J:COM北九州芸術劇場が主催する「キタゲキスクール」は、次世代の舞台表現者を育成するプログラムとして2024年にスタートしました。その集大成となる成果発表公演が2月22日(土)と23日(日)に開催されます。
本番に向けた稽古がスタートし、初日を終えたタイミングで、上演作品(「鹿児島本線 快速 門司港行き」、「貴方、代行サービス。」 )の作・演出を手がけた田中千恵里さんと山本一葉さん、そして全体の指導を務めた守田慎之介さん(演劇関係いすと校舎代表)に、作品に込めた思いや演劇への向き合い方について話をうかがいました。(取材日:2月10日)
ーー初日の稽古を終えてのご感想をお聞かせください。
守田さん:今回は全体の指導を担当しています。初日の稽古を終えて改めて感じたのは、小屋入り(劇場入り)経験の少ない参加者に、もう少しスムーズに進められるサポートができたのでは、ということです。ただ、1日目として必要なことはしっかり進められたと思います。」
ーー今回、守田さんはどのような役割なんでしょうか?
守田さん:全体を見守る役割に近いですね。最初のオリエンテーションでは、参加者の人柄を見るためのワークショップを担当しました。また、各講師の方々と打ち合わせを重ね、どのような内容を参加者に伝えてもらうかを調整しています。講師陣の指導を見守りながら、参加者の活動状況を把握し、進行をサポートする形で関わっています。
ーー作・演出を手掛けたお二人の参加のきっかけを教えてください。

田中千恵里さん:高校時代は劇団で演出助手をしていましたが、大学では舞台に関わるかどうか迷っていました。そんなとき、キタゲキスクールの募集を知り、もう一度舞台の仕事を目指そうと思い、参加を決めました。
山本一葉さん:小学3年生の頃から市民参加のミュージカルに出演していました。将来も演劇に関わりたいと思っていたところ、母がキタゲキスクールを見つけてくれて、「ちょうど合ってるんじゃない?」と言われたのがきっかけです。
ーー実際に参加してみていかがですか?

田中さん:毎週講習を受けているのですが、講師の方々が本当にすごい方ばかりで驚きました。私にとっては、草野球の少年がプロ野球選手と一緒にプレーするような感覚です。そんな環境でお芝居を作れるのは、本当に貴重な経験だと思います。
山本さん:これまで、市民参加のミュージカルしか経験がなく、演劇の世界にはもっと多様な考え方や見せ方があることを知りました。いろんな視点から演劇を学ぶことで、自分の世界が広がったように感じます。
ーー今回の作品についてお聞かせください。

田中さん:(「鹿児島本線 快速 門司港行き」の作・演出を担当)作品は20分の短編にすることが決まっていました。そこで、すでに存在する「20分間の空間」を舞台にしようと考え、日常的に利用している鹿児島本線を選びました。行き先は、私にとって思い入れのある門司港。北九州らしい、どこか人情味のある作品にしたいと考え、「1人の男性に執着する女性たち」というテーマを描きました。

山本さん:(「貴方、代行サービス。」 の作・演出を担当)私の作品は「貴方、代行サービス。」という架空のサービスを巡る物語です。もともと映像の学校で企画したもので、舞台化するにあたり脚本として書き直しました。主人公は大学2年生の石松朱莉。友人から「面倒な授業や宿題を代わりにこなしてくれるサービスがある」と教えられ、次第にそのサービスに頼るようになり、人間関係が変化していく——というストーリーです。
ーー上演作品が決まるプロセスはどのようなものでしょうか?

守田さん:戯曲講座を受講した皆さんが書いた脚本の中から2本を上演することが決まっていました。登場人物のバランスや、役者が挑戦しやすい作品かどうかを考慮しながら、今回の2作品を選びました。
ーー今回「キタゲキスクール」に参加して、ここまで印象に残っている出来事は?
田中さん:自分の脚本が上演されると決まった瞬間ですね。大学に進学する際、思い通りの結果ではなく、一時は夢を諦めかけていました。でも、キタゲキスクールに参加し、脚本が上演されることになり、大学生活の中で計画外の大きな出来事が起きました。その瞬間の衝撃は忘れられません。

山本さん:初めて自分の脚本が俳優に読まれ、実際に動きをつけて稽古をしたときですね。「本当に自分の作品が舞台になるんだ」と実感した瞬間でした。
ーー今回の見どころをお聞かせください。
守田さん:役者たちの演技はもちろんですが、テクニカル面も見どころです。裏方の仕事も出演しない参加者が交代で担当しているので、舞台の表と裏、両方の奮闘を想像しながら観てもらえたら、より楽しめると思います。
田中さん:鹿児島本線は北九州の人にとって馴染みのある風景です。リアルな世界と、舞台の中の非現実的な物語のかみ合わなさを楽しんでほしいですね。
山本さん:「貴方、代行サービス。」は、ファンタジーですが、どこか現実にありそうな物語にしています。作品を見て「こういうこと、あるかも」と共感してくれたら嬉しいです。
ーー将来、どのように演劇に関わっていきたいですか?
田中さん:宝塚歌劇の演出家を目指しています。現在、大学でジェンダーとセクシュアリティを研究していて、社会の変化と演劇が密接に関わることを実感しています。宝塚の演出家になるには狭き門ですが、キタゲキスクールでの経験を活かして挑戦したいです。
山本さん:脚本を書きたいし、役者もやりたいし、演出もしたい。まだ明確な方向性は決まっていませんが、どの形であれ、演劇にはずっと関わっていたいと思っています。
ーーありがとうございました!
公演日程・会場
日程:2025年2月22日(土)・23日(日)
- 2月22日(土) 14:00開演
- 2月23日(日) 14:00開演
※開場は開演の20分前
※全公演終了後にアフタートークを予定
会場:J:COM北九州芸術劇場 小劇場
チケット情報
料金:日時指定・全席自由・当日共通 500円
※未就学児の入場はご遠慮ください
発売日:2025年1月12日(日)10:00~
チケット取扱い
劇場窓口
劇場オンラインチケット
電話予約:093-562-8435(12:00~17:00、土日祝を除く)
響ホール事務室
お問い合わせ
J:COM北九州芸術劇場
TEL:093-562-2655(10:00~18:00)
備考
企画・製作:北九州芸術劇場
主催:(公財)北九州市芸術文化振興財団
共催:北九州市
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会