【やっぱりおいしい北九州】cui-daore cafe（小倉北区）

食を通して北九州市の良さを伝える書籍「おいしい北九州」の著者、東恭子さんが新たに開拓した飲食店を紹介する企画【やっぱりおいしい北九州】。北九州市内の“おいしい”飲食店を素敵な記事と写真で紹介します!!

小倉北区古船場町の「くいだおれ本陣」。昭和33年に田川で始めたカウンター形式のおむすびの店がルーツという老舗の居酒屋だ。繁華街がすぐそばという場所にもかかわらず、隣は「小倉の天神様」菅原神社、向かいには130年の歴史をもつ日本庭園で有名なホテルという街の喧騒を感じさせない立地で、小倉の街なかでも穴場的な根強い人気を集める店である。

そんな「くいだおれ本陣」が従来の居酒屋営業と並行して、新業態のcui-daore cafeをオープンしたのは2021年3月19日。お酒を飲まなくても、少人数やおひとり様でも気軽に利用してもらえるようにと昼のカフェ営業を開始した。方向転換の直接のきっかけは新型コロナ感染症の拡大だったが、
「コロナ以前から居酒屋という業態が時代に合わなくなってきているように感じていました」
と言うのは豊島直子さん。店を引き継ぎ三代目となる。常々「何か変化をつけなければ」と考えていた矢先のタイミングで決断を促したのがコロナ禍だったという。

cui-daore cafe 店内

カフェ営業を始めるにあたり、何か目新しく面白いものをと考えた結果、メニューの主役はくいだおれ本陣の原点であるおむすびに決定。デザートやスイーツにはミルクセーキやメロンクリームソーダなどの昔懐かしいメニューを揃えた。
「田川には長い間喫茶店文化が根付いていているんです。ここでその文化を伝えていきたいという気持ちもあって、昔から親しんできた喫茶店メニューをお出ししています」。
このところ静かに続く喫茶店ブームともちょうどマッチし、客からの評判も高い。

ミルクセーキ　620円

「選べるおむすび定食」は30種類以上もあるおむすびの中から3種類をチョイス出来る。明太子、南高梅、紅しゃけなどおむすびの定番から、牛すき半玉、豚角煮あぶりといった珍しいものまで揃っており、とにかくどのおむすびも美味しそうなので悩んでしまう。そして組み合わせを考えるところまで含めてこの定食をいただく醍醐味かもしれない。
テーブルに届くのは豪華なお膳。メニュー表には小鉢2品と書いてあるが、ぱっと見ただけでも2品以上はある。香ばしい海苔の匂いに食欲が刺激される。

選べるおむすび定食　1380円

ごはんのふっくら感を残し、ちょうどいい塩梅に握りられたおむすびはさすがプロが作ってくれたもの。個人的にはシンプルな具材のおむすびほど握り具合や塩加減などのバランスが抜群であることがわかるので、創作おむすびだけでなく、定番おむすびも食べてみて欲しい。
食後は昭和レトロが古くて新しい、まろやかな味わいのミルクセーキで締めくくればもうお腹いっぱいで大満足だ。

プロのおむすびは絶品……!!

おむすびやデザートなどテイクアウトできるメニューも多数あるので、おうちごはんやお土産にも利用できる。定食やカフェメニューは、昼間だけでなく夜の営業時間でも利用できるのもありがたい。

お持ち帰り可能なメニューも多数

周辺に居住している人には店の前が犬の散歩コースという方が多いそうで、愛犬と一緒に店を利用したいという声をよくもらうことから、テラス席を使った「わんちゃんデー」のような計画も進行中。他にも新しい事業形態の実施に向けて構想を練っているところだという。
味噌や出汁など創業以来のものを使い続け、今も変わらずすべて手作りのものを提供しているくいだおれ本陣。「和食の良さをこの先も伝えていく」という基本は継続しつつ、時代に合わせた変化を加えていきたいという豊島さん。今後も歴史を繋いでいく店の姿を追っていきたい。