
ギラヴァンツ北九州は2026年6月22日、増本浩平監督との契約を解除し、J2・J3百年構想リーグをもって解任したことを発表した。後任人事については準備が整い次第発表するとしている。
2023シーズンをJ3最下位で終えたギラヴァンツ北九州に、増本浩平監督が就任したのは2023年12月のことだった。「なんの実績もない私にチャンスを与えていただいた」——解任コメントでそう振り返った言葉が示すとおり、当時の増本監督にトップチームでの監督歴はほとんどなかった。しかしギラヴァンツ北九州は、若き指揮官にチームの再建を託した。
2024シーズン新体制発表会で増本監督は「ゼロからのスタートなので、プレースタイルなどこれから構築しなければならないことがたくさんある」と語った。その言葉どおり、前年のJ3最下位からチームを組み立て直す仕事が始まった。それは単なる戦術の話ではなく、崩れたクラブの空気そのものを変えていく作業だったはずだ。
ホームでの開幕戦を落とした後、勝ち星を重ねられず1勝3敗3分けで迎えた、ホームのFC琉球戦。長谷川光基のゴールなどで2-0とホーム戦初勝利を挙げた後、増本監督は「小倉の夜は熱い!」と力強く語った。最下位から始まったチームに明るい兆しが見えた一戦だった。その後、6月は3勝2分けという結果を残し、J3月間最優秀監督賞を受賞。夏場以降はやや失速したものの、最終節までJ2昇格プレーオフを争い7位でフィニッシュした。

2025シーズン新体制発表会では「目標としては優勝しか考えていない」と宣言した。開幕から5戦を3勝2敗で乗り切ったが、うまく上昇気流に乗れずに、リーグ戦を17勝5分16敗・勝点56の8位で終えた。それでもミクスタで積み重ねた記憶はいくつもある。5月31日の宮崎戦でのアディショナルタイム劇的同点弾、10月25日のFC琉球戦での同級生コンビ連弾による劇的勝利——増本監督が「前向きな矢印」と表現したチームのエネルギーが、ピッチに宿っていた瞬間はいくつもあった。
2シーズン連続でJ2昇格を逃しながらも、クラブは続投を決定した。12月17日の続投発表で増本監督が残した言葉は、今となっては重く響く。「今まで以上に鐵の覚悟をもって成長、前進し、この2シーズンの悔しさを忘れずに更に厳しく強く、ハートが灰になるまで北九州らしく戦い抜きたい」——チャントの歌詞を引用して語ったその覚悟は本物だった。
しかし、3年目のJ2・J3百年構想リーグでは、開幕から6連敗と大いに苦しんだ。その後、山口、琉球に連勝するも、その後勝ち星は伸びず、4勝11敗3分け。勝点15でWEST-B最下位に。プレーオフラウンドでも連敗して最終順位は40位となった。
4月の鳥栖戦でも、山口との関門海峡ダービーでも、勝利をつかみきれない試合が続いた。それでも会見での増本監督の姿勢は、最後まで変わらなかった。まずサポーターへの感謝から始まるのが増本監督の総括のお決まりだ。質問者には、体を向けて答えてくれる。そして、意図を汲みながら、聞きたかったこと以上を返してくれる。——何度も会見に足を運んで、そのことを痛感した。戦術よりも先に、人としての誠実さがにじみ出る監督だった。結果が伴わなくなった時期も、その姿勢だけは崩れなかった。
石田真一社長は「増本監督がこれまでクラブのために注いでくださった情熱とご尽力に、クラブを代表して心より感謝申し上げます」と述べた上で、「現在の状況を招いた責任を、増本監督一人に負わせることはできない。監督にチームを託したクラブ、そして代表である私自身にも大きな責任がある」と言葉を続けた。クラブとしての誠実さもまた、伝わってくるコメントだった。

増本監督は「あの心地良いスネアのリズムとチャントが聞けなくなるのはとても寂しさを感じています」「経験させていただいた事、皆様からいただいた言葉、想いは全て私の財産になりました」「結果は望むものではありませんでしたが、このクラブで監督を務めさせていただけた事は私の誇りです」とコメントしている。
後任人事は未定。クラブは準備が整い次第発表するとしている。
最下位からの再建、月間最優秀監督賞、最終節までもつれたプレーオフ争い——増本監督がこの街にもたらしたものは、数字だけでは測れない。会見のたびに感じた、サポーターへの感謝を忘れない誠実さ。質問者に体を向けて、聞きたかったこと以上を返してくれるあの姿勢。それがギラヴァンツというクラブの空気を変え、ミクスタに人を呼び戻した。結果を出せなかった3年目の重さは誰よりも本人が知っているはずで、だからこそ「自身の力不足を痛感する」という言葉は真っ直ぐに届いた。
増本監督、2年半本当にお疲れ様でした。次の場所でも、あの誠実さで。

