2023年9月20日(水)から5日間、北九州市民球場をメイン会場に「第48回 社会人野球日本選手権大会 九州地区最終予選」が開催されます。
日本選手権は、その年の社会人ナンバーワンのチームを決める大会で、今回で48回目の開催となります。全国の予選を勝ち上がった32チームが。11月に京セラドーム大阪とほっともっとフィールド神戸(予定)に集結し、日本一の座を争います。
第48回 社会人野球日本選手権大会 九州地区最終予選 特設ページ
社会人野球とは、その名の通り「社会人が行う野球」のことで、企業や団体等と雇用契約を結んだ従業員で構成される「企業チーム」と自発的に集まったメンバーで構成される「クラブチーム」があります。プロ野球との大きな違いとして、選手が勝利給など競技者としての報酬を得ていないことが挙げられます。
この度北九州市で行われる大会は、日本選手権に九州地区から出場する2チームを決めるために行われます。北九州市からは、JR九州硬式野球部が出場します。
JR九州硬式野球部は、1918年に創部。2009年の第36回社会人野球日本選手権大会で優勝、2010年の第81回都市対抗野球大会で準優勝するなど、九州の社会人チームでは最も実績のあるチームです。JR九州の本社は福岡市ですが、野球部の本拠地は北九州市で、門司区のJR九州社員研修センター内のグラウンドで活動しています。
今回は、JR九州硬式野球部に所属する犬塚 慶(いぬづか けい)選手にインタビュー。犬塚選手は小学校から大学、社会人までずっと北九州市内のチームでプレーしている選手です。ポジションは外野手。俊足が魅力のスイッチヒッターです。
ーー犬塚選手はJR九州でどのような仕事をされているんでしょうか?
平日の午前中に、黒崎駅で改札業務に就いています。黒崎駅での勤務は今年が1年目で、それまでは折尾駅で、その前は小倉駅で勤務していました。JR九州の選手は近場の駅で働いていることが多いのですが、真っ黒に日焼けしているのですぐに野球部の選手だと分かると思います。
昼からはグラウンド(門司区)に戻って練習しています。平日は朝8時から勤務、午後から練習というサイクルです。会社あっての野球部ですので、仕事に出て会社の人たちに顔を知ってもらうことが大切だと考え、仕事との両立を最も大切にしています。
ーー社会人野球の面白さはどのようなどころにありますか?
JR九州でいうと、グラウンドで泥まみれになってる選手が普段は駅で働いてるというギャップが面白いのではないでしょうか。「あの選手も普段は駅で仕事をしているんだな」と思っていただけると嬉しいです。
ーー社会人野球で一番大変なのはどのあたりですか?
「負けたら終わり」のトーナメントでの試合が多いので、負けられない試合が続くところです。
ーー犬塚選手が野球を始めたきっかけを教えてください。
小学3年生のときに軟式野球チーム・清水スカイヤーズ(小倉北区)の友達に誘われたのがきっかけです。それまでは、みんなグラウンドで楽しそうに野球しているなと思いながら見ていました(笑)
ーー実際に野球をやってみていかがでしたか?
いやもう難しかったです。バット持ったりグローブ持ったりといろいろあって、なんだこりゃと思ったんですけど、それが逆に面白く感じました。やっていくうちにどんどん野球にハマっていきましたね。
ーー最初に守ったポジションはどこですか?
最初はピッチャーとショートでした。中学校(篠崎中学校野球部)ではショートで、北九州市立高校に進んでからは足の速さを生かして外野手に転向しました。
ーー高校時代の戦績はいかがでしたか?
最後の夏の大会は、3回戦で北筑高校と対戦しました。現在横浜DeNAベイスターズに所属している今永投手と対戦してヒットを2本打ったんですが、0-6で敗戦しました。
ーーその後は九州共立大学に進学します。
野球を始めてからずっと大学からプロを目指すという目標を立てていました。高校までと違って大学は部員が多く、同級生だけで60人くらいいたことにまず驚きました。1年生の頃は俊足を買われて代走要員でのベンチ入りでしたが、3年生からはレギュラーとして試合に出場するようになりました。
ーー卒業後にJR九州に入社しました。社会人野球に対しての戸惑いなどはありましたか?
レベルはもちろん高いんですけど、それよりも年齢層の幅広さに戸惑いました。それまでは一番離れていても3歳差でしたが、社会人では、35~36歳から18歳までの幅広い年齢の選手が一緒になって、しかもグラウンドでは対等にプレーしているというところにギャップを感じました。でも、年齢が一回り上の人と一緒に泥んこになって野球をやるのは楽しかったです。
ーー社会人野球といえば、応援もひとつの魅力です
都市対抗野球大会(注1)に出たときに、会社と地域の皆さんが一体となっての応援は本当にすごいと思いました。JR九州は「北九州市代表」で出場する(注2)ので、小倉祇園太鼓などのパフォーマンスもあり、とても盛り上がります。
(注1)日本で一番歴史の長い社会人野球の全国大会
(注2)都市対抗野球大会には、チームが本拠を置く市町村の代表として出場する(例:JR九州=北九州市代表、西部ガス=福岡市代表)
ーー犬塚選手が試合前に集中力を高めるために毎回やっていることはありますか?
試合の1時間前ぐらいにブラックコーヒーを飲むようにしています。試合前にブラックコーヒーを飲んでいい結果が出たことがあり、それ以来ずっと続けています。
ーーちなみにチーム内で変わったルーティンを行っている選手はいますか?
チーム最年長の田中允信さんは、試合直前までヒップホップをずっと聴いています。一番年上なんですが一番イケイケの音楽を聴いていますね(笑)
ーー今大会への意気込みをお願いします。
地元の北九州開催ということで、応援に来てくださる方も普段よりも多くなると思います。来ていただいた人に「社会人野球って面白いな」「JR九州の野球を見て感動したな」って思えるようなプレーを心がけます。その後に勝利という結果がついてくるよう、目の前の1試合1試合に全力で臨みたいと思います。北九州市民球場は普段オープン戦などで使わせていただいているので、地元の利を生かして戦いたいですね。
ーー個人的な目標などあれば教えてください。
30歳になり、野球人生ももう後半の方に入ってきているとは思いますが、30歳になってもバリバリやってるんだっていうところをお客様に見ていただきたいです。人一倍元気を出して、「あそこに犬塚がいるな」ってわかるようなプレーをしたいと思っています。
あとは、全国の舞台を経験したことない若い選手たちを引っ張って、その経験をさせてあげられるといいですね。
ーーありがとうございました。日本選手権出場を期待しています!
JR九州は2日目(9月21日)の2回戦からの出場です。KMGホールディングスと沖データコンピュータ教育学院の勝者と春日公園野球場で対戦します。勝てば翌日13時(予定)から北九州市民球場での準決勝に臨みます。準決勝、決勝と連勝すれば九州地区第1代表となります。準決勝または決勝で敗れた場合は九州地区第2代表決定戦に回ります。
キッズフェスタ同時開催
9月23日(土・祝)、24日(日)の2日間は北九州市民球場で「社会人野球+キッズフェスタ」が開催されます。豪華景品が当たる大抽選会やストラックアウトなどが楽しめる野球体験、各チームの仕事着を着ての記念撮影など、内容充実のイベントです。時間は両日とも9時~15時。一部を除き入場・体験料無料ですので、お気軽にご参加ください!
第48回 社会人野球日本選手権大会 九州地区最終予選 特設ページ
犬塚選手は清水小学校~篠崎中学校と、筆者と同じ経歴を持っているので親近感を覚えました。記事内には書けませんでしたが、外野守備の話などを詳しく教えていただき、非常に実のあるインタビューとなりました。
来シーズンからは社会人野球の取材も少し増やせれば、と考えています。
かつて北九州市では「製門戦」と呼ばれる八幡製鐵所と門司鉄道局による定期戦が行われており、社会人野球は高い人気を誇りました。
現在、北九州市に拠点を置いている日本野球連盟所属の社会人野球チームはJR九州(企業チーム)、北九州市民硬式野球クラブ、ARC九州、GENESIS FUKUOKA(以上クラブチーム)の4チームです。ARC九州、GENESIS FUKUOKAの2チームは2023年設立と歴史は新しく、今後の活動に注目です。