2022年7月に北九州芸術劇場小劇場で開催された「劇トツ×20分」2022の優勝作品「おんたろう」が帰ってきます!
福岡を拠点に活動する演劇的パフォーマンスユニット「PUYEY(ぷいえい)」が、2023年4月22日(土)、23日(日)の2日間、J:COM北九州芸術劇場小劇場で「おんたろう」の新作長編「おんたろうズ」を上演します。
北九州芸術劇場での初上演を控えた「PUYEY」の高野桂子さんと五島真澄さんにお話をうかがってきました。
ーーお2人でユニットを組むきっかけを教えてください
高野さん:もともとお互いの出演している舞台を見たことがあり、ダンスのワークショップでも顔を合わせていたので、顔見知りではいました。
五島さん:浅く知り合いではいたよね(笑)
高野さん:北九州モノレールの車内で演劇を上演する企画で、ブルーエゴナク代表の穴迫(信一)くんと一緒に構成・演出で作品を作るときに、俳優を自分たちで声をかけていいよって劇場の方から言われました。そのときにふっと浮かんだのが五島でした。彼の舞台を見て、ちょっと肩の力が抜けたようなたたずまいがいいなと思っていたんです。
モノレールで一緒に仕事をして、五島が音楽や絵、ダンス、英語などたくさんの才能を持っていることを知りました。五島と組めば、いろんなところに作品を持っていけるユニットを作れるんじゃないかと思い、一緒にやろうよと私から声を掛けました。
五島さん:全然そこらへんのことは覚えていないんですが(笑)、僕はそれまでどこの劇団にも所属をしたことがなく、もし劇団で活動するのであれば、本当に好きなところに入るか、もしくは自分で作るかのどちらかかなと考えていました。高野は自分にはない行動力を持っているので、一緒に活動すれば面白いことができるかもと思い、申し出を受けました。これが2016年のことです。
ーーおふたりというのは動きやすいですか?
高野さん:そうですね。物理的に交通費とか(笑)
五島さん:10人規模になってしまうと、気軽に他の地域に作品を持っていくのが難しくなるんですが、2人だといろんな場所に作品を持っていくことができます。初期は軽自動車に荷物を積んでツアーを回っていましたが、それは少人数だからこそのフットワークの軽さだと思います。
ーーPUYEYさんは「演劇的パフォーマンスユニット」とのことですが「劇団」との違いはどんなところですか?
高野さん:既存の演劇の枠にとらわれない作品を生み出しているところです。自分たちがこれまで作ってきた、路上での紙芝居やエクササイズ風のパフォーマンス、まち歩きの作品などは演劇のあり方を模索する場としての「演劇的パフォーマンス」だと考えているので「演劇的パフォーマンスユニット」を名乗っています。
ただ、今回の「おんたろうズ」はかなり“演劇”に近いと思います。
ーー「おんたろう」が生まれたきっかけを教えてください
高野さん:「おんたろう」は私の実体験から生まれました。私は嫌なことを言われたりされたりしても、その場でやめてと言ったり怒ったりするのが苦手なんですよね。つい我慢してしまい、なぜあのときちゃんと言えなかったんだろう、と後から自己嫌悪になることが多いんです。でも悔しいから、今度言われたらこう返そうと自分の中でロールプレイするようになりました。そのロールプレイが、短編「おんたろう」に出てくる歯医者さんの女性が練習するシーンに繋がるんです。
生きていてモヤモヤを抱えている人が、もう少し生きやすくなるためにアドバイスしてくれるような存在がいたらいいなと思って作り出したのが「おんたろう」です。
ーー「おんたろう」という名前やビジュアルはどうやって決まったんでしょうか?
五島さん:最初は女の子が日々起きたことを紙で記録として残したものが膨大な量になって、その紙が意志を持って擬人化するといったちょっとホラーっぽい設定だったんです。
高野さん:起きたことに対する恨みつらみを書いた紙の束に魂が宿るという設定です(笑)
五島さん:紙の束がわら人形みたいになって現れてくるんですけど(笑)
高野さん:でもそのとき名前はもう既におんたろうだったよ。
五島さん:おんたろうという名前がポン!とでてきました。
高野さん:おんたろうの「おん」は怨念の怨なんですが、字面が怖すぎるからひらがなにしようって(笑)。ビジュアルはおんたろうの設定を考えているうちにどんどん変化していきましたね。
嫌なことが書かれた紙の束に魂が宿るって、実際に作ろうと思ったら大変じゃないですか。だからビジュアルどうしようとか言ってたら、五島さんが着ている上着をバサッと頭の上にかぶせてこんな感じは?って言ったんです。
五島さん:僕、そういうチープな表現が大好きなんですよ(笑)
ーー「劇トツ×20分」2022の優勝特典として翌年上演する作品を(長編の)「おんたろうズ」にした理由をお聞かせください
高野さん:コロナ禍で本公演がずっとできない状況で、作品の発表の場を求めて「劇トツ」にチャレンジしたんです。そもそも「おんたろう」は本公演でやりたかったモチーフだったので、今回は短編で作るけど「劇トツ」の結果がどうであれ、いつかは長編にしたいなと思って最初から作り始めた作品でした。なので、「劇トツ」で優勝したときに、迷わず続編を作るという選択をしました。
五島さん:「劇トツ」への参加規定で新作じゃないといけないと決められているのですが、「劇トツ」のためだけに作品を作ってそれを1回上演して終わりというのはもったいと思うんです。せっかくだからそこで作った作品をまた育てるという意味を込めて、今回は「おんたろう」の続編として長編を作ることにしました。
ーーではもともと「劇トツ」用の20分の作品というわけではないんですね
高野さん:作りたかったものを20分にして出したという感じですね。
五島さん:今回の「おんたろうズ」を見る人の中に、「劇トツ」で短編「おんたろう」を見て、前情報として知っている人がいるのは面白いと思っています。
高野さん:「おんたろう」を作っているときには、お客さんに受け入れられるか不安だったんですが、やってみると受け入れられた感じがすごくあって、もう途中からおんたろうが出てくるだけでクスクスと笑い声が聞こえてきたんです。そういう、きたきた!みたいな感じになるのがすごく嬉しくて。そのお客さんにおんたろうと再会してほしいという気持ちもありました。
ーーそこまで受け入れられるとは想像してなかった?
五島さん:そうですねそこまでは……(笑)
高野さん:おんたろうが、引かれるんじゃないかとか、手作り感満載のあれはなんだみたいと思われるんじゃないかと心配していました。
五島さん:僕らは面白いと思っても実際お客さんの前でやるまでわかんないんで。
高野さん:わかんなかったからね、不安でいっぱいだったけど。
五島さん:思い切りやるしかないなって。
ーー「おんたろうズ」の見どころをお聞かせください
高野さん:主なテーマは短編と変わらず、いかに自分のストレスと向き合って、相手を攻撃するわけでもなく自分の気持ちをきちんと提示する、ということです。ストレスフルな状況に置かれている人がちょっと勇気を出して、おんたろうと関わる中、自分の本当の声を探すというところが一番の見どころなんじゃないかなと思います。
何かつらいことがあったときなどにおんたろうを思い出してもらって、おんたろうと心の中で会話してもらえたらすごく嬉しいです。作った甲斐があるというか。
五島さん:ある意味おんたろうって自分との対話みたいなことだと思うんですよね。この作品では実際におんたろうという神様の使いが出てきますが、リアルの世界におんたろうはいないので、じゃあどうしたらいいんだろうと考えるきっかけになると嬉しいです。見終わった後に、明日からちょっと生きやすくなるとかな、ちょっと頑張ろうかとなってもらえるといいですね。
高野さん:どの作品も、見た後に少しでも前向きな気持ちになったり、今自分が抱えている問題に向き合う勇気を持ってもらいたいと願いながら作っています。
ーー「おん おん おん」と歌うテーマ曲が耳に残っています。五島さんがお作りになったんですか?
高野さん:きゃりーぱみゅぱみゅの「きゃりーANAN」って曲があるんですけど、あれの「おん」バージョンを作ってくれって(言いました)。
五島さん:そのことだけ言われてました(笑)
試しに作ってみたら、三三七拍子になりました。三三七拍子って応援で使われる拍子でもあり、おんたろうにはちょうどいいかもと思いあの曲調になりました。ひたすら「おん」を言っていて歌詞はありません(笑)そこまで深いストーリーはないんですが、耳に残るって言ってくれる方がたくさんいらっしゃるなら作曲して良かったなと。リバーウォークの大型ビジョンで「おんたろうズ」の告知が流れていて、曲も聞こえるらしく、気にしてもらいやすい曲なんだなと今は思います。
ーー今回の「おんたろうズ」、どんな方に見てもらいたいですか?
高野さん:いろんな世代に見てもらいたいので、今回初めて親子ペアチケットを用意しました。3歳から入場OKです。子どもが客席にいたら絶対面白い劇場空間になるだろうなと思ったので、ぜひご家族で見てもらって、お家に帰ってあのおんたろうはこうだったねとか話題にしてもらえたら嬉しいです。
ーーお子さんがいるとにぎやかになりそうですね
五島さん:声を出して見てもらうのは大歓迎です!
高野さん:「うわー」とか、そういう子どもの声がする劇場空間って、大人もリラックスして見られるようになるんじゃないかなぁ。リラックスすると物語がスッと入ってくる効果もあると思うので、3歳からおじいちゃんおばあちゃんまでファミリーで来てもらって、世代によって違う見え方をきっかけにいろんな会話が生まれたりするのもすごく楽しみですね。
ーー北九州の演劇ファンに一言ずつお願いします
高野さん:短編の続編ですが、もちろん初めて見る方でも十分楽しめます。今回お声掛けをした信頼のできる俳優の中には、これまで北九州の演劇シーンで活躍されてきた人もいますし、そういう俳優力みたいなものも十分楽しめる作品になっているんじゃないでしょうか。
衣装には「プロジェクト大山」というダンスカンパニーの衣装を担当されているよこしまちよこさんに入っていただき、おんたろうのビジュアルもさらにパワーアップして登場してお見せできます。一つの舞台作品として十分に楽しめる作品に仕上がっていると思いますので、ぜひお楽しみにしてください。
五島さん:PUYEYを結成した年に、西小倉にあったダンススタジオで公演したんですが、その時1回のお客さんが多分5、6人だったんですよ。それが今回、北九州芸術劇場の小劇場で3回も公演することができ、とても感慨深いです。
僕らが作る作品は、内容的にはともすれば暗くなってしまう題材だとは思うんですが、それをポップに描くことが僕らの特色で、北九州の演劇シーンの中にはあんまりないような作品だと思います。未就学の子どもがいることも含め、いつもとは違った劇場体験ができるんじゃないかなと思います。そこを楽しみにしてほしいです。
ーー最後に、将来PUYEYとして実現したいことと、個人としてやりたいことをお聞かせください
高野さん:PUYEYとしてはまたツアーをしたいと思っています。これまでお世話になってきた地域に住んでいる人たちの顔が浮かぶんですよね。コロナ禍などでなかなかそこに行くことは許されていませんでしたが、やはりまたPUYEYとして作品をその地に持っていき、これまでに出会ってきた人たちに見せたいと思いますね。
あと、自分たちの活動を広げていくためには、次の世代を育てる必要があると思っています。10代20代の若い世代に自分たちがやってきたことを継続的に還元できる場所をPUYEYとして設けたいです。
個人は何だろうな。
地元の大分県日田市で2015年まで演劇祭の企画プロデュースをやっていたんですよね。1人でやっていたので負荷が大きく、キャパオーバーでやめてしまったんですが、地元への想いは持ち続けています。だから関わってくれた人のために、日田で演劇の企画とかもやってみたいですね。
五島さん:PUYEYとしては小さくてもいいので拠点がほしいなと。福岡市内に交流する場があるといいなと思います。若い世代に限らず上の世代、または演劇じゃない界隈とも関わっていきたいですね。演劇って閉じたコミュニティになってしまいがちなので、そこがオープンになるといいなって。
個人としては、作品の演出をもっとやりたいなという気持ちがあります。
去年、高野が1人芝居をやったときに僕は演出に専念したんですが、それがすごく楽しかったんです。普段俳優をやっていることで、演出をやるときに俳優目線で言えることやできることがすごくあるなと思いました。機会があればどんどん挑戦していきたいです。
ーーありがとうございました!
PUYEY 5th season「おんたろうズ」
ほんとうの声を出すのです。
人間のネガティブエネルギーを下げるためにおんたろうが降り立った場所は…小学校?!
短編演劇バトル「劇トツ×20 分」優勝作品「おんたろう」が新作長編となって北九州芸術劇場に帰ってくる!
PUYEY(高野桂子・五島真澄)は、福岡を拠点に幅広い年代が楽しめる視覚的な表現を用いながら、人間の“やるせなさ”を軽妙に、そしてやさしく描く演劇的パフォーマンスユニット。
今回は、高野の作・演出、五島の音楽で、九州の団体が集まる北九州芸術劇場プロデュースの演劇バトル「『劇トツ×20 分』2022」での初出場にして初優勝作品「おんたろう」を新作長編として立ち上げる。
感情の神々・エモ神様によって派遣された“おんたろう”は、人間の目には見えないが世界に渦巻くネガティブエネルギー・怨念を解消するため日夜活動している。今回おんたろうたちが降り立った場所は小学校。彼らはそこで任務を果たすことができるのか……。
出演者にはPUYEY に加え、九州を中心に活躍する手嶋萌、隠塚詩織、松永檀、森川松洋(バカボンド座)が名を連ねている。
チケットは3月12 日よりPUYEY STORE にて特典付き先行販売が開始(一般発売は3月19 日)。なお入場は3 歳から可能で、PUYEY STORE では親子チケットも販売される。
2023年
4月22 日(土)19:00★
4月23 日(日)11:00/15:00★
★アフタートークゲスト
22日(土) 川崎 優(タレント、FBS「バリはやッ!ZIP!」出演中)
23日(日) 表 智之(北九州市漫画ミュージアム専門研究員)
J:COM北九州芸術劇場 小劇場
(北九州市小倉北区室町1丁目1-1-11 リバーウォーク北九州6F)
一般2,500 円(当日3,000 円)、25歳以下1,500 円(前売・当日)
中学生以下1,000 円(前売のみ)、親子チケット3,000 円(PUYEY STORE にて前売のみ)
※3 才から入場可・小学生以下は要保護者同伴
※託児サービスあり(有料・定員有・要予約)
申込・お問合せ:J:COM北九州芸術劇場 093-562-2655(10:00~18:00)
・PUYEY STORE
https://puyeystore.base.shop
・J:COM北九州芸術劇場
オンラインチケット
http://q-geki.jp
窓口
リバーウォーク北九州5階 Q-station内
(平日11:00〜18:00 土日祝10:00〜18:00)
電話 093-562-8435(12:00〜17:00土日祝を除く)
響ホール事務室(9:00〜18:00)
主催・企画制作:PUYEY
提携:J:COM北九州芸術劇場
後援:北九州市、北九州市教育委員会
助成:芸術文化振興基金、一般財団法人ふくおかフィナンシャルグループ文化芸術財団