食を通して北九州市の良さを伝える書籍「おいしい北九州」の著者、東 恭子さんが新たに開拓した飲食店を紹介する企画【やっぱりおいしい北九州】。北九州市内の“おいしい”飲食店を素敵な記事と写真で紹介します!!
コロナによる緊急事態宣言発令中のある日。通りに面した一軒のタイ料理店の前に並ぶ弁当が目に入った。
タイ料理の弁当は珍しい。迷わず購入して帰宅。早速食べたガパオライスとスイートチリソースが添えられたからあげは想像した以上に本格的な味だ。ハーブや香辛料の効かせ方は「なんとなく、アジアンテイスト」といった類のものではない。店の外観からここは間違いなく本場のタイ料理店だろうと予想は出来ていたのだが、これを600円程の弁当として食べていいのだろうか。いい意味で期待を裏切られた私は、その後もよく弁当を購入しては、状況をみていつか店内で食事しようと思っていた。
その店の名は「NABUN(ナーブン)」。モノレール旦過駅のそば、紺屋町バス停前にあるタイ国旗が目印の店だ。
ナーブンが提供するのはタイ料理の中でもイーサン料理と呼ばれるタイ東北部の料理がメイン。調理を担当するのはバンコクのホテルレストランで経験を積んだ二人のタイ人シェフだ。曜日を問わず提供しているランチセットは、ガパオライスやパッタイといった日本でもおなじみのタイ料理をお得に食べることができ、人気となっている。
会社員時代に職場の旅行で様々な国を訪れた中で、殊更にその魅力にはまったのがタイだったというナーブンのオーナー。そのタイへの熱量は、自らも現地で技術を学び、北九州にタイ古式マッサージの店をオープンさせたほど。そこでお客から受けた「小倉で美味しいタイ料理が食べたい。いい店はないだろか」という相談がきっかけで、次はタイ料理店を開くことを決意した。
在日タイ大使館を通して「タイ・セレクト認定」を受けたタイ料理店として営業するためには、厳しい条件をクリアすることが必要。様々な困難に直面しながらも一年以上の時間をかけ、2019年9月にナーブンをオープンさせた。
順調に歩みを進めていた店だったが、開店から半年が経つ頃コロナ禍に見舞われる。行動制限のある時期には、店を開けていても店内に客がいないということもあったという。私が利用していた弁当の販売も、
「全く儲けにならないどころか赤字になるような状態でしたが、弁当を出し続けることが店のPRになれば」
という思いで続けていたそうだ。
外食業全体にとって厳しい状況が続く中、同じくコロナ禍で苦境にあった旅行代理店がリモートでのタイツアーを企画。ナーブンにコラボレーションの声がかかり、客に提供する弁当を担当。リモートツアーでも出来る限り現地の雰囲気を味わってもらおうと、趣向を凝らして作り上げたタイ料理弁当は好評を博した。
やれることを地道に続ける中、口コミやSNSで評判が広がり、現在は常連客も増え、タイからの留学生やタイ在住経験者も多く店を訪れている。
「現地の人たちが気軽に足を運ぶ、日本でいう定食屋や食堂のような店」をコンセプトにするナーブン。どのメニューもリーズナブルで、さらにメニューにはない通な現地料理のリクエストも受けている。激辛好みの人や、酸味をもっと強くしたいという人など、それぞれの好みで味を調節できるようテーブルには香辛料と調味料のかわいい入れ物が並ぶ。
現在店で使う現地の食材の多くは北九州市内で調達するのが難しいため、今後は自ら仕入れ、更に販売できるようにしたいというオーナー。食だけでなく小物や雑貨なども含め、タイの文化をもっと北九州に広げていくため、各方面と協力し、まずはタイフェスティバル(駐日タイ王国大使館主催)の北九州での開催を実現したいとのこと。東京をはじめ、福岡など全国で人気のタイ文化を紹介するイベントは、北九州で開催となると注目を集めるはずだ。
日本にはタイ好きが多いといわれるが、北九州ではタイ文化に降れる機会がなかなかない。そんな現状がこの先変わると思うととても楽しみだ。
主なメニュー(価格は税込み)
ランチセット(各種) 980円
ナーブンセット(ランチ限定) 1210円
※その他メニューはホームページ参照
※ランチ以外のメニューはテイクアウト可能
営業時間
11:00~15:00、17:00~23:00
定休日
月曜日(祝日の場合は火曜)
アクセス
住所:北九州市小倉北区紺屋町2-17坂井ビル1F
TEL:050-3636-2381
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