「何度か移住し」「出張族で」「起業」した私が選ぶ北九州【エッセイコンテスト 入選作品】

エッセイコンテスト「第1回 キタキュースタイルカップ」 入選作品

小倉北区で医療用のプログラムを開発する株式会社PixSpaceを起業した阪本剛と申します。私は1984年生まれで出身は和歌山県和歌山市、大学では広島県三原市、就職では東京の葛飾区新小岩に住んでおり、2016年に小倉北区に移住してまいりました。現職もそうですが前職は名実ともに出張族であり、27歳の時点で全ての県をまわることができました(最後は青森県、その前は宮崎県。最初に出張したのは愛媛県)。「日曜夜に出発して土曜日夜に帰ってくる」「洗濯して日曜夜に家を出る」これの繰り返しを新卒から5年ほど繰り返しました。海外出張は50回ほど経験しています。そんな私はあらゆる地域の経済、交通手段を一通り経験しており、その経験を踏まえて「起業するなら小倉に行こう」と、縁のない土地に引っ越してまいりました。その経緯は北九州に住まわれる人にとって、またはこれから北九州に移住してみようと考える人にとって、一つの参考になるのではと考え、当企画に参加させていただきました。

2020年4月1日における792ある市町村の人口ランキングで北九州市は13位です(14位は大阪の堺市)。面積は143位で大分県中津市とほぼ同じです。人口密度は166位で静岡県焼津市と同じです。ちなみに堺市の人口密度は66位で千葉の「あの流山市」に次ぐ密度です(流山は関東では人口増加率で有名)。つまり北九州市は人口が多いのに密度が高くありません。人口という高い経済力を持ちながら、それの副作用である密度が高くないという極めて生活環境が良好な街と言えます。それが反映されるがごとく「次世代育成環境ランキング」は8年連続一位、「2018年版 住みたい田舎ベストランキング」は堺市より人がいながら田舎扱いされるという、ボクシングでいう「ヘビー級がバンダム級に殴り込み」という状態で一位を獲得しています。
(参考 https://uub.jp/rnk/c_j.html

これほど高い経済力を持ちながら生活コストは大変安く、例えばいま私が住む家は8畳の1Kながら浴室乾燥機が付いて50,000円です(小倉駅から徒歩5分)。東京時代はほぼ同じ条件で浴室乾燥機がなくて67,000円でした(駅から12分)。オフィスの家賃も同様でAIMビルでは23平米で9万円ほど、引越した中津口のオフィスは水道ガスを含めると70平米でも9万円未満です。次に昼飯です。東京時代はオフィスが東京駅すぐ横でしたので、たまにオフィスに居るときに昼飯で外食するのですが、どこかで食べようにも大体1000円前後という感じです。東京駅の駅ナカは1000円超えます。一方小倉では500〜800円が相場だと感じています。また夜も私は毎日お酒を飲みますが、居酒屋やバーも充実しており、数件ハシゴしても5,000円くらいで十分です。東京でもそういう地域はあるのですが、そういう地域からオフィスに向かうのは大変です。その意味で「生活・仕事場・飲食街が直結」という独身男性には毒な環境であることがわかります。ただ、この生活費の安さは起業家として起業時における「必要な収益」を考える上で大変重要になるため、安定した会社づくりと生活を維持したいのであれば、まずは博多よりも小倉であると考えます。


(大好物の旦過スパイスカレーARATA)

さて、出張族の観点から「いかに優れた交通拠点であるか」を紹介させてください。私はコロナ騒動の前までは2週間に一度何処かに出張していました。出張から考える小倉の良さ、まずは「すべての新幹線が利用可能」という点でしょう。このおかげで鹿児島から東京までの新幹線は全て利用可能です。自宅から徒歩利用可能な駅で「全ての新幹線に飛び乗れる」というのが凄いです。予約無しで飛び乗って、京都や大阪まで行けるのです。博多駅や広島駅と変わりません。次に博多へのアクセス。私は飛行機利用の場合は福岡空港でLCCを利用するため、頻繁に博多行きの新幹線を利用します。これが2160円で17分、10分に一本発着し、天候にもほとんど影響されません。さらに福岡空港でLCCを使えば、東京・名古屋・北海道など、ほとんどの主要都市にアクセスできます。2160円で移動するだけでメジャー航空会社を利用する費用を鑑みると「お釣りが来る安さ」です。ちなみに我が家から福岡空港までのアクセスは30分、飛行機の出発時間の2時間前に家を出れば余裕で間に合います。さらに台湾にも往復6万円ほどで3泊できます。また仕事で愛媛県に移動することが多いのですが、帰りはフェリーが使えます。片道9,500円程度で一泊+移動が可能、しかも着船場はAIMビルの裏で我が家の近所。非常に助かります。博多駅同等のパフォーマンスを持つ小倉駅に加え、福岡空港を我が物顔で使い倒せ、生活コストは周辺の主要都市以下です。モノレールに加えてバスの整備も素晴らしい。


(画像はhttps://www.freemap.jpより自身で編集)

個人的には「楽園に引っ越してきた」のですが、小倉の地元の人や移住してきた大学生などには、あまりその良さが実感されていないというのが、今私の持つ北九州の人々の印象です。人口ランキング13位の北九州を「田舎だから」と呼んでしまうのは、なぜなんでしょうか。とは言え、この良さを感じるのは私が「何度か移住し」「出張族で」「起業した」という経験により、少し敏感になっているためでもあります。でも、そこに先に気がついてしまうと「外に移住する楽しみ」さらに「地元の良さに気がつく楽しみ」が得られませんので、良さに気が付かないのはアリなのではと考えています。良い街であれば、きっと気が付きます。移住前にシミュレートしたときに「すごい街かも」とワクワクしていました。

したがって、私の感じる北九州の良さは「経済力に対してコストパフォーマンスが良く、交通網にも優れるため、新しいことを始める人に最適」ということです。ちなみに神奈川に住む私の友人も家族が増えるので、家賃と間取りの都合で北九州への移住を検討しているそうです。彼は士業なのですが、個人で事業をされている人であれば「北九州を本拠地に東京へ出張で営業」ということも可能でしょう。コロナの影響でリモートワークの壁が薄くなりましたので、働く場所は関係ありません。これからますます北九州の需要は増えると思います。また私達のような起業家にとっても、世界を見れば東京も北九州も同じです。北九州をもっともっと若手IT起業家が集まる「日本のシリコンバレーにしたい」という野望を持ち、明日も仕事頑張ります。

作者:阪本 剛さん
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