【やっぱりおいしい北九州】 おむすび 結んでひらいて （若松区）

食を通して北九州市の良さを伝える書籍「おいしい北九州」の著者、東恭子さんが新たに開拓した飲食店を紹介する企画【やっぱりおいしい北九州】。北九州市内の“おいしい”飲食店を素敵な記事と写真で紹介します!!

家庭料理とかおふくろの味とか言われているものの中には、自分では作らないものが結構多いと思うのは私だけだろうか。焼き魚や根菜を多く使った煮物、ぬか漬けなどは、下ごしらえや片付けなど作業工程に手間がかかるのであまり自分ではやりたくないと思ってしまうのだが、実はおむすびもそんな存在だったりする。特に少数のおむすびを作るのは面倒だ。そこで出番なのがコンビニやスーパーのおにぎりで、それはそれでありがたい存在なのだが、やはり炊き立てのご飯に好みの具材を合わせた手作りのおむすびとは別物だと感じる。気軽に手作りのおむすびを買いたい。そんな時に思い出すのが、若松南海岸から一本奥に入った通りにある「おむすび　結んでひらいて」だ。

「東京には手作りのおむすび屋が多いのに、故郷の北九州にはあまりなくて」と話してくれたのは「結んでひらいて」の五味さん。東京から地元の若松に帰省した時に現在店を構える物件と出会い、一目惚れ。ここで何かをやりたいという気持ちが大きくなり、地元にもあったらいいなと思い続けていたおむすびの店を自分で始めようと決意したそうだ。

ポップでかわいいパステルカラーの外観が目を引く。内装には木の持つナチュラルな風合いがプラスされ、まるでハンドメイドの雑貨屋のようにも見える。カウンターの制作なども含め、店舗の外装・内装は五味さんが友人らの協力を得ながら自ら手掛けたという。「毎日つなぎを着て、工場で作業していました」と言う五味さんの華のある笑顔と職人のような作業の間には、かなりのギャップがあるので驚きである。

誰もが安心して食べることが出来るよう、使用する米や具材には当然こだわる。そしておむすびにとって重要なのはお米の美味しさということで、常に一番美味しい状態のお米を炊き上げるため、気温などの変化に合わせた調整を日々行っているという。

おかずも毎朝手作り。野菜は無農薬の物を中心に旬のものを農家から仕入れている。店内に並ぶのは、全て家庭ではちょっと作るのが難しいレベルのこだわりが詰まったおむすびだ。

個人的なお気に入りは、噛めば噛むほど自然な旨味が感じられ、プチプチとした食感がたまらない各種玄米のおむすびや、サンド型おむすびの明太子クリームチーズ。同じくサンド型では自家製の肉みそも大人気商品だ。今後も積極的に新作を出していく予定とのこと。

あらゆるものの価格が高騰している昨今だが、結んでひらいてのおむすびは値段据え置きで具材やお米の量がアップしているそうだ。おむすびの良さを日々追及した結果だという。購入する側としては本当にありがたい限りである。
夏場は氷から自家製という手の込んだかき氷もお目見えするとのこと。食後のデザートにも良さそうだ。
たかがおむすび、されどおむすび。存在ひとつで心も場もほっこりするのがおむすび。「沢山の方に知って欲しい。まずは一回食べていただきたい」とのことで、イベント出店も積極的に行っている。

かつてに比べて寂しくなった若松の商店街だが、昔ながらの良さを残しつつも今の時代に合わせた新しいにぎわいを作り出していきたいという五味さん。新しい世代の担い手も増えてきた商店街とも連携していきたいとのことだ。