「日本の劇」戯曲賞2022最優秀賞を受賞した舞台作品『他人』が、11月22日(日)・23日(月・祝)、J:COM北九州芸術劇場 小劇場(北九州市小倉北区)で上演されます。
作は竹田モモコさん、演出は南河内万歳一座の内藤裕敬さん。原日出子さん、畑中咲菜さん、平松美紅さんの3人が出演します。2023年に初演された作品で、今回は全国8ヶ所を巡る再演ツアーとなります。
恋人の母、元恋人、そして「わたし」 3人の奇妙な共同生活
主人公の「わたし」は、デザイナーとして働きながら恋人と小さなアパートで暮らしています。
しかし、恋人が入院したことをきっかけに生活が一変。通院のため恋人の母・はつ江がアパートに滞在することになり、さらに偶然その場に居合わせた元恋人・結海も出入りするようになります。
親子でも友人でもない3人は、やがてそれぞれの「秘密」を語り始めます。
9月25日に北九州芸術劇場で行われた記者会見で、内藤さんはこの戯曲について、「日本の劇」戯曲賞2022の審査員の間で会話の巧みさと人物描写が高く評価されたと振り返りました。
審査は作者名を伏せて行われ、『他人』は最終審査で満場一致で最優秀賞に選ばれました。その後、審査員として参加していた内藤さんが演出を担当することになり、竹田さんと話をする中で台本をブラッシュアップしたといいます。
内藤さんは、修正を提案すると竹田さんが自身の表現として書き直し、受賞時よりさらに完成度の高い台本になったと話しました。
高校の同級生と、大学の教え子

母親役を考えたとき、内藤さんの頭にすぐ浮かんだのが原日出子さんでした。2人は高校の同級生です。高校2年の文化祭で、演劇好きのクラスメートが唐十郎の『少女仮面』を上演し、その主役を務めたのが原さんだったといいます。テントを立てる資金はなく、会場は柔道場でした。内藤さんは「見事でしたよ」と振り返り、高校生でも『少女仮面』ができるのかと驚いたことを覚えているそうです。
原さんはデビュー後まもなく朝ドラの主演を務めました。それでも舞台が好きで、テレビで売れてからも舞台に立ち続けてきたといいます。内藤さんにとっては、テレビの女優というより舞台女優という印象のほうが強いそうです。いつか一緒に芝居をしようと約束していたわけではありませんでしたが、今回声をかけると二つ返事で引き受けてくれたといいます。
若い2人の役を演じる畑中咲菜さんと平松美紅さんは、内藤さんが演劇を教える大学の教え子です。内藤さんは台本を読んでいる段階から「この2人だ」と感じていたといいます。卒業後もそれぞれ東京や大阪で演劇を続けてきた2人に声をかけ、最初に思い描いた理想のキャスティングが実現したと話しました。
音楽を使わず、3人の会話だけでつくる舞台

『他人』では、音楽を一切使いません。
稽古を進める中で、台詞だけで場面の空気や緊張感を成立させられると判断したためです。内藤さんは、音楽を使わないことで俳優にとっては「逃げ場」が少なくなると説明。最終的には俳優たちも『なくてよかった』と話していたといいます。
作品の根底にあるのは、家族や他人との関係です。
内藤さんは、家族には言えないことがある一方、言ってもらえない側の家族は心配を抱えながらも「家族だからこそ聞かない」ことがあると指摘します。そうして生まれる「空白」はどの家族にもあり、そのあり方は家族ごとに違うといいます。この作品では、その空白が重要な役割を果たしていると話しました。
一方で、社会で生きていく以上、私たちは圧倒的に多くの「他人」と関わります。
良い出会いも悪い出会いもある中で、全く方向性の異なる3人が偶然出会ったことで生まれる会話について、内藤さんは「私たちの身にも起きる」身近な出来事が劇的につづられている作品だと語っています。
作者の竹田さんは高知県土佐清水市の出身で、地元の方言・幡多弁を使って作品を書いています。本作でも、田舎から出てきた恋人の母・はつ江の台詞に方言が使われています。内藤さんは、都市を舞台にした芝居でありながら、方言も含めて日本全国どこでも起こりうる人間関係を描いた作品だと話しました。
「小劇場は演劇の第一次産業」

記者会見で内藤さんが語ったのが、小劇場という場所への思いです。
1980年に南河内万歳一座を旗揚げした内藤さんは、小劇場から多くの劇作家、演出家、俳優が育ってきた歴史を振り返り、小劇場を「演劇の第一次産業」と表現しました。
内藤さんによると、近年は商業的な取り組みに重心が置かれる傾向があると感じているといいます。
そうした環境では、これから伸びていく若い俳優や、実験的な作品が表に出る機会が減ってしまうのではないか。内藤さんはそんな問題意識を示し、「作品が素晴らしいから、お客さんが入る」という環境も必要だと話しました。
『他人』についても、大きな劇場で見せるタイプの作品ではなく、小さな空間だからこそ濃密に成立する芝居だといいます。
北九州芸術劇場の小劇場についても、客席数や空間の使い方を含め、「人がやっているということがしっかり伝わる空間」と評価しました。
内藤裕敬さんと北九州
内藤さんと北九州芸術劇場との関係は長く、劇場の開館前から地域の演劇関係者とのワークショップなどに関わってきました。
2012年からは10年間にわたり「Re:北九州の記憶」の構成・演出を担当。地域で暮らしてきた人へのインタビューをもとに作品をつくりながら、若手の劇作家や演劇人の育成にも携わってきました。
記者会見では、「Re:北九州の記憶」で経験した人たちが、そのノウハウを自分たちの活動へ持ち帰り、現在も活動を続けていることを喜んでいました。
自身の作品で北九州を訪れるのは数年ぶりになるといい、今回について「僕の台本ではないですけど、とても面白い作品」と話し、北九州の観客に再び作品を届けたい思いを語りました。
舞台『他人』公演概要
日時:2026年11月22日(日)15:00開演、11月23日(月・祝)13:00開演
※開場は開演の30分前
会場:J:COM北九州芸術劇場 小劇場
作:竹田モモコ
演出:内藤裕敬
出演:原日出子、畑中咲菜、平松美紅
料金(全席自由・日時指定):一般4,000円、U25 2,000円(25歳以下、要身分証提示)、ティーンズ1,000円(13~19歳、要身分証提示、枚数限定)
※未就学児入場不可
一般発売:2026年10月11日(日)10:00~
問い合わせ:J:COM北九州芸術劇場 TEL 093-562-2655(10:00~18:00)
J:COM北九州芸術劇場『他人』公演ページ:https://q-geki.jp/events/2026/tanin/


