北九州市に来たばかりで知り合いがいない、などの理由で、いわゆるソロ活を余儀なくされる機会も多々あるかと思いますが、初めてのお店に一人で入るのはなかなか勇気がいるものです。
そこで、一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のカウンターのあるお店をご紹介していきたいと思います。
店主さんとおしゃべりしたり、他のお客さんと仲良くなったり。 “一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。
【アンドコーヒースタンド】
最初の一歩
九州歯科大学などがある国道3号線の大通り沿いに、お洒落なカフェを発見!バスで通ったり車で通りかかったことがある人は多いと思いますが、意外と見逃してしまうかもしれません。
バスだと清水町バス停から徒歩3分ほど、JRの南小倉駅からでも10分ほどなので徒歩圏内です。
ウッドデッキのようなエントランス部分や大きな窓を囲んだ木枠など、お洒落な中にも温かさを感じる外観なので、初めての方でもふらりと入りやすいと思います。
さっそくおじゃましてみましょう!
美容室+カフェというニューハイブリッド
お店に入ると、観葉植物や雑貨がレイアウトされ、どちらかというと“カッコイイ”雰囲気。
テーブル席はもちろん、おひとり様で来ても落ち着きそうなカウンター席もあります。
ん・・・?
上の写真、お気づきになった方いらっしゃいますか?
よーく見てみると、整髪剤や、そして美容室の椅子も!!
実はアンドコーヒースタンド、その奥は美容室になっています。
カフェは奥様が、美容室は旦那様が切り盛りされているハイブリッド型のお店なんです。
美容室はこんな感じ。めちゃくちゃカッコいい!
なぜ美容室とカフェが一緒にお店をすることになったのか、その経緯について、お聞きしました。
美容師からまさかの転身
カフェの代表、あゆみさんももともとは美容師さん。結婚、出産を機に美容師の旦那さんと一緒に独立し、出産ギリギリまでは手伝っていたそうですが、出産を経て「そろそろ復帰どうしようかな」と考えた頃、コロナ禍に突入してしまいます。
お子さんがまだ小さく、途中で他の人に代わってもらったりもできない仕事なので、今すぐ美容師としての復帰は難しい。でもここの場所で何かしらできたらいいな・・・と考えていたあゆみさん。
コロナ禍の間も美容室のお客さんに支えられてやってこれたので、そういう方たちに髪の毛を切るだけでなく、そこで繋がってくれたり、別の付加価値を味わってもらいたい。
そして旦那さんも「“男の社交場”みないなものをつくりたい」という思いをずっと抱いており、考えた結果出た案が『コーヒー屋』でした。
しかしあゆみさんはそこで一言。「私コーヒー飲めないけど?」
なんと、あゆみさんはその当時、コーヒーが苦手で飲めなかったそうなんです。
それでも、休んではいられない。何かしら進んでいかないといけない。
「コーヒーが飲めないとかそれどころじゃない。やらなきゃ。」
そうして新しい風を入れて形を変えよう!とカフェを始めることになりました。
勉強のためにコーヒー屋さんをめぐる中で、グレードの最も高いと言われるスペシャリティコーヒーに出会ったあゆみさんは、あまりの美味しさに衝撃を受けたそう。
「珈琲なのに苦くない!これなら飲める!同じ味が出したい!!」
お客さんには良いもの、美味しいもの、自分が納得いくものを出したい、と思っていたあゆみさんに、スペシャリティコーヒーがガチっとハマり、一部ブレンドもありますが、コーヒーは全てスペシャリティコーヒー豆を使用。
コーヒーの美味しさを知ったあゆみさんは、「今まで他の飲み物だったのがコーヒーが飲めるようになって、大げさかもしれないけど人生の楽しみが増えた」と言います。
旅行先でもコーヒー屋さんを探してみようと思ったり、インテリアやお店の空間を楽しんだり、店主さんとおしゃべりしたり。
「私だったら、コーヒーの勉強を始めたばかりだからこそ、同じようにコーヒーを普段飲まないようなお客さまにも寄り添えるんじゃないか。新しい人生の楽しみを伝えられる、そんな風なお店づくりができるんじゃないかと思うんです」とあゆみさんは語ってくれました。
カットしながら改装?
さて、そんないきさつでコーヒー屋さんをすることになったものの、旦那さんはここで美容室を営業しているわけで、あまり改装に時間をかけるわけにはいきません。
そこで、完全に休んでリニューアルではなく、「やれるところからやろう!」となんと美容室を営業しながら友人、家族にも協力してもらい改装工事を始めたんだとか!これにはあゆみさん自身「お客さんよく許してくれたな~」と当時を振り返っていました(笑)。実際に美容室のお客さまは「面白い」と楽しんでくれ、無事完成したときには経緯を見守っていたこともあり、感動してくれたそうです。
自分たちでデザインし、つくり上げたことでお二人にとっても「ようやく自分たちのお店になった。手伝ってくれた周りの方には感謝しかない」という想いがあり、「二人で『すごくかっこいいお店になったよね』とよく話すんですよ」とあゆみさん。
そのお話を聞いて改めて店内を見渡すと、なんだか過程を見ていない私までじん、とくるものがありました。
先ほど“カッコイイ雰囲気”と表現したのですが、美容室を営業しながらでも自分たちでつくり上げるというその心意気の“カッコよさ”がお店にもにじみ出ているのかもしれません。
美味しいコーヒーとのペアリングを楽しむ
ぜひコーヒーを味わってほしいアンドコーヒースタンドですが、おすすめは『ペアリング』。あゆみさんが「このケーキにはこのコーヒーが合う!」と思うおすすめのセットが味わえます。
私もこちらのセットをいただきました。
組み合わせ次第でコーヒーとスイーツのバランスが大きく変わり、旨味、酸味、塩味、甘み、苦味など二種類以上が揃うとものすごい相乗効果が生まれ、美味しさが膨らむと言われているんだとか。
塩味と酸味を一緒に取ると酸味が少しまろやかになったり甘味が引き立ったりという相乗効果があるらしく、コーヒーは浅煎り、そしてグルテンフリーで甘さ控えめというバスクチーズケーキには塩が添えられています。
これがもう、「御見それしました!」と言いたくなるほど、絶妙な相性の良さで、美味しかったです。
あゆみさん曰く、「お客さんに『確かに合うね』と言われるとその共有も楽しいし、「でしょ!?」ってドヤりたくなる」んだとか(笑)。あゆみさんは本当におしゃべり上手で時間を忘れて話し込んでしまうのですが、話していて楽しいだけでなく、お客さまに対する真摯な姿勢も垣間見えるので、ファンになってしまうんですよね。
ペアリングに関しても、「他のお店でお客さまがケーキを買ったときなどに紅茶もいいけどコーヒーだったらこういうのがいいと思いますよ、と少しでもアドバイスになればいいなと思うんです。うち以外でもよりコーヒーが楽しくなったらいいなって」と語るあゆみさん。
コーヒーも最初は1種類しかなかったそうですが、現在は常時5種類ほど。こちらも「お客さまにいろんなものを比べて楽しいでもらいたい、好みに合うものをお出ししたい」という想いから。
あゆみさんの目標は、「ここに来てコーヒーが飲めるようになりました」と言われることだそうですが、実際にそんなお客さまが増えてきたとのこと。そのきっかけがペアリングで、「ケーキと一緒だと美味しい」と言われることも多くケーキを作るときはペアリングを意識してつくっているそうです。
そしてもう一品、最近新しくメニューに加わったというコーヒーブレンダーアイスもいただきました。こちら、挽きたてのコーヒーパウダーと、バニラアイス、シナモンクッキーを入れてその場でドリルしてつくってくれます。さらに最後に挽きたてのコーヒーパウダーをかけてくれるので、コーヒーの香りが立ってまさに“コーヒー屋さんのアイス”。ドリルでその場で砕いて作るのでクッキー感が残り、シナモンとバニラアイスの相性も抜群でとっても美味しかったです。ハマりそう…。
冬はストーブのまわりが特等席になるそうで、「ぜひそこに座ってもらってあったかいコーヒーと一緒に召し上がっていただきたい」とのこと♪
とにかくいろんなことにチャレンジ!
苦手だったコーヒーも楽しんでしまうなど、バイタリティーあふれるあゆみさんですが、チャレンジ精神がとにかく旺盛。
今はバスクチーズケーキなどスイーツはテイクアウトできないので、菓子製造を取る予定だそう。いずれはネット販売までできるように整えて、地元の友達に食べてもらったり、転勤してしまった常連さんに食べてもらったりしたい、という想いもあるそうです。
そしてアンドコーヒースタンドでは、個性的なイベントも不定期で開催しています。靴磨きや植物展といったイベント、古着のリメイクのお店とコラボしてその場で縫ったり、豚汁屋さんととコラボして特別に夜オープンする角打ちをやったり、どれも“コーヒー屋”という枠を超えた今までになかったイベントばかり。美容室とのハイブリッドというアンドコーヒースタンドらしい、自由さがいいですよね。
あなたにとっての“and”は?
「自分の中で美容師しかないと思っていたので、『美容師じゃない自分ってなんだろう』と自分を責めることもあった」とあゆみさん。
「今、アンドコーヒースタンドという空間ができてお客さんに『来てよかった』と言ってもらえて、『私美容師じゃなくてもいいんだ』と思えたし、自分の居場所を見つけられた気がして。思い切ってやってよかったな、とお客さまを通して思うんです」
そうおっしゃるあゆみさんですが、私からすると「天職では?」と感じるほど、とてもキラキラと輝いて見えました。
夢を持っている人の話を聞いて自身の経験からアドバイスしたり、自分もそういう場所がほしかったから、と子供連れやベビーカーもウェルカムで「家でゆっくり聴けないだろうからここで好きな音楽流していいよ」とママさんに寄りそったり、お客さまから「元気をもらいたいときに来る」と言われることもあるというのは納得。
美容室のお客さまにはコーヒーを、コーヒーが苦手なお客さまには新しいコーヒーの楽しみ方を、心のよりどころを求めている人にはあゆみさんとのおしゃべりを、と、まさに“and”な付加価値を提供してくれるアンドコーヒースタンド。みなさんもどんな付加価値を与えてもらえるか、ぜひわくわくした気持ちで行ってみてください!
「お客さまとの交流を大事にしすぎて食器を洗うのを忘れることもある」と最後まで笑わせてくれたあゆみさんの大ファンになってしまったので、私も近々また足を運びたいと思います。
詳細情報
北九州市小倉北区清水4丁目3−30−10
営業時間/11:00~17:00
定休日/月・火・水曜日
※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください
これからも一人でも初めてでも行く価値のある、そんなお店をご紹介していきますので、お楽しみに!
協力:門司港ゲストハウスポルト