北九州芸術劇場では、地域のさまざまな領域の団体・機関などとパートナーシップを組み、芸術・文化の力で “人と人”“人とまち”をつなぐ「ひとまち+アーツ協働事業」を展開しています。
過去には北九州市身体障害者福祉協会アートセンターや子ども食堂、北九州市子ども・若者応援センター「YELL」との取り組みを実施してきました。
昨年度は、北九州YMCA 学院、北九州市立大学国際交流プロジェクトFIVAとの取り組みをスタート。2年目となる本年度は、留学生・大学生を対象としたクリエイション・ワークショップを行いました。
講師を務めたのは、日本を代表する舞踏カンパニー・大駱駝艦の田村一行さん。7名の参加者(留学生4名、北九大生3名)は日本発祥のダンスである舞踏を体験しながら、短い作品創作にチャレンジ。4度のワークショップを経て、11月3日に北九州YMCA 学院で開催された「北九州多文化共生わいわい祭り」でその成果を披露しました。
前日の遅い時間まで練習を重ねていた参加者たち。本番前も緊張の様子が見られましたが、無事に舞踏をやり遂げました。
「普段自分たちが踊っている『舞踏』の面白さを伝えたい」と今回のワークショップに臨んだ田村さん。モンゴルやネパールからの留学生と一緒に作品を作ることで、ふだん日本人と作品を作っているときとは違う風景を垣間見ることができたといいます。ワークショップでは言葉の壁を感じつつも、踊りは言葉の壁を超えることを再認識したそうです。
田村さんに北九州市の印象を訪ねると「ご飯もお酒も美味しいですよね」と答えてくれました。続けて「以前、北九州芸術劇場の企画で埋蔵文化財調査室とコラボしたことがあります。3時間のワークショップのうち、最初の1時間は発掘現場をずっと掘っていました。自分たちで掘っていく作業で時間をさかのぼっていくような感覚があり、時空を超える経験が簡単にできる場所だと思いました」と、北九州市での思い出を話してくれました。
参加者のひとり、YMCAで勉強しているモンゴルからの留学生のアルタンツォグト・オルホントールさんは、「今回の『舞踏』は心から踊る感じで楽しかったです。他の国の人と一緒にステージで踊るのはとても良い経験になりました。家族や友達に今回の経験をいろいろと伝えたいです」と話してくれました。
今回は、前日のリハーサルと本番当日の2日間を見学させていただきましたが、「ひとまち+アーツ協働事業」の目的である「多様性社会の実現」がよく表れている取り組みであると感じました。
「ひとまち+アーツ協働事業」は、長期的なビジョンをパートナー先やアーティストと共有し、舞台芸術の持つ創造力を活かして人とまちの新たな繋がりや多彩な魅力を創出することで、地域の課題解決、多様性社会の実現へ寄与することを目指しているといいます。今後も引き続き注目していきたいと思います。