北九州でカウンターを極める~『ビアスタンド黒崎』編~

北九州市に来たばかりで知り合いがいない、などの理由で、いわゆるソロ活を余儀なくされる機会も多々あるかと思いますが、初めてのお店に一人で入るのはなかなか勇気がいるものです。

そこで、一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のカウンターのあるお店をご紹介していきたいと思います。

店主さんとおしゃべりしたり、他のお客さんと仲良くなったり。 “一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。

ビアスタンド黒崎

最初の一歩

黒崎駅から商店街を抜け、徒歩10分ほどのところに『酒のはしべ』という酒屋さんがあります。ビルに書いてある通り、河村酒販さんが個人のお客様向けにお酒を販売している店舗です。そして酒のはしべの隣には倉庫があり…と思ったら、シャッターに『BEER STAND』って書いてある⁉

そう、今回ご紹介するお店は河村酒販さんの倉庫の中にあるビアスタンド。ビールの樽やお酒のケースが並んでおり、どう見ても酒屋さんの倉庫ですが・・・本当にビアスタンドはあるのでしょうか?
さっそく入ってみましょう!

倉庫でお酒を眺めながら飲めるビアスタンド

シャッターをくぐるとそこはまごうことなき酒屋さんの倉庫・・・なのですが、何やら電飾に彩られた中二階部分が!しっかりと看板も掲げられています。そしてよーく見ると、所狭しと並ぶお酒の間に階段も。

階段の下には営業時間も書いてあり、ここが間違いなくビアスタンドだと確信できます。安心して階段を上ると、お酒好きの私からすると大興奮の光景が広がっていました。

まずは椅子。なんとビールの樽ではないですか!クッションを付けてくれているので、それはもう立派なスツールです。

そして倉庫側を向いているテーブルがあるので、お酒たちを眺めながらビールを飲むことができます。何よりも最高のアテだと思うのは私だけでしょうか。
お酒に囲まれながら、お酒を眺めながら飲めるビアスタンド。なぜこんな面白いアイディアが生まれたのか、聞いてみました。

ビアスタンド黒崎誕生秘話

お話を聞かせてくれたのは、現在ビアスタンド黒崎の担当をしているあいさん。話はあいさんが担当する前まで遡ります。
今年で53年目を迎える河村酒販(開業当時は河村酒店)は、ずっと黒崎で地元の人やお店に愛されてきましたが、コロナを機に売り上げが減少。窮地に立たされました。

そこで、現代表が思いついたのがビアスタンド。代表には「黒崎を生ビールが美味しい町にしたい!」という強い思いがありました。たくさんの人に黒崎に来てもらうには、新しい町の魅力が必要。酒屋に創れる新しい町の魅力を考えた結果、「黒崎を生ビールが旨い町にする!」という結論に至ったのです。

倉庫をビアスタンドにするというアイディアは、地元の建設会社に相談したところ、この場所を見て「ここでビアスタントやったらどうか」とアドバイスをもらったのがきっかけだそうで、あの『セブンルール』でも紹介されたんだとか。それまで中二階部分には一階と同じようにお酒を置いていたそうですが、スタッフ総出で一階に運び、壁を塗装したりテーブルもDIYしたりと、スタッフや配送員、周りの各メーカーさんたちの協力も受けつつ、できるところはなるべく手作りでこの場所をつくり上げました。

ちなみに、今年2周年を迎えるにあたって再度床を塗り直したそうなのですが、途中で力尽きてそのままになっていました(笑)。でもこれも、自分たちの手でお店をつくったという努力の跡ですよね。

このプロジェクトで素晴らしいと思ったのは、クラウドファンディングをしたということ。コロナ禍での緊急事態宣言により、時短営業や休業を余儀なくされ、黒崎の多くの飲食店も大打撃を受けました。もちろん酒屋も影響が大きかったわけですが、クラウドファンディングでは自身の酒屋だけでなく「飲食店を応援したい!」という思いから、リターンのビールチケットに黒崎の飲食店で使えるフードクーポンを付けました。

美味しい生ビールで町の魅力を増やすことで人を呼び、飲食店も繁盛する。ビアスタンド黒崎は、「町全体を元気に!」という思いから誕生したのです。

インストラクターへの道

そんな思いを引き継いだのが、あいさん。実はビアスタンドをつくる前から代表の「黒崎を生ビールが美味しい町にしたい!」という思いはあったため、まず配送員さんたちが《樽生インストラクター》という資格を取ったんだそう。飲食店にビールを配送した際に生ビールを美味しく注げる方法を伝授すれば、黒崎が生ビールの美味しい町になる!というわけです。ただ、毎日洗浄する手間などもあり、なかなか思うように普及しなかった。そこで、ビアスタンドをつくって、まずはここから生ビールが美味しいということを証明しよう!と立ち上がったのが、代表がビアスタンドをやろうと決めたきっかけでもありました。

現在ビアスタンドの担当を引き継いだあいさんは、目下インストラクターへの道を邁進中。各メーカーごとにテストがあり、それぞれの基準に沿って合格しなければならないとのこと。しかも、居酒屋などはメーカー1社に絞ることもできますが、酒屋ということもあり複数社のテストを受ける必要があるためその道はなかなかに険しそうです。
注ぎ方に関しては小倉にある『麦酒stand1963』さんで約一ヶ月、修業をしたというあいさん。繊細でコツが必要なため一筋縄ではいかず、14種類ある注ぎ方のうち、師匠から合格をもらったのはわずか3種類の注ぎ方のみ!こちらもなかなか手厳しい。大変そうではありますが、注ぎ方でこんなに違うんだ!というのを知れて、「缶ビールですら注ぎ方でまったく味が変わって、『なるほど、この高さから注ぐのか』とか色々実験するのも面白くて、ハマりました(笑)」と語ってくれました。

そんな今も勉強中なあいさん。師匠から合格をもらった注ぎ方だけを提供しているとはいえ、ミスすることもあります。「まだまだみなさんに成長させていただいている段階」と語るあいさんは、失敗したときのために“一杯無料券”を自作。本当の美味しさを知ってほしい!という思いから、「もう一回注がしてください!」とこの券を渡すそうです。く~応援したくなる!!!
そんな努力家なあいさんの日々の奮闘の様子はInstagramでも綴られているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

黒崎に来れば、美味しいビールが飲める

実は、ビアスタンド黒崎のビールはおひとり様2杯まで、と決まっています。それはあくまでも酒屋であり、ここから黒崎の飲食店に人が流れてほしい、という思いから。なので営業時間もお昼の12時から19時までと、他のお店へ行きやすい時間設定となっています。

そして、ビールは毎週メニューが変わります。「今週のこのビールはこの継ぎ方」とそれぞれの特徴によって美味しい注ぎ方を考慮してお出ししているそうです。週替わりなので毎週来るお客さんもいるんだとか。羨ましい!

私がいただいたのは『アサヒエクストラゴールド』。注ぎ方も選べるのですが、あいさんにおすすめの注ぎ方をお聞きすると、「中身はスーパードライなのでキレや苦みをより感じらる“シャープ注ぎ”がおすすめ」とのこと。「スーパードライは炭酸が強め、という特徴を残したいので、炭酸を残すように注ぐ“シャープ注ぎ”で最後まで炭酸を楽しめるようにします」とおっしゃるあいさんに実際に注いでもらうと・・・確かにシュワシュワ感が強い!!そして飲んでみると、めちゃくちゃ爽快で美味しい!!!

何より、飲んだ後もしっかり泡が残り、飲んでも飲んでも泡が消えないどころか、泡が復活してる!?なんだか魔法みたいです。

さらに注目してほしいのが、泡。グラスに綺麗な泡のリングができています。こちらは注ぎ方ではなく、グラスの洗浄に秘密があるそう。ビールサーバーも毎日朝と夜に洗浄しているそうですが、師匠に習ってグラスも朝夜2回洗っているそうで、泡のリングができるのは綺麗なグラスである証拠なんだとか。ビールによって一番美味しい注ぎ方で出してくれたり、グラスもピカピカにしてくれたり、「美味しい生ビールを飲んでほしい!!」という意気込みをひしひしと感じます。

ちなみに1杯につきおつまみとしてめんべいも付いてくるのですが、「このビールにはこの味」とどのめんべいが合うのかも教えてくれますよ。

こんなに美味しいビールを飲んでしまったら、「家でも飲んでみたい!」と思う人もいるはず。そんな方に朗報。ビアスタンド黒崎の生ビールは、なんとお持ち帰りもできます!!

しかも専用のボトルもあるんです。完全密閉できるので、生ビールの樽の状態が保てるという優れもの。もちろん温度も保てるので、あのキンキンに冷えた美味しさMAXな状態なまま持ち運べます。950ミリリットルでボトル代5000円+ビール代になるので高く感じるかもしれませんが、最初にボトル代を払って、返却すれば5000円返却!というデポジット制。しかしもちろん購入しても良いため、今のところ返却されたことはないそうです。何度でも持ち帰りたくなりますもんね。

持参の容器でも生ビールのテイクアウトはできますが、やはり温度など含め管理が難しいため専用ボトルがおすすめだそうです。ちなみにキャンプ前にボトルに生ビールをテイクアウトしていく人もいるそう。最高でしかない。
みなさんも、テイクアウトを活用してぜひお店以外でも最高の生ビール体験を味わってください。

とにかく美味しいビールを飲んでほしい!

お客さまは比較的ご近所さんが多いそうで、近くに住んでいる人がスーパーの袋を両手に持って、買い物帰りにちょっと寄って一杯、なんて人もいるそう。私も近かったらそれやりたい…!
しかも、おつまみは持ち込みOK。自家製で漬けたきゅうりをタッパーで持って来る人もいるそうで、お気に入りのビールのお供が持って来れるのは嬉しいですよね。

そんなことから自由な雰囲気が伝わってきますが、お子さんも一緒に来て親御さんはビールを飲み、お子さんは横でお菓子をつまみながら宿題をする、という光景も見られるそうです。地元の人に、“第3の場所”のように愛されているんだなぁ、というのがわかります。

最後に、あいさんに『ビアスタンド黒崎』に対する思いを聞きました。

「代表が言った、『黒崎を生ビールが美味しい町に』というのは私もしっくりきていて、そんな美味しい生ビールを自分が出したい、と思っています。やっぱりまずは美味しい生ビールを知ってほしい、という思いが一番強く、今まで飲んでいた生ビールと全然違うものがある、ということ自体をまず知ってほしいです。

それぞれのビールによって、「この注ぎ方が一番美味しい!」という注ぎ方をおすすめしていますので、ぜひ一度飲んでいただけたらと思います」

詳細情報

北九州市八幡西区東神原町1-26

営業時間/10:00~19:00(ラストオーダー18:45)

定休日/水・日曜日

※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください

さいごに
初めてのお店に一人で入る、というのはなかなかハードルが高いですが、北九州市はそもそも人懐っこい人が多いので、店主さんもお客さんも距離が近く、おひとり様に向いている土地と言えます。もちろん、ひとりでゆったりとした時間を過ごすもよし、ひとりの楽しみ方は無限大!
これからも一人でも初めてでも行く価値のある、そんなお店をご紹介していきますので、お楽しみに!

協力:門司港ゲストハウスポルト

北九州でカウンターを極める

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