北九州でカウンターを極める【18】~『スマイルコラット』編~

北九州市に来たばかりで知り合いがいない、などの理由で、いわゆるソロ活を余儀なくされる機会も多々あるかと思いますが、初めてのお店に一人で入るのはなかなか勇気がいるものです。

そこで、一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のカウンターのあるお店をご紹介していきたいと思います。

店主さんとおしゃべりしたり、他のお客さんと仲良くなったり。 “一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。

スマイルコラット

最初の一歩

新駅舎に生まれ変わった折尾駅の北口側、歩いて5分ほどのところに、窓も大きなドアもガラス張りで入りやすいカフェがあります。

店名にもある“コラット”は「幸運を呼ぶ猫」と言われている猫の種類に由来しているとのことで、ドア横の看板プレートや窓辺にも猫ちゃんが。そして目に飛び込んできたのは、タペストリーに掲げられた「とろける幸せ 人生で一番美味しい しかも罪悪感ゼロ ガトーショコラ」の文字。き、気になりすぎる・・・!これを見て素通りできる人なんているのでしょうか?
私はもちろん素通りなんてできません!!さっそく伺ってみました。

心と体に優しいメニュー

メニューをのぞいてみると、砂糖は白砂糖ではなくミネラル豊富なきび砂糖を使用したり、小麦粉不使用のグルテンフリーだったり、牛乳は使わず有機豆乳を使用したり…と“罪悪感なし”で食べられる体に優しいこだわりのスイーツが並びます。それだけではなく、お食事メニューも玄米を使用したりサラダは自家製のドレッシングだったりと、安心していただけるものばかり。

私は看板商品『堀川ショコラ』の抹茶バージョンをいただいたのですが、しっかりと濃厚なのにしつこくない優しい甘さで、鼻に抜ける抹茶の芳醇な香りも相まってなんとも言えない上品なお味。びっくりするくらいぺろりと食べてしまった…。でも大丈夫!なんてったって『罪悪感ゼロ』ですから。

店主の藤井さんにお話を伺うと、「おいしくて体にいいものを提供しよう」と思ったのは、ご自身の持病がきっかけ。食べるものや健康の大事さを痛感し、お客さまにも健康に良くて安心なものを出したい、と独学で勉強したんだとか。そんな藤井さんに、これまでの歩みについて伺ってみました。

スマイルコラット誕生秘話

もともとはホテルに勤めていたという藤井さん。ハードな仕事でもあり、疲れ果てている同僚たちを見かねて趣味だったお菓子を休日につくっては食べてもらっていたそう。藤井さんのお菓子を食べた同僚たちはみんな「元気になった」「このあとも頑張れる」と言ってくれ、徐々に「人を元気にするような空間や場所をつくりたいな」と思い描くようになりました。その後、職を転々としながらそこでも毎週お菓子を持っていって反応を見つつ研究を続け、そして準備が整った頃に、藤井さんは折尾の堀川沿いに貸店舗を見つけます。

堀川沿いは藤井さんにとっては、高校時代の通学路だった思い出の場所。今は当時ほど周辺に何もなく、「気軽に立ち寄れる場所があったらいいのに」と思い、貸店舗を見つけてすぐに電話したところ、スムーズに入居が決まりました。

しかし、実はそのときには折尾駅周辺の再開発により堀川沿いの飲食店街は取り壊しがすでに決まっていました。そのとき藤井さんは、「立ち退きしないといけない場所で、わざわざお店を持つって、逆に面白い」と考えたんだとか。そして、学生の頃よく通ったお店というのは一生思い出に残るものなので、そういう“思い出の場所になったらいいな”という気持ちもあったんだそう。

「誰かの思い出になるような場所をつくる」。それは、藤井さんにとってはその土地に対する恩返しでもありました。

地元・折尾への恩返し

堀川沿いは両サイドに飲み屋を中心とした飲食店がひしめき合い、昭和の雰囲気漂う風情のある通りでした。そんな堀川沿いを知らない人も多く、「もうなくなってしまうけど、駅のすぐ近くにこんな面白い場所があるんだよ、ということをスマイルコラットをきっかけに知ってほしい」という思いもあったそう。

立ち退き後、2022年に今の場所に移転オープンしてからも、その思いは変わりません。看板商品『堀川ショコラ』も、“堀川”の名を残したい、折尾の銘菓として全国に広げたい、折尾を盛り上げる起爆剤になりたい!そんな強い思いを胸に名付けられました。『堀川ショコラ』はふるさと納税の返礼品や、井筒屋のお中元やお歳暮にもラインナップされ、じわじわとファンを増やし続けています。

そしてメニューにある、『クリぜん』。折尾の出身の方なら、「懐かしい!」と思うかもしれません。というのもこちらのメニュー、2009年まで折尾にあったという『橋本食堂』というお店の名物メニュー・クリームぜんざいを、少し形を変えて受け継いだものだそう。長年学生たちに愛されていたという『橋本食堂』はまさに藤井さんにとっての思い出の場所。そんなお店の名物メニューを引き継ぐことで、地元の人の思い出ごと、引き継いだ藤井さん。健康にいいものでお客さまを元気にするだけでなく、メニューを通して地元にも元気を与えています。

オーナーの人柄が繋ぐもの

藤井さんにお話を伺っていると、とにかく「誰かの役に立ちたい!!」という思いでカフェをしていることが伝わります。
お店を出すきっかけになったお菓子づくりも、つくると喜んでもらえるのが嬉しかったから。職場でお菓子を配っていたときも、みんなを癒すため、お休みの週末につくって月曜日に持っていくことをひたすらやっていたそう。そして「皆様に笑顔と幸せをお届けしたい」という思いから名付けられた店名もしかり、藤井さんの根底にあるのは「ただただみんなを笑顔にしたい、喜んでほしい、癒したい、もうそれだけ」なんです。

藤井さんのその人柄がよくわかるエピソードが、スマイルコラットのメニュー。最初は人気メニューでもある白いカレーだけだったそうですが、お客さまに「喫茶店ならナポリタンもメニューにほしい」って言われ、「それならどこにでもあるナポリタンじゃなくてめちゃくちゃ美味しいナポリタンを作ってやろう!」と『懐かしのナポリタン』が誕生。思惑通り、「ここのナポリタンが一番好き」という方も多いそうです。

さらに、お客さまに「このカレーをちょっと麺でやってみてよ」と言われその場ですぐにあれやこれやと改良しつつ試作品をつくり、これだ!という味をメニューに加えたり。さらにピザトーストも「軽食も食べたい人いるんじゃない?」というお客さまの声がきっかけ。

「やるからにはもうめちゃくちゃ美味しいやつをつくる!」という藤井さんの負けず嫌い(?)なところも含め、なんだか微笑ましいエピソードです。

最近では、子育て応援プロジェクトとして、なんとお弁当を無償で配布するという企画も!藤井さんの「みんなを幸せにしたい」という気持ちは留まるところを知りません。

お客さんのためにというのももちろんあるけれど、それ以前に、スタッフのためにお店はある、みんなの夢をここで叶えようという思いもあるそうで、スタッフの夢を叶えるために、自分が動く!ということも。お店の思いもきちんとスタッフさんに伝え、みんなでここで成長しよう!という気持ちが共有されているので、「うちはスタッフが本当にみんな素晴らしいんです!」と藤井さん。お弁当無償配布も、「役に立つことをやりたい。こういうのはどう?」とスタッフに相談すると、すぐに「ぜひやりたい!」と賛同してくれたんだとか。藤井さんの思いはスタッフさんにも伝染しているようです。

名は体を表す

おいしいものを食べると心が満たされる、心が満たされると人に優しくなる、それが広がると世界が優しくなる…。そんな気持ちで、美味しいものや居心地のいいものを提供しているという藤井さん。

地元の人やスタッフさん、そしてお客さまにそんな思いが循環し、その名の通り、スマイルコラットが笑顔や幸福を運んでくれる一つの糸口になるのかもしれません。ぜひ足を運んでみてください。

※一部お写真はスマイルコラットさんにご提供いただきました

詳細情報

北九州市八幡西区折尾3丁目1-22

営業時間/12:00~18:00

定休日/水曜日

※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください

さいごに
もちろんみんなでわいわいするのも楽しいですが、ひとりの楽しみ方は無限大!特に北九州市は人懐っこい人が多いので、店主さんもお客さんも気軽に話しかけてくれてすぐに打ち解けられる、ソロ活にはもってこいの地域です。これからもひとりで行ってもさびしくない、親しみやすいお店を紹介していきますので、お楽しみに!

協力:門司港ゲストハウスポルト

北九州でカウンターを極める

やっぱりおいしい北九州