北九州GX推進コンソーシアム設立総会を実施 「GX先進都市北九州」の実現へ

2023年12月12日(火)に、北九州国際会議場で「北九州GX推進コンソーシアム 設立総会」が行われました。

総会では、コンソーシアムの会長を務める武内和久北九州市長、副会長の北九州商工会議所津田純嗣会頭、公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)松永守央理事長の挨拶、および北九州市産業経済局池永紳也局長からの設立趣旨と取り組み内容の説明などを行いました。

会場には300人を超える参加者が集まり、GXならびに本コンソーシアムへの関心の高さがうかがえました。

北九州GX推進コンソーシアムを設立

2050年 カーボンニュートラル に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の動きは世界的に加速しており、わが国でも今後10年間で150兆円を超える官民GX投資が見込まれています。カーボンニュートラルを成長の機会と捉え、官民GX投資をこの街に呼び込み、北九州の産学官金でGXをより一層推進していくために発足したのが「北九州GX推進コンソーシアム」です。

このコンソーシアムでは、北九州学術研究都市での研究開発など北九州のポテンシャルを活かした産業集積や、地域企業の成長、 新産業を創出することで 「稼げるまち」 北九州市の実現を目指します。

具体的には、GX投資の呼び込みに向けた産学官金による議論・集いの場の創出などを目的とした「先端テーマ別研究部会設置」、専門家による伴走支援を目的とした「ワンストップ窓口の設置」、経営者向けの脱酸素経営やGXのマインドセットを学ぶ「GXビジネススクール開講」、自社のCO2把握を目的とした「CO2可視化ツールの提供」などといったきめ細かな支援を予定しています。

GXとは:
GXとはグリーントランスフォーメーションの略。簡単に言うと、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のことです。

現在、人間が生きるため、豊かな生活を送るためのさまざまな活動のエネルギー源は、石油や石炭などの化石燃料が中心です。化石燃料は、消費するときに二酸化炭素をたくさん排出しますが、地球温暖化の最大の原因となっているのが、この二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスです。

化石燃料に頼らず、太陽光や水素など自然環境に負荷の少ないエネルギーの活用を進めることで二酸化炭素の排出量を減らそう、また、そうした活動を経済成長の機会にするために世の中全体を変革していこうという取り組みのことを「GX」と言っています。(経済産業省 METI Journal ONLINE「知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?」より引用)

北九州GX推進コンソーシアム会長・武内和久北九州市長が設立を宣言

北九州GX推進コンソーシアム 設立総会会場の様子

はじめに、本コンソーシアムの会長を務める武内和久北九州市長が「北九州GX推進コンソーシアム」の創設を宣言。「全国にも例を見ないこのコンソーシアムを通じて、日本の官民GX投資150兆円のうち、北九州市に5兆円から10兆円の投資を呼び込むことを目指したい」と決意を述べました。

続けて、GXを経済成長につなげるためにCO2排出量可視化ツールの市内企業最大2,000社への無償提供と、経営層向けのGXスクールの開校を発表。「GXを追い風として、北九州市が持つポテンシャルを最大限発揮する社会実装、産業集積を始め、地域企業の成長や新産業の創出によって、北九州市を世界に貢献する『稼げるまち』へと成長させていきたい」と力を込めました。

武内和久北九州市長が「北九州GX推進コンソーシアム」の創設を宣言

続いて、副会長を務める北九州商工会議所の津田純嗣会頭が挨拶。「北九州市は既に高い技術力を誇る企業、最先端の研究開発に取り組んでいる学術研究都市、そして環境先進都市というブランドなど、GX推進に必要な条件が揃っており、これこそGXといえる循環型社会の形ができあがりつつある。GX推進コンソーシアムは、ビジネススクール開催や相談窓口設置といった支援も予定しており、企業の参加を広く募りたい」と述べ、GX先進都市北九州の実現を目指そうと呼びかけました。

副会長を務める北九州商工会議所・津田純嗣会頭が挨拶

同じく副会長を務める、公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の松永守央理事長は「我々は今年に入って、国のGXの動きをにらみながら、北九州でのGXの活動を活発にしたいとさまざまな準備をしてきた。FAISは、市内の企業が持つ技術力をGXと組み合わせることで世の中にないものを作ることへの支援を行う組織として、このGX推進コンソーシアムで活動していきたい」と意気込みを述べました。

副会長を務める公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)・松永守央理事長が挨拶

北九州市の「産学官金」がコンソーシアムを全面支援

続いて、北九州市内の「産学官金」各界を代表する来賓の皆様からの挨拶が行われました。

公立大学法人北九州市立大学学長 柳井雅人様

「北九州市は『鉄冷え』以来、GXをずっと行ってきたと評価している。『“オール北九州”のコンソーシアム』という形で、産学官金が連携して実施する意義深い事業に対し、北九州市立大学も、保有する知的資源、人的資源を惜しみなく提供する」

公立大学法人北九州市立大学学長 柳井雅人様

国立大学法人九州工業大学副学長 中藤良久様

「これまでも本学ではGX関係の研究を進めてきた。大学として研究開発を推進するのは当然のこと、さらに社会実装を目指して取り組みたいと考えている。今回のコンソーシアム設立にあたって、産学官金が連携して強力に進めたい」

国立大学法人九州工業大学副学長 中藤良久様

学校法人早稲田大学教務主任 木村晋二様

「早稲田大学大学院情報生産システム研究科は30名の教授が教育研究に携わっている。GXの教育に関して我々が持つ実績をベースにしながら、今回のコンソーシアムに協力していきたい」

学校法人早稲田大学教務主任 木村晋二様

一般社団法人北九州銀行協会会長 野中宏之様

「GXに関して、銀行界では本年2月16日にカーボンニュートラルの実現に向けた『全銀協イニシアティブ2023』を公表した。その中では銀行界としてのミッションとして、社会経済全体の2050年カーボンニュートラル、ネットゼロへの公正な移行を支え、実現するとしている。当地北九州市においても、取引先企業の移行に必要な投融資の供給に努めて金融社会インフラとしての役割を発揮し、北九州市を始め、関係省庁や経済団体等と連携協調し貢献していきたい」

一般社団法人北九州銀行協会会長 野中宏之様

一般社団法人北九州中小企業団体連合会会長 池田幹友様

「我々北九州中小企業団体は協同組合を会員とする組織で、鉄鋼団地から商店街、建設業界などほとんどの中小企業の業界が携わっている。4年間コロナで苦しい思いをしてきたが、今後はGX推進コンソーシアムで、我々中小企業の力を大いに発揮できるんじゃないかと思い非常に期待している」

一般社団法人北九州中小企業団体連合会会長 池田幹友様

国立高等専門学校機構 北九州工業高等専門学校副校長 安信強様

「本校では約1000名 の学生が学んでいる。高専の大きなミッションは、『時代に合った技術者をどう育てていくか』。今回のコンソーシアムを機に、GXにも対応した技術者をしっかりと育成すると同時に、学校全体としてもGXの推進に力を入れていきたい」

国立高等専門学校機構 北九州工業高等専門学校副校長 安信強様

環境省地球温暖化対策課 脱炭素ビジネス推進室長 杉井威夫様

「北九州市にはこれまで、循環型社会のまさにモデルケースとしての取り組みを進めてもらったが、今後はGXのモデルケースともなることを大いに期待している。環境省としても全力で支援する」

環境省地球温暖化対策課 脱炭素ビジネス推進室長 杉井威夫様

経済産業省九州経済産業局資源エネルギー環境部電源開発調整官 野尻純一郎様

「経済産業省は、GX推進に係るさまざまな支援策を拡充し取り組みを進めている。九州経済産業局はそういった取り組みを地域で展開していくために、制度の広報および情報提供を行いながらGXを推進している。引き続き産学官金への取り組みで中小企業のGX推進をサポートしていきたい」

経済産業省九州経済産業局資源エネルギー環境部電源開発調整官 野尻純一郎様

福岡県商工部新産業振興課企画官 境野寛様

「国の方では2050年のカーボンニュートラルを進めており、北九州市でも多くの企業の皆様に関心を持っていただいている。コンソーシアムに参画することで、県が持っているさまざまな支援制度を企業の皆様に知っていただき、活用していただきたいと考えている。県と北九州市が連携を強めることで、北九州市の産業振興に貢献したい」

福岡県商工部新産業振興課企画官 境野寛様

国立研究開発法人産業技術総合研究所エネルギー環境領域長補佐 羽鳥浩章様

「私ども産総研は、温暖化対策を始めとする社会課題の解決に向けての研究開発に取り組んでいる。エネルギー環境の分野では、2050年のゼロエミッション社会の実現に向けてさまざまな技術開発を進めている。このコンソーシアムを通して、世界のカーボンニュートラルに向けた技術の共有等を図っていきたい」

国立研究開発法人産業技術総合研究所エネルギー環境領域長補佐 羽鳥浩章様

公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業化センター副センター長 小村知子様

「当センターは、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、産学官民による研究開発を支援し、事業化を推進している。資源循環に伴う省エネルギーの効果はカーボンニュートラルとも大変密接に関係しているので、このコンソーシアムで産業界、経済の健全な発展に貢献していきたい」

公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業化センター副センター長 小村知子様

公益財団法人地球環境戦略研究機構北九州アーバンセンター所長 鹿毛浩之様

「従来から北九州市とは環境問題や人材育成などで協力関係を築いている。このコンソーシアムで、我々が持つリソースで協力できるのではないか。地域の経済、特に新しい産業の普及に尽力していきたい」

公益財団法人地球環境戦略研究機構北九州アーバンセンター所長 鹿毛浩之様

株式会社日本政策投資銀行九州支店企画調査課長 後藤明様

「政府系金融機関の一つとして、響灘における洋上開発、洋上風力プロジェクトに資金提供するなど、北九州市には既に支援を進めている。加えて今年の春先に、『地域×トランジション』というレポートを発行し、その中で北九州こそ風力発電産業の集積する適地ではないかということを提言した。今回のGXの取り組みを進めていく上で産学官金の中の『金』という立場で支援したい」

株式会社日本政策投資銀行九州支店企画調査課長 後藤明様

顧問を務める東京大学未来ビジョン研究センター高村ゆかり教授、江守正多教授からはビデオメッセージが届きました。

COP28参加のためドバイに滞在しているという高村教授は「先日、北九州を訪問したときに官民学そして金融の大きな連携の動きと熱意を感じた。北九州は、明治の時代から日本の経済発展の原動力となってきた地域の一つで、さらにはアジアへの窓口として、大きな存在感を持つ。今回、武内市長のリーダーシップのもとに、この北九州GX推進コンソーシアムが、実質排出ゼロ・カーボンニュートラルで、持続可能な社会の構築の大きな原動力となり、地域の活性化そして日本の産業の大きな構造転換の担い手となっていただくことを期待している」と話しました。

顧問を務める東京大学未来ビジョン研究センター高村ゆかり教授

江守教授は「産業というものはこれまで我々の生活を豊かにしてきた反面、温室効果ガスを出して温暖化の原因を作ってきた側面を持つ。今後は温暖化の解決策を作るような産業に大きく生まれ変わる必要があり、これは地域全体にとっての大きな仕事であると認識している。かつて深刻な公害問題を克服した北九州市で、日本のお手本、世界のお手本となるような変化を起こしていただきたい」と期待を寄せました。

顧問を務める東京大学未来ビジョン研究センター江守正多教授

北九州市議会もコンソーシアムをバックアップ

続いて、田仲 常郎北九州市議会議長による挨拶。「北九州市では、これまで長年にわたり地球的規模で進んでいる環境問題の解決に向けて、国に先んじて、市民や企業と一緒になってさまざまな取り組みを進めてきた。環境先進都市北九州市としては、この分野でのリーディングシティとして、国や県の関係機関との連携のもと、国内でも最先端の技術研究が進められている大学等の皆様の力添えをいただきながら、北九州GX推進コンソーシアムでの取り組みが大いに躍進することを期待している。企業や金融機関にとっても、カーボンニュートラルを成長の機会と捉え、GXによる企業の成長に繋がるよう、市議会としてもバックアップをしていきたい」と述べました。

田仲常郎北九州市議会議長

「北九州GX推進コンソーシアム」設立趣旨と取り組み内容

北九州市産業経済局 池永紳也局長が「北九州GX推進コンソーシアム」設立趣旨と取り組み内容を説明しました。

北九州市産業経済局 池永紳也局長

まず、コンソーシアムが目指していくこととして下記3点を挙げました。

  1. 学術研究都市の最先端の研究開発により国内外の受益投資を呼び込む
  2. カーボンニュートラルが変革の成長のチャンスだと地域企業の経営層の意識を変化させる
  3. ビジネスモデルの変革を進めてカーボンニュートラルを前提とした社会経済活動に備える

そして、北九州GX推進コンソーシアムが産学官金オール北九州でGXに挑戦するにあたって4つの視点で取り組みを進めると発表。

  1. 最先端の研究開発社会実装
  2. GX関連産業の集積
  3. 人材の育成
  4. 地域企業のカーボンニュートラルやグリーン成長に向けた支援

さらに、このコンソーシアムのスタートダッシュとして4つの具体的な取り組みを行うとしました。

1.先端テーマ別の研究部会設置

学研都市で進めているようなカーボンリサイクル、マテリアルなどの部会や、サーキュラーエコノミーなどをテーマとした資源の循環に関する部会を設置。また、企業の若手研究者や学生等を中心とした未来議論部会などの設置も進める。企業からのニーズの高い、Scope3におけるCO2の算定方法を学ぶための部会も設置。会員からの要望も踏まえ、順次いろいろな部会を増やしていく。

2.ワンストップ相談窓口開設

企業からの相談窓口を設け、GXの知識技術を有する専門家が実際に企業を訪問する伴走支援を行う。
九州電力や西部ガスなどのエネルギー企業、それから公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)や環境テクノスや、メンバーズなどのコンサルタント企業、デンソー九州やドーワテクノスの地元企業、三菱UFJフィナンシャル・グループ、東京海上日動などの金融機関などが専門家として参画。随時拡充予定。相談は4回まで無料。

3.GXのビジネススクール開講

令和6年1月19日から3月まで、GXに関して網羅的に経営者に知っていただきたいカリキュラム構成で開講。スクールの仕上げには、GXに関する各社のアクションプランの作成に取り組む。先着20社、各社2名まで受講可能。

4.地域企業のCO2把握支援

自社のCO2排出量を把握して次のアクションに踏み出すために、市内の2,000社に対してCO2排出量可視化のツールを無償提供。

環境省、九州経済産業局、IGESによる基調講演3本を実施

休憩をはさみ、基調講演を3本 実施しました。
環境省脱炭素ビジネス推進室長杉井威夫様による「地域脱炭素の推進について」。2050年ネットゼロに向けた動向や地域脱炭素の推進と支援策、中小企業の脱炭素化について話しました。

環境省脱炭素ビジネス推進室長杉井威夫様の基調講演「地域脱炭素の推進について」

続いて、九州経済産業局カーボンニュートラル推進・エネルギー広報室長 仁田純一様による「九州地域のカーボンニュートラル推進に向けて」。カーボンニュートラルに関する国の動きや企業がカーボンニュートラル/GXに取り組む必要性、九州の現状とポテンシャル、提供されている支援施策などを実際の事例を交えつつ紹介しました。

九州経済産業局カーボンニュートラル推進・エネルギー広報室長 仁田純一様の基調講演「九州地域のカーボンニュートラル推進に向けて」

最後に、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)森尚樹様による 「金融界が取組む脱炭素~地域企業に及ぼす影響と機会~」。講演の中で「5つのメッセージ」として下記を紹介しました。

1.投資家は、ESGの観点から企業を選別している
2.投資家や金融機関は、企業に対して脱炭素の取組みの働きかけを強める
3.グローバル企業は、サプライチェーンの企業に対して脱炭素対応の情報開示要求を強める
4.金融機関は、中堅中小企業に対して脱炭素への対応について支援を強化する
5.アジアの脱炭素化は、北九州企業にとってビジネスチャンスとなりうる

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)森尚樹様の基調講演 「金融界が取組む脱炭素~地域企業に及ぼす影響と機会~」

その後、IGES藤野純一様がアラブ首長国連邦(UAE)ドバイから、11月30日から12月13日まで行われた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」をレポートしました。

IGES藤野純一様が「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」をレポート

基調講演終了後には100名を超える参加者による交流会を実施

基調講演終了後はイベントホールに場所を移して交流会を開催。100名を超える参加者が各テーブルで談笑するなど、終始和やかな雰囲気で会が進みました。

公益財団法人北九州産業学術推進機構 専務理事 江副春之様による乾杯で交流会がスタート
談笑する参加者たち
名刺交換も活発に行われていました