魅力的な街、北九州【エッセイコンテスト 入選作品】

エッセイコンテスト「第1回 キタキュースタイルカップ」 入選作品

北九州で生まれ、早半世紀云々、大学生からその後、東京、大阪、神戸、名古屋と移り住み、故郷である北九州に帰ってきた。

住めば都でそれぞれの都市にそれぞれの良さがあったが、何かの折に触れ、ふと蘇って恋しく思ったのは、深緑が迫る足立山であり、子供の頃、トイレの窓からいつも見えいた関門海峡を通る船の灯りであり、泳ぎ遊んだ若松の青い海であり、そしてどこの都市にもない安くて新鮮で美味しい北九州の食であった。

北九州に帰ってきて新たに発見したのは、季節や時の移り変わりによって見られる素晴らしい景色が北九州にはたくさんあるということだ。お日様が山や海に沈んでいく光景を見ることができるのは、北九州では割りとよくあることでも、他の都会では難しいことだ。

若松の海と風車の間に沈む夕陽や皿倉山からのみる全方向のマジックアワー、高塔山の紫陽花や志井川の桜並木、これらの絶景をほんの少し車を走らせるだけで見ることができる。このコロナ禍にあって、変わらずに美しく咲く花や美しい自然にどれだけ心が癒されたことか。

また今は運休になっているが、工場夜景のプチ船旅、思い付いたとき、ぷらっと行って乗れるのもいい。(予約が必要な時ももちろんあります。) それとこれでもかと思うほどコンテナを積載した巨大船が岸からすぐ側で見られる門司の海岸線も他ではなかなかない。

そんな風景を私はインスタに時折あげているが、地元の人からもここは何処?こんなところがあったのか?という反響が結構ある。

またインスタグラマーの中には、その北九州の美しい風景を撮りにわざわざ来ている人も結構いることがわかった。
この北九州の素敵な風景をベストな状態で沢山の人が見れるようにずっと整備していただきたいと思う。

北九州の魅力の2つめは、交通だ。
まずは空港、近くて規模がちょうどいい。大きな荷物を抱えていても、駐車場から飛行機までドアトゥドアで搭乗することができる。海外の空港や羽田空港では、こうはいかない。空港に着いても飛行機までどれだけ歩かせるのだと思う。高齢者や小さな子ども連れにはハードルが高い。
そして東京行きが早朝から深夜まであり(現在は減便中だが)、1日の時間をフル活用できる。東京がすぐ近くにあるイメージだ。
次に新幹線の駅が近くにあることだ。それもすべての新幹線が停車する。ホームも上り下りとシンプルで分かりやすい。それに九州の中心地の博多まで20分というのも大きい。ちょっとゆっくりコーヒーでも飲んでいたら、まもなく博多到着のアナウンスが、流れて慌てる次第だ。

市内の移動も都市高速を使えば、ほぼ30分で全域に行くことができる。それもほとんど渋滞知らずで、時間の予定もたてやすい。
ひとつ難点をいえば、自家用車を使うととても便利だが、空港や駅までの交通機関がバスに頼りがちで、それがとても便利とは言いにくい。様々な利用者に、より細やかで便利な交通機関を、考えていくことが必要だと思う。

そして北九州の魅力の3つめは、自然災害が比較的少ないところだ。今や日本列島はどの地にあっても大きな自然災害が起こりうるが、その中にあっても、今後の地震発生確率も他の大都市よりも少なく、地形的利点もあって気候も安定しており、雪も割りと少ない。

そして魅力の4つめは、北九州の人である。北九州人はガラが悪い。気性か荒く、口が悪い。北九州は怖い街という悪いイメージが定着してしまっているが、でもそれは言い換えると、北九州人は照れ屋でお世辞が言えない。建前などもなく、ストレートに思ったままを口に出す。しかも調子のりが多いから、面白さに走ってあまり考えずに発言してしまい、相手を傷つけてしまうところがある。しかし実は、とても照れ屋で表面的でなく本音で話しができる優しく熱いハートの持ち主が多いのだ。北九州出身の芸能人を見ても、独自の世界を持つ、個性的な熱い人が多いようにおもう。

今回のコロナパンデミックを経験して、社会のシステムも人の考え方も大きく変化した。
働き方であったり、人生観であったり、今までの価値観が変わり、それは新型コロナが収まったあとでも、元には戻らないであろうし、より変化し多様なものになっているだろう。

人生で大切なものは何か?考え直す機会になったと思うし、一人一人が考え直したときに、北九州で人生を送るというのもいい選択肢のひとつになるのではないかとおもう。

今までの北九州のイメージを払拭し、真の北九州の魅力を発信して、多くの人に来てもらいたい。そして住みたいと思ってほしい。

そう考えている人は、北九州に住んでいなくても、幅広い年代で結構いると思う。(現に東京の大学生の私の娘も考えている。)
そういう人たちと北九州市が連携して具体的な手をどんどん打ちながら、波を拡げていきたい。大好きな北九州をみんなに好きになってもらいたいと思う。

作者:津田 典子さん