関門海峡に沈む夕陽の美しい街~門司港~【エッセイコンテスト 入選作品】

エッセイコンテスト「第1回 キタキュースタイルカップ」 入選作品

何度その美しさに感動し、癒やされただろう。関門海峡に沈んでゆく夕陽が素晴らしくて、見るたびにいつも心が洗われるような想いになる。
故郷を離れた今も帰省するたびに行きたくなるのが「門司港」。

生まれは門司港だけれど、幼稚園の時に小倉へ引っ越しをした。幼少期過ごした門司港の記憶はあまりないけれど、門司港に行くたびにどこか懐かしい気持ちを感じる。

小倉から門司港行きのJRに乗ると、窓辺から見える景色がビルから海にだんだんと変わっていく。終点の門司港駅の駅舎はレトロでモダンな雰囲気があり、とてもお洒落。改札を通り、駅舎の外へ出ると門司港レトロの街並みが見えてきて、私の心も弾んでくる。

思い返せば、門司港には数々の思い出がある。その思い出を振り返るたびにあたたかい気持ちになるけれど、どこか切なくもなる。もうあの時間は戻ってこないのだと。

けれど、そうした輝くような記憶が心の中に存在しているということはとても幸せなことなのだろう。

春は家族や甥っ子と一緒に潮風号に乗って、景色を楽しみながら終着駅の関門海峡めかり駅まで行った。めかり公園の大きなタコの滑り台で甥っ子が楽しそうに遊んでいたのが懐かしい。まだ二人とも小さく、当時の写真を見ると愛おしい気持ちになる。

夏には関門海峡花火大会を見に行くことが毎年の楽しみだった。海峡を挟んで打ち上げられる花火の圧倒的な美しさに毎回感動して、涙が出そうになっていた。

秋の門司港は芸術の秋を感じられる。門司港レトロ広場ではジャズの演奏をよくしていて、落ち着いたモダンな音色が港町の雰囲気に合っていた。私も門司港でジャズをよく聴くようになってから、ジャズに興味を持ち好きになった。
出光美術館や門司港アート村、旧大阪商船の中にあるわたせせいぞうと海のギャラリーなどでは芸術作品やアートに触れることができる。

冬の門司港も素晴らしい。門司港レトロ展望室からは門司港レトロのイルミネーションや関門橋のライトアップ、下関側の夜景を見渡せ、ロマンチックな時間を過ごすことができる。
クリスマスの門司港はカップルで溢れており、デートスポットとしてもぴったり。

このように春夏秋冬を振り返ってみても、門司港は魅力が溢れる街並みだと思う。歴史的な建築物も多く、まるで映画の中にでてきそうな場所ばかり。

グルメも充実しており、門司港発祥焼きカレーのお店がたくさんあるので、それぞれのお店を巡り味の違いを楽しんでみたりもした。

お天気が良い時は門司港レトロからめかり方面に歩いていくと、ノーフォーク広場に辿り着く。さらに先に進むと人道トンネル入り口が見えてくる。トンネルの中を歩いて約15分で隣の県に行けるなんて、とても面白いと思う。何度通ってもワクワクとした気持ちになる。

友人と会話をしながら海辺を歩いたり、西海岸通りのカフェや雑貨屋さんに行ったことも大切な思い出の一つ。思い返してみても穏やかで優しい時間だった。今は離れた場所に住んでいるけれど、またいつか門司港で再会して一緒に時を刻むことができたら、どんなに幸せだろう。考えただけで胸がときめいてしまう。

「恋人の聖地」にも指定されているブルーウィングもじ。この青いはね橋から夕暮れや夜景を見ていると、関門海峡の優しさに包まれるかのように心が癒やされていくのを感じた。

門司港にいると時間を忘れてしまう様な感覚になるのは、その土地や人が醸し出す空気感に温もりがあるからだろうか。

「時には立ち止まってもいいのだよ」と港町が優しく伝えてくれている様に思える。
ただゆっくり「今」という時を感じることの素晴らしさを教えてくれるような街なのだ。

今は遠方に住んでおり、以前の様に頻繁には行けなくなってしまったけれど、門司港のことを誰かに話すたびに笑顔になっている自分がいる。こんな気持ちにさせてくれる門司港に感謝の想いを込めてこのエッセイを綴った。

もし心が疲れたと感じることがあったら門司港に行ってほしいと思う。関門海峡を行き交う船の汽笛の音を聴きながら、景色を見ていると、きっとあなたの心も安らかになってくるだろう。

作者:mimiさん