北九州でカウンターを極める(番外編)~『Rcafe・つばめドーナツ』編~

北九州市には、ぜひとも行ってほしいこだわりのお店、個性的なお店がたくさんあります。

一緒に行く人がいない、となるとなかなか行くタイミングもむずかしいものですが、ひとりで行ってこそ、ゆっくりとその雰囲気を味わい、お店の良さを堪能することができるはずです。
普段はカウンターのあるお店に特化してご紹介していますが、“初めてのお店に一人で入る”というハードルを飛び越えてでも、「行ってよかった!」と思ってもらえるような、そんなお店をご紹介していきたいと思います。

【Rcafe・つばめドーナツ】

最初の一歩

下曽根駅から徒歩15分ほど。『旧北九州空港があった辺り』、と言えばピンとくる人もいるかもしれません。住宅街の中に突然お洒落な建物が現れるので、お店を見つけた時点でなんだか得したような、楽しい気持ちになれます。

お店は2階。かわいらしい螺旋階段を上り、煉瓦のアーチをくぐれば、入口です。このちょっとわくわくする入口までのアプローチで、気持ちはさらに高まります。

いたるところに植物などの緑が目に入り、癒される店内。丸い屋根も優しい雰囲気に一役買っています。その丸い屋根に沿った大きな窓からは日も降り注いで、のびのびと穏やかな気持ちになれるのがここ【Rcafe】の特徴。

なんと言ってもRcafeのRは“リラックス”のRなんです。「いつ誰と来ても、一人でも、くつろげる空間でありたい」。そんな想いで名付けられた【Rcafe】、どんな経緯でオープンしたのか、伺ってみました。

Rcafeの不思議なはじまり

Rcafeのオープンは2000年。そのきっかけになったのは、現在お店を切り盛りしている綾子さんのお母さま。突然「コーヒー屋さんをやりたい」と言い出したのだそうですが、その理由がなんと、『夢にコーヒー屋さんをしている自分が出てきたから』。その一言に、もともと料理が得意だったお父さまも賛成し、「こじんまりしたコーヒーショップを始めよう」ということに。

ご両親に「一緒にカフェをやってほしい」と言われた綾子さん、実は大学卒業を控え、内定先も決まっていました。ですが、地元に残ってご両親と一緒にRcafeを立ち上げることを決意します。

春に大学を卒業し、その年の9月にオープン。もちろんみんな未経験、全員が素人なので、手探りでのスタートでした。今は住宅街になっていますが当時は田んぼの中の一軒家といった感じ。SNSもないので告知もそれほどできず店の前に小さく『今日からオープンします』と黒板を出したくらいで、「誰も来ないと思っていた」そうなのですが、ふたを開けてみれば逆に困ってしまうくらいたくさんのお客さまが初日から押し寄せたんだとか。まわりに何もなかったからこそ、待望だったのかもしれません。

そんな風にオープン初日から今日までずっとお客さまに愛され続けてきたRcafe。今では綾子さんの旦那さまも加わり、二人が中心となってお店を引き継いでいます。「田舎の隠れ家的なカフェを目指して始めたので、まさか23年も続けられるとは」とおっしゃる綾子さんですが、Rcafeには、長年愛される秘訣がたくさんあります。そのあたりを紐解いていきたいと思います。

まだどこにもなかったラテアート

内定を蹴ってカフェをやることを決意した綾子さんは、ご両親から「コーヒーを勉強して」と言われたそうなのですが、当時はカフェラテ、カプチーノ、エスプレッソという言葉を知っている人も少ないくらいの時代。YouTubeなどもないので、勉強方法は限られていました。そんな中でも独学で少しずつ勉強し、お店ができるまでの間毎日練習に励んだ綾子さん。お店をつくってくれている大工さんに日々飲んでもらい、「だんだん上手になってきたね」と成長を見守ってもらいながらオープンの日を迎えたそうです。

そうして努力の末にマスターしたラテアートは、今でも「かわいすぎて飲むのがもったいない!」と評判のメニュー。一般には、葉っぱやハートなどピッチャーを揺らしてつくるラテアートが多いそうですが、Rcafeはピックなどを使って細部まで描く“エッチング”という方法で提供しています。エッチングの珍しさだけでなく、そのかわいさも人気の理由。猫やクマなど飲んでしまうのがためらわれるほどかわいいイラストが描かれていて、見てほっこり、飲んでほっこりできる一杯となっています。

実は私もオープン当初にRcafeを訪れたことがあり、当時見たこともなかったラテアートに衝撃を受け、そしてそのかわいさと美味しさに感激したことを今でも鮮明に覚えています。長年にわたり、お客さまを喜ばせているラテアート。綾子さんも、お客さまに「ラテアート昔からされてますよね」と言われると嬉しいそうです。北九州の中でも先駆けと言えるラテアートが飲めるというだけでも、行く価値あり!です。

新しく加わった要素

さてここで、【つばめドーナツ】にも触れたいと思います。

2000年にオープンし、長く愛されてきた【Rcafe】。ですが、コロナをきっかけに「飲食店はだめかもしれない」と思ったこともあったそう。しかしそんな時、卸してくれている業者さんから「飲食店はみんな嘆いているけど、パン屋さんやケーキ屋さんは逆に持って帰って食べられるから全然影響ないどころか、ちょっと売り上げが上がっている」という話を聞きます。「うちも何か持って帰ってもらえるものを始めたい」。

そこで、元々カフェで出していたドーナツをもっとたくさん作ってドーナツショップをしよう!とコロナをきっかけに誕生したのが、【つばめドーナツ】です。

つばめドーナツはRcafeの店内にあり、もちろんつばめドーナツのテイクアウトだけのご利用も可能。
焼きドーナツなので揚げドーナツよりヘルシーに食べられ、味も甘すぎないようにつくっているとのことなので、女性にも男性にも喜ばれているつばめドーナツ。そして選ぶのが悩ましいほどフレーバーがたくさんあるのも嬉しい要素。

中でもドーナツのフレーバーとしては珍しい『熟成しょうゆ』は、地元のお醤油屋さんのしょうゆを使用し、温めると香りが立ってとってもいい匂い!ほんのりとした塩味とやさしい甘味が口いっぱいに広がってクセになりそうな美味しさでした。

熟成しょうゆに限らず、つばめドーナツのドーナツは一つで色んな美味しさが味わえるんです。
そのまま食べればしっとり。トースターで温めるとサクふわの焼き立て食感になり、少し粗熱が取れるとまわりがちょっとパリッとします。そしてレンジで温めればふわふわ、と好みによって一つで何回でも楽しむことが出来ちゃうんです!お客さまの中には、「冷やして固めで食べるのが好き」と言う方もいらっしゃるそうで、自分のベストな食べ方がどれか、食べ比べてみたくなります。

日持ちもするため、ギフトにも人気。北九州市で開催された竜王戦での勝負スイーツにも選ばれたため、これからさらに話題になりそうです。

人気メニューの数々

そんなドーナツは店内でも食べられます。ショーケースから選ぶこともできますが、季節によって変わるドーナツショートケーキが特に人気。つばめドーナツのドーナツはバターをたっぷり使っているのが特徴ですが、生クリームを合わせるのでショートケーキ用のドーナツは重たくならないように配合を変えて、軽めの味にしているんだそう。ショートケーキのスポンジ部分がドーナツなんて、とっても贅沢!

そしてスイーツの中で創業当時から人気なのが、キャロットケーキ。【アナリー】という名前が付いています。この由来はと言うと、綾子さんのお友達がつくってくれたケーキがすごく美味しかったので、レシピを教えてもらったのがこのキャロットケーキだそうなんですが、そのお友達の名前が“アナリー”さんなんだとか。素敵なエピソードですよね。

味もさることながら、白いクリームチーズフロスティングに鮮やかなお花が乗って、色のコントラストが目を引きます。こちらの食べられるお花・エディブルフラワーはなんと旦那さまの憲生さんが育てたもの!有機栽培・無農薬でラテアートや他のケーキにも添えられており、美味しそうなだけでなく見た目の美しさにうっとり。外食するときはちょっぴり非日常を味わいたいものですが、Rcafeの華やかなスイーツやかわいらしいラテアートは、自分を高めてくれるような特別な気持ちにさせてくれます。

お食事の一番人気はパエリア。魚介たっぷり、きのこやお野菜もたっぷり!パエリア鍋で熱々のまま食べられるので最後まで美味しくいただける一品。「ここのパエリアが一番!」という人も多く、不動の人気だそうです。
しっかりお食事も楽しめて、スイーツとドリンクでお茶もできて、そしてドーナツを買って帰ることもできる。“3度おいしい”、そんなどんなニーズのお客さまにも応えられるのがRcafeの最大の魅力。お食事だけ、スイーツだけ、コーヒーだけ、ドーナツだけ買いに来るものもちろんOKなので、何度来ても、そして一度でも色んな楽しみ方ができるオールマイティなカフェなのです。

ここで、これからも、続いていく

「就職せずここに残ると決めたときに、“残るからには下曽根や北九州を盛り上げたい”という気持ちがすごくあったし、地元に残ったからには地元の活性化に繋がればいいなという思いはあります」と語ってくれた綾子さん。実はRcafeのロゴに“下曽根ジャパン”と書いてあったり、竜王戦ドーナツにも“北九州”の焼き印があったり、ドーナツのフレーバーは地元のお醤油や抹茶を使用したり、北九州愛にあふれていることが伝わります。

そして何より、23年前にお店をやると決断してからずっと、ここでお客さまを喜ばせていることが、地元への還元に繋がっています。

綾子さんには『お客さまが店を出ていくときにニコニコして「楽しい時間だったね」と思って帰ってくださると嬉しい』という想いがあり、それは23年前からずっと変わらず、一番大事にしていることだそう。

その想いはお客さまに伝わり、「車で2時間半かけてきたけど来た甲斐がありました」「今日こんな嫌なことあったけどここにきて元気になった」と声をかけてくださったり、お客さまが手紙を残してくれることも。

昔から通ってくれているお客さまはもちろん、小さいときに来ていたお客さまが大きくなって「ここでバイトするのが夢だった」と何人もバイトに来てくれたりもしたそうで、Rcafeに来ればみんな楽しい気持ちになり、そしてまたその気持ちを味わいに、訪れたくなるんだと思います。

そして綾子さんから、「娘もここでカフェをやりたいと言ってくれている」という朗報が!これからもここで、Rcafeはリラックスできる場所として続いていきます。

2階にあって中の様子が見れないので、上がってくるとき不安な方も結構いらっしゃるようなのですが、ぜひ気軽に階段を上ってみてください。まるでデトックスのようにこの空間に居たらいろんなものが落ちて、すっきりとリフレッシュして帰れる、そんな癒しを与えてくれますよ。

※一部お写真はRcafeさんにご提供いただきました

詳細情報

北九州市小倉南区中曽根東2丁目17−14

営業時間/10:00~17:00

定休日/日曜日

※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください

さいごに
初めてのお店に一人で入る、というのはなかなかハードルが高いですが、北九州市はそもそも人懐っこい人が多いので、店主さんもお客さんも距離が近く、おひとり様に向いている土地と言えます。もちろん、ひとりでゆったりとした時間を過ごすもよし、ひとりの楽しみ方は無限大!
これからも一人でも初めてでも行く価値のある、そんなお店をご紹介していきますので、お楽しみに!

協力:門司港ゲストハウスポルト

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