インタビュー企画「KITAQ Style 1000 Project ~北九州市の“人”をもっと知る~」

北九州でカウンターを極める(番外編)~あいろく~

一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のお店をご紹介する『北九州でカウンターを極める』。

今回のお店にはカウンターがないのでいきなりの【番外編】となりますが、“おひとり様を味わい尽くせる”、そんな喫茶をご紹介します。

おひとり様に挑戦しよう!と思っている方も、根っからの一人行動主義な方も。
“一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。

最初の一歩

大通りに面しているのに、「え、こんなところにお店が!?」と驚いてしまうような佇まい。

ドアに小さな窓がかろうじてあるくらいでほぼ店内が見えないので、入るにはかなりハードルが高い…!ように思いますが、近づいてよーく見てみると『ひとりになりたい時のための店』『孤独を愉しむ店』の文字が。一人で行こう!と思ってはいても、いざお店に入ろうとすると怯んだり、一人で過ごすのに最適なお店なのか?ということを確認してから入る、という方は多いと思います。そんなとき、「一人でもいいんだ、むしろ一人が大歓迎されている!」とわかる【あいろく】さんは、おひとり様にとっては堂々と入れる、安心して入れるお店なんです。

扉を開けるとそこは別世界

扉をガラガラと横に開くと、そこには古めかしい世界が広がっています。

タイムスリップしてしまったんじゃないか、と錯覚するほど、そこかしこに古びた置物や懐かしのキャラクターやアイドルのグッズなどが並べられた店内。そう、あいろくさんは古道具屋さんでもあります。

店主の合六さんが集めた古道具から、合六さん自ら彫ってつくったハンコまで様々。

このハンコ、とにかくクオリティが高い!合六さんのリスペクトと愛が伝わってきます。伺ったところによると、合六さんが古いものに惹かれるきっかけになったのが、中沢啓治さん作の『はだしのゲン』。そこから当時の世界に興味を持ったとのことです。

『はだしのゲン』は力強い作風ですが、歳を重ねるにつれて力の抜けた“脱力系”の魅力がある水木しげるさんやタモリさんも好きになってきたという合六さん。

そんな合六さんの好きなもの、愛しいものであふれた店内は、不思議と初めて来ても馴染みがよく安らげる空間になっています。

こちらの古道具たち、売り物ではないものもありますが、もちろん購入できるものも。喫茶利用なしでふらりと古道具だけを見に寄ることもできますよ◎

すべて【ひとり席】

そして、この古道具に囲まれた空間で喫茶ができます。

あいろくには全6席ありますが、すべてひとり席。

この配置がまた面白いというか、他の席との距離感や椅子の位置など、絶妙に“孤独”の世界にどっぷり浸れる配慮がされている、と私は感じました。

他の席に誰か座っていても、視界に入らないのでそこには自分しかいないような気持ちになってくる。その、誰にも邪魔されない、本当に自分だけと過ごす時間というのが、とても尊く感じるんです。案外、一人になる時間やゆっくり自分だけで過ごす時間ってないんですよね…。でも、その時間を持つことがどんなに大切か。あいろくは、そんなことを改めて教えてくれます。

席はアンティーク調が素敵なテーブル席と、座敷にも2席。

台所に向いたこちらの席が一番カウンターには近いですが、ちょっぴりこわいお面と見つめ合うという、6席の中で一番玄人向けの席となっています(笑)。

素朴だけど懇切丁寧な喫茶メニュー

メニューには、“朴訥”や“飾りっけなし!”の文字。確かに近年の主流である映えとは一線を画していますが、丁寧につくられたデザートは心に染み入る美味しさです。大切につくられたものを食べる、というのは、自分を大切にすることでもあるとつくづく感じる、そんな味。

お皿など、喫茶の備品もすべて古道具なので、なんだか敬うようなシャンとした心持ちになる、というのもあると思います。

そして丁寧といえば、あいろくさんの珈琲。自家焙煎した豆をネルのフィルターで一杯一杯抽出してくれる、心のこもった珈琲がいただけます。

メニューにも「コク・甘味・まろやか。を心掛け、焙煎・抽出に励みます。」と合六さんの誠実さが伝わる文言が書かれていますが、飲めば納得。真摯に向き合っていることがわかるので、ゆっくり大切に味わおうと思う。それがまた、あいろくでの居心地のいい時間の流れにも繋がって、空間に溶け込んでしまうような安らぎのひとときが過ごせるのです。

あいろくの味わい方

喫茶に来た方は、自分で持ってきた本を読んだり、お仕事をしたり、みなさん思い思いに過ごしているそうです。店内の本も自由に読んでOK。

さらに、レコードで昭和歌謡を聴くこともできます!美空ひばり、坂本九、越路吹雪、ちあきなおみ・・・昭和歌謡好きにはたまらないラインナップです。

私は合六さんがおすすめしてくれた、昭和20年代後半くらいの子どもが書いたと思われる絵日記を拝読させてもらいました。これがまた絵心があって、何気ない日常や先生とのやりとりにほっこり。計3冊あり、読み応えたっぷりです。

ずっと読んでいると感情移入してしまって、こんなにも綺麗な状態で絵日記が残っているなんて、大切に育てられたんだろうなぁ・・・なんて胸が熱くなってしまうほどでした。

そして私がもう一つグッッと心を掴まれたもの、それが店内に飾られているなんとも味のある字体のメッセージ。

こちら、合六さんの娘さんが書いたものだそう。合六さんが好きな言葉を見本で書き、それを見ながら娘さんが書いているんだそうです。

今にも動き出しそうな自由な字体の言葉たちは、心を直接刺激してなんだか胸に迫るものがあります。
店内を見るだけでも楽しく、時間があっという間に過ぎていきます。あいろくはタイムスリップどころか、時間の概念がないような不思議な時の流れ方をするお店でもあるのです。

孤独を愉しむお店はこうして生まれた

もともと「世間に馴染めないタイプ」とおっしゃる合六さんは、ご自身も基本は一人行動で、自分と同じように「一人で過ごしたい」と考える方に利用してもらえたら、という思いから喫茶をやりたい、という思いはずっと持っていたのだそう。はだしのゲンをきっかけに当時の世界に惹かれ、古道具に興味を持ったのはさらに前。

お店には18歳のときに初めて買った古道具である“ちりかご”も飾られています。その二つを融合させ、喫茶のできる古道具屋としてオープンしたあいろくは、最初こそ人数制限はありませんでしたが、段階的に、そしてごく自然に、今の“ひとり喫茶”という形に落ち着きました。

ひとりとひとり

おひとり様に限定するのは経営的には大変な部分もありますが、その分お一人お一人にじっくりと丁寧に対応することができます。そして“ひとり”の店主さんと“ひとり”のお客さまが向き合うので、一番居心地のいい距離感を保つことができるのです。

お店にも掲げられている“自然体”という言葉。これこそがあいろくを表しています。無理せず、心のままに、好きなものだけ。それはあいろくを表してもいますが、あいろくに来るお客さまにもそうであってほしい、と合六さんはおっしゃいます。一人でいたい、古道具が好き、おいしい珈琲が飲みたい。そんな純粋な思いだけを胸に、ぜひ一度足を運んでいただけたらと思います。

店舗情報

北九州市八幡東区春の町5丁目2−3

営業時間/12時くらい~18時半くらい
定休日/不定休
※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください

さいごに

もちろんみんなでわいわいするのも楽しいですが、ひとりの楽しみ方は無限大!特に北九州市は人懐っこい人が多いので、店主さんもお客さんも気軽に話しかけてくれてすぐに打ち解けられる、ソロ活にはもってこいの地域です。これからもひとりで行ってもさびしくない、親しみやすいお店を紹介していきますので、お楽しみに!

協力:門司港ゲストハウスポルト

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