「北九州市の“人”をもっと知る」がコンセプトのインタビュー企画・KitaQ Style 1000Project。
第13回に登場していただくのは、短編映画「門司港ららばい」の監督・脚本・出演の三役を務めた俳優の和成さん。幼なじみと制作した映画や地元・門司港に対する思いをおうかがいしました。
※本記事は北九州フィルム・コミッション様との共同企画です。
幼なじみと制作した映画「門司港ららばい」
ーー映画「門司港ららばい」についてお聞かせください
幼なじみの菊池 勇太(門司港ゲストハウス ポルト代表)と一緒に制作しました。家も近所ではないし、僕は野球部、彼はサッカー部で部活も違っていましたが、親や兄弟同士が仲が良いこともあり近い存在でした。
中学卒業後は進む道が分かれたんですが、お互い上京していて、いつか地元の門司港の仕事をしたいよね、という話をよくしていました。
俳優という僕の仕事を生かしながら門司港の魅力を伝えるにはどうすれば良いか、と考えていたときに、「門司港ららばい」の主人公のモチーフになった女の子と出会いました。彼女が門司港に2~3日滞在したことで心が晴れたらしく、彼女のような人たちの心を救ってあげられるような映画を作ろう、と菊池が発案しました。
ーー実際に映画を作ると決まったときにどう思いましたか?
映画だー!って思いました(笑)
30歳のタイミングで、地元で何かやりたいと思っていました。それがたまたま、幼なじみの菊池と一緒に作る映画だったんです。監督・脚本・出演の全てをやることにも、不安より楽しみの方が大きかったです。
ーー映画「門司港ららばい」の見どころを教えてください
「門司港ららばい」は、女の子がおばあちゃんの散骨のために門司港に来て、門司港の人たちと触れあいながらおばあちゃんの足跡をたどっていくという話です。実際に地元に住む方に出演してもらい、門司港の景色や匂いをぎゅっと詰め込んだのでドキュメンタリー的な要素もあります。見た後は心が軽くなる、そんな映画です。
ーー映画の制作を通して得たものは?
自分たちに強い気持ちがあれば、それだけで突き進むことができることを学びました。
お金も知識も技術もない僕らが地元のために何かしようと動き始めたら、カメラマンさんに突然出会い、北九州フィルム・コミッションの協力を得ることができました。そこからさらに話が広がっていったのも、僕らの高い熱量がきっかけだと思います。
ーー映画の上映についてお聞かせください
映画が完成した後は、門司港での試写会やスターフライヤー機内での上映を行ったんですが、まだ多くの人に見てもらう機会がなかったんです。
実は昨年、小倉昭和館さんでの上映が決まっていたんです。でも8月の火災で昭和館さんが全焼してしまい上映も中止になりました。往年のスターの方たちが出ていた北九州の単館映画館で、自分たちが撮った地元の作品を上映できることを楽しみにしていたので、昭和館さんが全焼したことはただただショックでした。
ーー今後の上映については?
北九州の映画だからやはり北九州の映画館からスタートしたい、という気持ちが強いので、昭和館さんが再建するのであれば昭和館さんからスタートするというのが僕たちとしての義理かなと思うので、どこにも出さずに待つという選択をしました。昭和館さんのスケジュールもあると思うので、良いタイミングでまたご相談できればと考えています。
ーー上映のときの企画などは考えていますか?
短編映画で30分となっているため、入場料については悩みどころです。
福岡で活動してるiimaさんが僕たちの思いをくみ取って制作した主題歌と劇中歌がすごく気に入っているので、役者の舞台挨拶と映画の上映、iimaさんのライブをセットにしたいなと考えています。
門司港に劇場を作りたい
ーー和成さんの近況を教えてください
今、事務所には属していなくてフリーで活動しているので、自分の行動力を試されている気がします。自分が本当にやりたいことって何なんだろうと考えながら、積極的に行動しています。
先日、ある映画監督さんとお会いする機会がありました。名刺代わりに持ち歩いている「門司港ららばい」のパンフレットを渡して、地元のために映画作ったんですと話をしたんです。すると隣にいた方が、たまたまある映画祭のディレクターさんで、エントリーしませんかと言われすぐに作品に字幕をつけてエントリーしました。
字幕をつけたことによって作品を出せる幅が広がり、この映画の可能性を増やすことができたんじゃないでしょうか。結果が楽しみです。
ーー今後、地元の門司港で取り組みたいことはありますか?
次は門司港の歴史を感じられる作品を作ってみたいと考えています。
例えば「門司港ららばい」のおばあちゃんが生きた昭和の時代の話や、バナナのたたき売りのルーツ、出光佐三(出光興産の創業者)さんの話など。たくさんの人に知ってもらいたい事がありますし、地元でやることに意味があると思っています。
また、大好きな門司市民会館で舞台をやりたいですね。ぜひ「門司港ららばい」に出てくれたメンバーに出演してもらいたいと思います。先輩の駿河太郎さん、ほぼ同級生の熊谷弥香さん、岡田地平さん。「門司港ららばい」に出てくれたみんなは、また門司港に行きたいねって言ってくれます。
門司港に劇場を作りたい、というのが大きな夢です。お芝居を見に行く、というのが門司港に来る理由になればいいなと思います。門司港で上演すると、東京からの交通費はかかりますが、その分劇場の使用料や宿泊料金を下げることができるので、東京でやるのと経費的に変わらなくなるんじゃないかと思うんです。東京と同じ舞台を門司港でもできるといいですね。
地元の子どもたちに舞台を見てもらいたいんです。将来の選択肢として、俳優はもちろん、照明さんや大道具さん、舞台に携わる色々な仕事も見てほしいと思います。
舞台を通して門司港に来てもらい、門司港を知ってもらうことで門司港がより良くなり、人もたくさん来るようになる。その懸け橋になりたいと思っています。
ーー和成さんから見て門司港の魅力はどこでしょうか?
開放感ですね。
門司港って目の前に海があって、後ろに山があるんです。こんなに空が抜けているところって他にないですよね。高い建物もないですし。
人の魅力というのもあると思っています。
門司港の人は優しいなあって勝手に思っちゃいます。駅員さんとかおかえりと言ってくれませんか?(笑)
昔から受け継がれている商売人たちの、気の荒さもありつつ、優しさもある、というところにすごく惹かれます。
門司港に限らず、北九州市には古くからの文化を大切にしてほしいと願っています。近代的な建物を作るより、北九州らしい景観などをずっと残してほしいし、その上で、若い人に北九州っていいなと思ってもらって住んでもらえるといいですね。
ーー将来の目標をお聞かせください
1人の人間として、俳優業だけでは僕自身が生きていく中で大事なものを失くしそうな気がしています。目標のひとつである「大河ドラマ出演」を実現するために乗馬を始めたのですが、そこで感じたことを元に、馬と関連した事業にも取り組んでみたいと思っています。
ベースはあくまで役者です。こんなにスリリングな仕事はないと感じます。ですが一度しかない人生の中に、人生は何回かあると考えており役者という仕事だけにこだわる必要もありません。人間としてどうあるべきか。人生をどうするか。この先も「挑戦」をずっと続けていきたいと思います。