北九州芸術劇場では、地域のアーティストと2年間のタッグを組み、「地域とつながる」「まちや人と舞台芸術の力を共に分かち合う」「舞台芸術の熱を伝える」の3つをキーワードに、市民参加作品を創作する『キタゲキローカルアーティスト協働プログラム(LAP)』を2023年より実施しています。
第一弾では、北九州を拠点に国内外で活躍するダンスカンパニー「太めパフォーマンス」を迎え現在11月2日(土)、3日(日)の公演に向けて稽古が進行中。「太めパフォーマンス」は、乗松薫さん、鉄田えみさんによるカンパニーで岡山大学モダンダンス部での出会いをきっかけに2009年に結成、2012年より北九州に拠点を移し活動しています。若手振付家の登竜門とされるトヨタコレオグラフィーアワードファイナリストや国際的なフェスティバルSAI2018最優秀作品賞など、数々の受賞歴を持ちながら、北九州芸術劇場との取り組みとして小学校へのアウトリーチなど地域に根差した活動にも携わってきました。
この1年間、おふたりは北九州市内のさまざまなお祭りのリサーチや、ワークショップを通じた市民との交流を重ね、新作『シワノヴァ』の創作に取り組んできました。上演を1週間後に控えた稽古場で、その創作過程についてうかがいました。
「シワノヴァ」には、20代から70代までの市民9名が参加しています。鉄田さんは市民と作品を創る際、「イエス・アンド」の姿勢を大切にし、「こちらのイメージと異なっても、相手の発想が面白ければ『それいいね』と肯定して作品に取り入れている」と話します。また「参加者の方が面接で披露してくれた特技や個性も生かし、本筋から外れない範囲で作品に盛り込む」ことも心がけているそうです。乗松さんは、参加している市民について「皆さんが初めから楽しそうで、そのままの気持ちで最後まで続けてもらえたら」と語りました。
作品のテーマ「シワ」は、市民の声がきっかけとなったもの。北九州の祭りリサーチで、五穀豊穣や疫病退散を願う伝統行事に触れたことから、鉄田さんはワークショップで「増やしたいもの、減らしたいもの」を尋ねました。その際に「シワを減らしたい」という意見が出たことで、このテーマが深まったと語ります。乗松さんは印象的な祭りとして、小倉南区で行われる「井手浦 尻振り祭」を挙げました。これは、八岐大蛇が退治され、その尻尾が井手浦に飛んできて大豊作になったという伝説に由来し、1600年代から続く祭りです。
リハーサルでは思わぬ展開も生まれています。乗松さんは「声を出さずに踊る予定が、自然と声が出るようになり、参加者のアイデアを取り入れることでピュアなパフォーマンスになっている」と語りました。
本作の見どころについて鉄田さんは、「ネガティブに聞こえるかもしれないが、いわゆる踊れる体とは違う、リアルな体の動きこそが魅力。ダンサーがただ綺麗に踊るのではない、感動が生まれている」と話します。乗松さんも「その場で起きることはその場限りの表現になると思うので、ぜひ観に来てほしい」と締めくくりました。
太めパフォーマンス(乗松薫、鉄田えみ)
岡山大学モダンダンス部での出会いをきっかけに、卒業後の2009年に「太めパフォーマンス」を名古屋にて結成。2012年より北九州市に拠点を移し、現在に至るまで国内外で精力的に作品を発表している。トヨタコレオグラフィーアワード2014ファイナリスト。2015年『乙女』を福岡ダンスフリンジフェスティバルにて発表。これをきっかけに国内外のフェスティバルから招聘を受ける。SAI2018 コンペティション部門最優秀作品賞受賞。Myung Hyun Choiとの共同振付作品『The Ignited Body』は横浜ダンスコレクション2019 にて奨励賞を受賞。株式会社YAIZOO所属アーティスト。
北九州芸術劇場では学校アウトリーチ等に携わり、ダンスクリエーション『ギミックス』(振付・演出:井手茂太)ではキャストとしての出演に加え、演出助手としても作品創作に関わった。
公演概要
キタゲキローカルアーティスト協働プログラム市民参加でつくるコンテンポラリーダンス作品『シワノヴァ』
11月2日(土)13時/17時、3日(日)13時
J:COM北九州芸術劇場 小劇場
振付・演出:太めパフォーマンス(乗松薫、鉄田えみ)
舞台美術:佐々木文美
出演:
● [市民参加]アコさん、大辻美恵子、佐藤香菜、濱田いずみ、真吉、松本紀子、山本晃子、ゆかちん、りゅうちゃん
● [ゲスト出演]江下立(真延流)、林 麻耶(Studio Kanon)
● 太めパフォーマンス(乗松薫、鉄田えみ)
お問い合わせ:
J:COM北九州芸術劇場
TEL:093-562-2655(10:00~18:00)
企画・製作:北九州芸術劇場
主催:(公財)北九州市芸術文化振興財団
共催:北九州市
助成:(一財)地域創造