スポンサー看板が結んだ縁で2年連続登板 ギラヴァンツ北九州・渡邉颯太「次はストライクを」

世の中には不思議な縁というものがある。

しかし「物を壊したことがきっかけで生まれた縁」というものはどのくらいあるものだろうか。

2024年3月6日。ミクニワールドスタジアム北九州で行われた、ルヴァンカップ1stラウンド第1回戦での大分トリニータとの一戦で事件は起こった。

途中出場の(当時)ルーキー、渡邉颯太選手が113分にゴールを決めた後、ホームサポーターの前へ駆け寄った渡邉選手のもとに、チームメイトたちが集まった。勢い余って数人の選手が倒れ込み、そのはずみで目の前のスポンサー看板が折れ曲がってしまった。

スポンサー看板が折れ曲がった瞬間

折れ曲がったスポンサー看板に描かれていたのは「takagi」のロゴ。渡邉選手が壊してしまったのは、小倉南区に本社を置く浄水器メーカー「株式会社タカギ」のスポンサー看板だった。

すぐにお詫びに行った渡邉選手と増本浩平監督。

しかし、縁はこれだけでは終わらなかった。

同年4月、株式会社タカギが運営する女子ソフトボールチーム「タカギ北九州ウォーターウェーブ」のホーム開幕戦で、渡邉選手がファーストピッチセレモニーに参加することとなった。

あれから約1年半。ギラヴァンツ北九州から「渡邉選手がタカギ北九州ウォーターウェーブの試合でファーストピッチセレモニーに登場」と発表された。まさかの2回目である。本人も驚いたことだろう。

10月13日に北九州市民球場で行われた、タカギ北九州ウォーターウェーブ対東海理化チェリーブロッサムズの試合前に渡邉選手とギランが登場した。球場には渡邉選手のタオルを掲げたギラヴァンツ北九州のサポーターも多数来場。市内スポーツチーム同士のコラボらしい光景だった。

ファーストピッチセレモニーを務める渡邉颯太選手
ギランもキレッキレ。卍ポーズ!?

今年は惜しくも投球がボールとなってしまった渡邉選手。セレモニー後に話をうかがった。


ーーお疲れ様でした。去年と比べていかがでしたか?

渡邉選手:去年はストライクだったんですが、今年はボテボテのボールになってしまいました。悔しいですね。

ーーサッカーの試合とはまた違った緊張だったのでは?

渡邉選手:サッカーのときは全然緊張しませんし、今日もそんなには緊張しなかったのですが、やはり慣れない環境だったので、いつも通りの気持ちではいられなかったかもしれません。

ファーストピッチセレモニーを終えた渡邉颯太選手

ーーソフトボールの試合を見てのご感想は?

渡邉選手:迫力が本当にすごいですね。先ほどホームランを見ることができたので、とても満足しています。

ーーまた来年も声がかかるのでは?

渡邉選手:去年、看板を折り曲げてしまったことがきっかけでこういう素敵なご縁をいただいて、まさか今年もお声がけいただけるとは思っていませんでした。また来年も機会があれば、次はストライクを投げられるように頑張ります。

ーーサッカーの話を聞かせてください。残りがあと7試合になりました。

渡邉選手:残りの全試合に勝たなければならないような状況です。僕は先週の鹿児島戦はベンチで見ていたんですが、あんなに素晴らしいスタジアムがあり、あれほど熱いサポーターの方々に支えられて、僕たちは本来J3にいるべきチームではないと感じました。

昇格するためにもやはり勝ち続けるというところ、そして僕はフォワードなので、一番目に見える結果である得点でチームに貢献して、プレーオフでも自分がチームを勝たせて、J2に昇格させたいという思いは強いですね。

ーー先日の鹿児島戦、渡邉選手の目にはどう映りましたか?

渡邉選手:試合結果は引き分けに終わりましたが、僕自身もわくわくする試合でしたし、見に来ていたサポーターの方々も、とても楽しい試合だったと感じてくださったと思います。

結果が全ての世界ですけどやはりサポーターの皆さんにわくわくや楽しさを感じていただける試合をするためには、先日のような攻撃的なサッカーを続ける必要があると思います。

ーー鹿児島のサポーターもすごかったですね。

渡邉選手:ゴール裏にあれだけ多くのサポーターの方が集まっているのが、上のカテゴリーに行けば日常になると思いました。選手として、あのような雰囲気の中でプレーできるのは本当に幸せなことだと感じます。ああいう試合が日常になるためには、昇格が一番の近道だと思います。

両チームの選手のサインボールを手にした渡邉颯太選手

北九州市内に本拠を置くトップスポーツチーム同士の交流は、実のところそれほど多くない。

手前味噌になるが、直近で4チーム揃ったのは2025年春の小倉城桜まつりで行われたトークイベントくらいである。

J3ギラヴァンツなど北九州市4チームの選手が小倉城前でトーク:https://www.nishinippon.co.jp/item/1336244/

それだけに、看板を壊したという偶然から始まったギラヴァンツ北九州とタカギ北九州ウォーターウェーブの縁は貴重だ。この関係がずっと続いてほしいし、他のチームもこの輪に加われば、市内のスポーツシーンはさらに盛り上がりを見せるだろう。