
「オレ!」
松平健さんの「マツケンサンバⅡ」に合わせて、大勢の観客が声を上げました。沿道を埋め尽くした人々が同じ掛け声を響かせ、黒崎の街が一つになったような瞬間でした。
9月6日(日)から10月12日(月・祝)までの37日間、北九州市八幡西区の黒崎地区で「クロサキスイッチ2026」が開催されました。そのメインイベント「黒崎うたのまちパレード」が行われたのは、10月11日(日)のことです。
昨年はディズニーパレードに約10万人が集まり、大きな話題となったクロサキスイッチ。今年は松平健さんを迎え、約5万人が沿道を埋め尽くしました。
2年続けて現地を取材した筆者にとって、今年特に印象的だったのは、観客の一体感です。「マツケンサンバⅡ」に合わせて大勢の人が声を上げ、街全体が一緒に盛り上がる光景には、昨年とはまた違った魅力がありました。
見るだけではない、参加する楽しさ
松平健さんは、ふれあい通りでのパレードに先立ち、熊手銀天街から黒崎カムズ商店街にかけて、人力車に乗って商店街を巡りました。

その後、オープントップバスに乗ってパレードに登場。華やかな衣装に身を包んだ松平さんとともに、市民サンバ隊など約200人が黒崎の街を盛り上げました。



沿道には子どもから高齢者まで幅広い世代の観客が集まり、松平さんの姿を一目見ようと、パレードの進行方向に視線を向けていました。

そして「マツケンサンバⅡ」が流れると、会場の雰囲気は一段と華やかに。
「オレ!」という掛け声に合わせ、沿道の観客も自然と声を上げます。
松平さんのパフォーマンスをただ眺めるのではなく、観客も一緒になって楽しむ。そんな時間が黒崎の街に生まれていました。
夜の黒崎にも生まれた一体感
今年、一体感を感じたのはパレードだけではありません。
10月9日(金)から12日(月・祝)までの4日間、曲里の松並木公園では「平成秋まつり」が開催されました。

初日の9日夜に訪れると、会場には提灯に囲まれた大きなやぐらが設けられ、その周囲に多くの人々が集まっていました。
会場には安室奈美恵さんやB’zなど、平成を彩ったアーティストの懐かしい楽曲が流れ、世代の異なる人たちが同じ空間で踊っていました。
音楽に合わせて体を動かす人、やぐらを囲んで楽しむ人。そこには、大規模なパレードとはまた違った、黒崎の夜のにぎわいがありました。
黒崎にあった力を、さらに引き出す

黒崎では、クロサキスイッチが始まるずっと以前から、商店街や地域の人たちが街を盛り上げる活動を続けてきました。
その代表的な催しの一つが、2016年に再始動した「黒崎96の日」です。このほかにも、黒崎カムズ商店街の「金曜マルシェ」「土曜ナイトマルシェ」、黒崎表参道新天街の「参道市」、熊手銀天街の「熊手日曜市」など、地域の人たちによるさまざまな取り組みがあります。今年のクロサキスイッチ期間中にも、こうした催しが行われました。
大規模なパレードが注目を集めますが、黒崎のにぎわいをつくろうとする活動は、それ以前から積み重ねられてきたものです。
クロサキスイッチは、そうした土台の上に加わった新たな取り組み。もともと黒崎にあった力を、さらに引き出す役割が期待されます。
パレードが終わっても、にぎわいは続く
今年、もう一つ印象に残ったのは、パレードが終わった後の黒崎の街でした。
普段の黒崎の商店街は、人通りが少なく、静かな時間帯もあります。
しかし、この日は商店街の周辺にテーブルが並び、屋外で食事や飲み物を楽しむ人たちの姿がありました。
パレードは終わっても、人々は黒崎の街で思い思いの時間を過ごしていました。
大勢の観客が沿道を埋め尽くした光景はもちろん印象的でしたが、パレードが終わった後も街に人がいる。その風景にも、黒崎の可能性を感じました。
イベントをきっかけに訪れた人が、街で食事をしたり、商店街を歩いたりする。そんな時間が生まれることも、クロサキスイッチの魅力の一つではないでしょうか。
イベントの熱気を、黒崎の日常へ

昨年のクロサキスイッチを取材した際、地域に点在するさまざまな取り組みを「線」で結ぶことの可能性について書きました。
2年目を迎えた今年、その思いは変わりません。
松平健さんのパレードで響いた「オレ!」の掛け声。平成秋まつりで世代を超えて踊る人々。そして、パレードが終わった後も、商店街で思い思いの時間を過ごす人たち。
そこには、黒崎という街が持つ力を感じさせる光景がありました。

ただし、クロサキスイッチそのものも、黒崎の日常の中ではまだ一つの「点」です。
大切なのは、イベントの開催期間だけでなく、普段の黒崎にも人が集まり、街を歩き、時間を過ごす機会が増えていくこと。そのためには、以前から地域で活動を続けてきた人たちの取り組みと、クロサキスイッチがどう結びついていくかが重要になります。
大勢の人が集まり、街が一つになった今年のクロサキスイッチ。その熱気を、黒崎の日常にどうつなげていくのか。
その答えは、これからの黒崎の街の中に見えてくるのかもしれません。


