井上純子市議と北九州移住者による北九州の魅力再発見座談会

みなさんは北九州の魅力ってなんだと思いますか?
自分がいま住んでいるところの魅力というのは、当たり前になってしまうとなかなか気が付きにくいもの。

そこで、今回は北九州市移住者の皆さんに集まっていただき、北九州の魅力についてリアルな声を聞かせていただきました。座談会の後半では北九州市議会議員の井上純子さんをゲストにお迎えし、北九州の活性化や北九州の魅力を外に伝えるための方法について意見交換を行いました。今回はその座談会の模様をお届けします。

移住者が考える北九州の魅力について

前半は移住者のみなさんに北九州に実際に暮らしてみて気づいた魅力や、もう少し頑張ってほしいところなど、それぞれ自由に語っていただきました。

伊藤優見さん(WEBライター)
八幡西区に住んでいます。長崎出身でパートナーの仕事の都合で1年前に北九州に移住しました。田舎の出身なので、北九州は都会だと思っていたのですが、山とか海とか自然が意外と近くにあるところが気に入っています。空気も綺麗ですんなりと環境に馴染めました。近所にはイオンタウンやホームセンターなど揃っていて暮らしやすいと感じます。

伊藤優見さん

井手海心さん(大学生)
北九州市立大学の3年生です。福岡市内出身で進学を機に北九州にやってきました。小倉南区で一人暮らしをしています。北九州はよく治安が悪いといわれますが、実際に住んでみると、夜も静かで落ち着いて暮らせています。ハロウィンなどのイベントも天神や博多に比べると安心して参加しやすい印象です。タピオカとか流行りのものが福岡に比べるとワンテンポ遅く入ってくるように感じるので頑張ってほしいです。

井手海心さん

北みりんさん(主婦)
高校卒業まで八幡西区に住んでいました。進学・就職を機に都内に出ていましたが、去年の春に15年ぶりに八幡西区に帰ってきました。今年の春に出産し、いまは一児の母です。北九州は子育てしやすい街だと感じています。黒崎のコムシティの「子どもの館」では子育ての相談や交流ができて助かっています。病院も充実していて、夜中に子どもがちょっと発熱した時などにも連れていける大きい病院があるのがいいなと思います。子連れで車がないので、公共の交通機関の行き先や本数などがもう少し充実してもらえるとありがたいです。

北みりんさん

猪狩英之さん(会社経営)
3年前に仕事の関係で北九州に移住しました。今は若松で農業の会社を経営しています。北九州はあらゆるものがあって大きい印象です。紹介されたところとか3年では全部は行ききれませんでした。平尾台の鍾乳洞とか行ってみたいですね。好きなのは門司港~唐戸の高速船。対岸に船で行くのは海外に行くようなわくわく感があります。北九州は掘り起こすとまだまだ色んな魅力がある街だと思います。ただ、地元の人でも知らないスポットが多くてもったいないと思うことも。今は単身赴任ではありますが、そのうち家族にも来てほしいなと思っています。

猪狩英之さん

井上市議にきいてみよう!北九州魅力再発見座談会

後半は北九州市議会議員である井上純子さんをゲストに迎え、北九州の活性化や魅力を外に伝える方法について意見交換会を行いました。

座談会後半の模様

―まずは井上市議の自己紹介をお願いします。

井上市議:北九州市議会議員の井上純子と申します。生まれも育ちも北九州です。今年1月の北九州市議会議員選挙にて八幡西区選挙区で初当選しました。市議になる前は15年半、北九州市役所職員として行政に関わっていました。3児の母でもあります。

ずっと北九州で暮らしていて、同年代の兄弟や友達が北九州から出て行ってしまうことに寂しさを感じていました。行政の現場に関わりながら、北九州市の活性化に興味を持ち始め、行政を北九州市民や若者の目線に立ったものにしたいという想いから市役所職員から議員に転身しております。今日は北九州の活性化について移住者の皆さんと意見交換できる機会を頂き大変嬉しく思っています。

北九州が移住者から選ばれる街になるには?

―ありがとうございます。早速ですが、北九州の課題として人口が減っているというものがあります。北九州が移住者に選ばれる街になるためのアイデアなど何かありますか?

北:自分が今、本当に子育てをしやすい街だなと感じているので、その辺はもっとアピールしていってもいいのかなと思います。ただ、夫が北九州市での就職活動に苦労していたので、就職先の数や種類がもう少しあればと感じました。北九州に戻りたいと思っていても、希望の就職先がなければ移住できないので、そこはもう少し力をいれてもいいのかなと思います。

―井上市議に質問です。北九州は本当に仕事が少ないのでしょうか?それとも少ない印象を受けているだけでしょうか?

井上市議:業種にもよりますね。北九州は工業系の製造業だったら選ぶものが多いといわれています。ただ、第三次産業とか、福岡市が最近伸びている新産業の選択肢は確かに少ないです。最近の若者は大卒になるほど新産業やIT関係を選ぼうとする傾向があるので、就職先の受け皿が福岡市に比べると少ない印象を受けるのかもしれません。また、同じ条件でも福岡市の方が年収が高いというのもあります。福岡市はイベントの多さや遊びにいける場所がたくさんあるという魅力もありますが、今は「働く」という点で福岡市に魅力を感じている若者が多いのではと思います。

伊藤:私も北九州に来てからの転職活動に苦労しました。事務職を探していたのですが、コロナの影響もあって、なかなか仕事が見つからなくて。クラウドソーシングサイトで何か出来る仕事がないかなと探して始めたのがライター業です。しばらくアルバイトと兼業していたのですが、ライターとしてだけでもやっていけそうになったので4月から独立しました。

座談会後半の模様

コロナによる転換を機にお母さんたちも働きやすい社会を

―在宅の仕事も視野に入れると選択肢が広がるということですね。コロナが終息すれば状況は変わってくるのでしょうか?

井上市議:首都圏や福岡市ではコロナによって完全フルリモートOKなど働き方が変わったという話はよく聞きます。一方、北九州ではそのような働き方ができる産業や業種がまだまだ少ない印象です。周りに聞いてみても、北九州のお母さん方は介護とか医療とか現場に行かなければならない仕事をされている方が多いように感じます。

サービス業や飲食業の方だと、雇い止めにあったりだとか、子どものことで休むことが増えたことをきっかけに一旦辞めることになってしまったりだとか……どちらかというとコロナで仕事をすることが厳しくなったという話をよく聞きますね。

だからこそ、在宅で仕事ができるというのは今後可能性があると思っていて。コロナによる転換を利用して子育て中の女性も働きやすい仕事に就きやすい流れができるといいですね。在宅で出来る仕事が北九州でも増えていくと、お母さん方の子育てと仕事の両立の負担は変わってくるのではないかと思います。

―コロナの影響も残っているので、その辺りはまだ見通しが立たない感じでしょうか?

井上市議:変異株や国の動きがあるので、先が見えない部分はありますが、いまはワクチンがかなり充足したので、少しずつ状況は改善するのではないかと期待しています。ただ、一旦仕事を失った方とかも多くいらっしゃいます。その点はいま行政による就職雇用支援や企業のテレワークを推進させるためのインセンティブ等に力をいれているところです。それらが来年度以降に花咲いていくんじゃないかという明るく前向きな話は聞いています。コロナでダメージは色々ありましたが、新しいものには期待したいと思っています。

座談会後半の模様

北九州で働きたいという若者を増やすには?

―猪狩さんは人を雇用する側だと思うのですが、北九州の雇用について何か思うことはありますか?  

猪狩:小倉は再開発さえすればそれなりに人が集まってくるんじゃないかと思います。小倉だけでなく郊外も少し力を入れて開発することで、その周辺の方も残ろうとするんじゃないんでしょうか。例えば、私の若松の会社では最近近くに新興住宅街が出来たことで若い世代の雇用が増えました。それから、小倉と郊外の企業や人の繋がりが増えればもっと面白い流れができると思います。

―井手さんは大学生が卒業後も北九州に残るためには何が必要だと思いますか?

井手:北九州で就活をしていて、大学生が求めているものと企業が提示してくるもののミスマッチは感じます。大学生は年収が低くてもやりがい重視の傾向があるので、企業側から年収や福利厚生などをみせられてもいまいちピンと来ないんです。福岡市内の合同説明会とかにいくと、どういったことをやっているかとか信念だとかをみせてくれる会社が多いので、その点で福岡市内での就職が魅力的っていうのはあると思います。

―なるほど。では、北九州で働きたい若者を増やすためには何が必要だと思いますか?

猪狩:福岡市は「あなたのやりたいことをやってください。資金は提供します」というように、ベンチャーを通り越して起業家支援を推進しているようなところがあるように思います。北九州にもそういう風土があれば若い人が集まってくるんじゃないかと。古いものが残っている北九州には潜在的な資産がたくさんあると思うんです。例えば、リノベーションできそうな箱と若者をマッチングしてあげて「あなたの個性で新しいことをここで始めたらどうですか」ということをしていけば、挑戦してみたい若者は結構いると思うんですよね。

座談会後半の模様

若者が住み続けたいと思える場所を今あるもので作りたい

―井上市議にお聞きします。北九州ではすでに「スタートアップの街」として広報しているようなところもありますが、実態としてはどうでしょうか?

井上市議:先日、ちょうど福岡のIT界隈の方々と話した時に「北九州がスタートアップ支援をやっているイメージがない」と言われて課題に感じていたところです。政策においてもそうですが、やっているけど知られていない、イメージがないと言われることは多々あります。発信力だったり、期待感の創出というのは全体的な課題かなと思っています。

若者が挑戦できる制度だけでなく、場所も北九州にはちゃんとあるよというのを発信していくのが大事かなと。

もちろん、体制として環境もしっかりつくっていくことも大事ですが。私も新たにインフラ投資するというよりは、今ある場所をリノベーションしたり、情報をしっかり出したりしていくことに賛成です。

どちらにしろ日本の人口は減少していくわけで、いまはそのパイの取り合いをしているわけですから。ある程度人口が減少していくことを見越しながら、それでも若者が住み続けたいなって場所を今あるもので作っていくというのが、これからの北九州には合っているのかなと思います。

市民インフルエンサーを育成しよう

ー先ほどの話にも出た北九州市の広報の課題について、井上市議はなにかお考えがありますか?

井上市議:今、テレビを見ない若者や、ネットで情報が完結する方が増えていると思うんですよね。マスコミだったり企業広告だったり、たくさんの情報があふれている中で、どの情報を信じるか取捨選択していかなければならない。そんな時代だからこそ「個人」が発信するリアルな情報が大事なのかなと思います。

例えば、「子育てしやすい」という言葉だけでなく、実際にどういった点において何が良かったのかという情報が貴重だと思っています。

北九州市民って発信こそしないけど、いまの生活には満足しているところがあると思うんですよね。その生活が当たり前になっていて、外からみると実は恵まれているということに気が付いていない人が多いのではないかと。

だからこそ、日常の良かったこと、自分の街自慢を日頃からするような「市民インフルエンサー」が増えると、それだけでも外からの印象が変わってくるのではないかと思います。

井上純子北九州市議

―「市民インフルエンサー」が増えるにはどうしたらいいとお考えでしょうか?

井上市議:やはり市民ひとりができることには限界があると思うので、行政が音頭を取っていくことが大事だと考えます。行政の強みは公共性の高さや市全体への波及できるところだと思いますので。

例えば、いま小倉城だったらアンバサダーとかありますよね。あれも市民が発信をするためのちょっとしたきっかけ作りだと思うんですよ。あとは、個々人へのSNS発信のスタートの支援やスキルアップの支援も行政で出来るとハードルが下がるのかなと。

行政が「個」の発信の良さを認めることは、北九州は行政と市民で街を盛り上げようとしているという、市のイメージアップにも繋がると私は思っています。

まとめ

今回の座談会では移住者の方々のリアルな声を通して北九州の魅力を再発見することができました。また、井上市議との意見交換会では北九州の活性化は行政に任せるだけでなく、市民ひとりひとりがインフルエンサーとしての意識を持つことが大事であるとの気づきがありました。

今後も北九州の魅力を発見したら惜しまず外に発信していくことの積み重ねが、多様な人が集まるより魅力的な北九州を作っていくのではないかと思います。

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