。オムレットとエクレアに特化しているのは珍しいのでお聞きしたところ、「あまり販売しているお店がないので、面白いかなぁと思って」メニューを絞ったそうです。さらに、1個売りではなく3個セットか6個セットになっており、種類の組み合わせが固定されているのも面白いですよね。「あまり凝った味ではなく、想像がつきやすい味にしているのがこだわり」とのことなので、どの組み合わせでも王道感があり、どれを選んでも間違いない安心感があります。

住宅街ということもあり、ご近所の方はテイクアウトを利用される方が多いそうです。期間限定の商品もあったり別の組み合わせも試したかったりで、何度でも来たくなります。

6W枇杷屋

直接玄関からでも入れ、【赤坂くるむ】の建物とも繋がっている【6W枇杷屋】。

中に入ると、まずハッとするような美しいお庭が目に入ります。お庭に面したガラス戸のすぐそばにソファが設置されており、こちらで美しいお庭を眺めながら【赤坂くるむ】のオムレットやエクレアが楽しめる、というわけです。
そして、お庭だけでなくお部屋の中も気になるものがいっぱい!!!

お部屋の真ん中に並んでいるのは、新品の焼き物たちです。右側に並んでいるのは、愛媛県の砥部町で約250年ほども続いているという砥部焼。オーナーさん自ら飛び込みで「売らせてください!」と直談判したという、思い入れのある商品です。愛媛県を走る観光列車で食事の際のお皿に使われている砥部焼の作家さんの作品も取り扱っています。左側には、長崎県の波佐見焼も並んでおり、こちらも人気商品だそうです。

他にも部屋にはたくさんのアンティーク食器や古道具が。見れば見るほど興味深い商品がたくさん並んでいるのですが、なんと「目に入るものはすべて売り物」なんだとか!隅から隅まで見たくなりますよね。
お庭を眺めながらのお茶も【6W枇杷屋】で掘り出し物を見つけるのも時間を忘れそうなので、ぜひゆっくりと時間に余裕を持って訪れてほしいと思います。

HEDGEHOG

さて、最後にご紹介するのが【HEDGEHOG】。実はこちら、超不定休なレアなお店です。というのも、こちらも【6W枇杷屋】と同じオーナーさんが管理しているのですが、【6W枇杷屋】に他のスタッフさんがいらっしゃらない場合は開けることができないから。

大正に建てられたという建物ですが、階段が急で危ないため、どうしてもお客さまだけ通すわけにはいかないそう。ただ、「開けれるときは極力開けている」とのことですので、ぜひチャンスを狙ってみてください!そんなレアさもある意味魅力の【HEDGEHOG】、開いていた場合はオーナーさんから丁寧に商品の説明もしていただくことができます。この日もバレリーナが音に合わせて踊るアンティークのオルゴールを見せていただき、「曲が“白鳥の湖”のものはとても貴重」という雑学を教えてもらいました。そんなお話を聞きながら商品を見ていると、いっそう興味がわいてきます。

【HEDGEHOG】は女性が好まれるようなかわいらしい雑貨、クロスステッチや籐のバスケット、新品のフランスやイタリアのコスメなども置いてあり、【6W枇杷屋】とは色を分けているそうです。人気はフランスの石鹸。植物由来のものでアレルギーにも対応しているので顔も手も体も洗えます。
そして東洋陶器やオールドノリタケなどの食器も人気。東洋陶器は現在は生産されていないため貴重なものだそうです。

ちなみに店主さんが器に目覚めたのは、「すごく古い、それこそ100年くらい前のお茶碗や湯飲みで今でも割れずに使えてるものを見ると、なんかいいな」と思ったのがきっかけなんだとか。「そういう器を使うとちょっとコーヒーを飲むだけでもいい気分になれる」と聞くと、家に置いておきたくなりますね。新品の食器と古い食器を合わせて使う、というのが、また雰囲気が良くなっておすすめだそうです。

やっと見つけた理想の物件

明治、大正、そして昭和の建物が合体したようなこの不思議な物件は、特別なものではなくなんと一般の人が暮らしていた民家。そして道路に面しておらずわかりにくいこちらの建物ですが、オーナーさんが偶然表の道を通っていて二階屋根部分が見え、たまたま発見したんだとか!そんな運命的とも言える出会いでしたが、そこまでにはとても長い道のりがありました。

もともとはオーナーさんのお父様が古物が好きで、個人的に集めていたそう。10年以上前から一緒に古物のお店をやろうと古いビルや古い病院などいろんな物件をめぐっていました。条件は、小倉の街に近く、駐車場のスペースがあり、古いけれどリノベーションなどをしていない物件。残念ながら物件が見つかる前にお父様は先立たれてしまいましたが、ついに今の物件と出会い、お父様が使われていた【枇杷屋】という屋号を引き継いだそう。

ただ、理想通りの物件ではあったものの、空き家だった2018年当時はものすごい荒れ様でした。まともだったのは柱くらいで、屋根や壁、床はボロボロ。それでも現在【6W枇杷屋】が入っているお部屋だけは綺麗で、戦前のものと思われるガラスも割れていなかった。

「この部屋で決めたようなもの」とオーナーさん。今では美しい庭が見渡せるこのお部屋ですが、当時は庭も荒れ放題だったそうで、オーナーさんには「お目が高い!」と言いたくなります。そこからコツコツと庭師さんに復元してもらったり、壁や床を修繕し、3年かけてようやく2022年6月にオープンを迎えることとなりました。

伝わっていくもの

オーナーさんのお話を聞いていると、アンティークや古物など昔の良いものを今に伝えたり、お父様の屋号を引き継いだり、荒れ果てていた家を復元して使ったりと、消え去ろうとしているものや日の目を見ていないものをきちんと表に出し、その良さを伝えてくれているなと感じます。

そして、この場所に決めた理由として「何よりこの古い建物が、100年以上も、地震にも耐えて、ずっと残ってるっていうことに感銘を受けた」とおっしゃっていて、オーナーさん自身のそういった古き良きものに対するリスペクトが大きく、それが伝わってくるんだなぁと感じました。
アンティークや古物、古民家など人気がありますが、それはその良さを発掘し、より良い状態にしてくれて、提供してくれている人がいる、という大前提があります。

私も古い建物好きとして、この物件を見つけてくれて、そして長い時間をかけて綺麗に復元してくれていることに感謝が尽きません。
みなさんもぜひ美味しいオムレットやエクレアをいただきながら、甦ったものの美しさに触れてみてください。

詳細情報

小倉北区赤坂1丁目7-24

営業時間/10:15~18:00

定休日/不定休

※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください

さいごに
初めてのお店に一人で入る、というのはなかなかハードルが高いですが、北九州市はそもそも人懐っこい人が多いので、店主さんもお客さんも距離が近く、おひとり様に向いている土地と言えます。もちろん、ひとりでゆったりとした時間を過ごすもよし、ひとりの楽しみ方は無限大!
これからも一人でも初めてでも行く価値のある、そんなお店をご紹介していきますので、お楽しみに!

協力:門司港ゲストハウスポルト

北九州でカウンターを極める

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