北九州市に来たばかりで知り合いがいない、などの理由で、いわゆるソロ活を余儀なくされる機会も多々あるかと思いますが、初めてのお店に一人で入るのはなかなか勇気がいるものです。
そこで、一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のカウンターのあるお店をご紹介していきたいと思います。
店主さんとおしゃべりしたり、他のお客さんと仲良くなったり。 “一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。
【CAFÉ HAYASHI】
最初の一歩
JR門司駅周辺は最近新しいお店がどんどん増えており、味わいのある老舗と相まって街散策が楽しいエリアになっています。
今回ご紹介する【CAFE HAYASHI】も、門司駅から徒歩10分ほど、飲食店や個人商店が立ち並ぶ通りを抜け、立派な神社を過ぎたあたりに突然現れるカフェ。全面ガラスでオシャレな店内がよく見えるので、見逃すことはないかと思います。赤い看板も目印に。
夜はさらに店内が明るく目立つので中の様子もわかり、初めての方でも入りやすいと思います。
豊富なメニューとやさしい価格
さっそくカウンターに座り、メニューを見てびっくり。や、安くないですか…!?
例えばフードはサラダ付きでこのお値段、さらにドリンクセットにしてもプラス150円!このご時世、めちゃめちゃありがたいですよね。
ドリンクメニューが豊富で、嬉しいカフェインレスの紅茶や、色が3色に変化するという見た目にも楽しいブルーマロウなど珍しいものも。アルコール類もハチミツのお酒や電氣ブランなど珍しい酒が揃っています。
そして私がどうしても気になったメニュー。『嶺岡豆腐』もほうじ茶が付いて500円!!迷わず注文しました。
嶺岡豆腐というのは牛乳をくず粉で固めたものなんだそうで、もっちもちでちゅるんとした食感がクセになりそう。嶺岡豆腐自体はやさしい甘さですが、かかっている生姜のソースが良いアクセントになり、相性ぴったりでとっても美味しかったです。
店主さん曰く、嶺岡豆腐は「すべてのはじまりのメニュー」。というのも、当初は嶺岡豆腐のお店をつくろう、と思っていたほど、思い入れのあるメニューなんだとか。ソースも色々試したそうですが、一番相性の良かった生姜ソースで落ち着いたそうです。
そんな店主さんの研究熱心さは他のメニューでも発揮されており、ちょうど取材に伺ったときも「季節のケーキを開発中だけど、ソースを何にするか決めかねている」と試行錯誤をくり返しているところでした。
そんなときは来てくれたお客さまに試食をお願いすることもあるそうで、そんな風にお客さまの意見を反映してメニューが決まっていくのって素敵ですよね。
ちなみにフードメニューは当初カレーのみだったそうですが、お客さまに「カレーばかりで飽きた」と言われたことから新しくピザも加わったんだとか(笑)。
それだけお店に通ってくれているということでもあるし、常連さんがいるということはCAFE HAYASHIがこの場所に馴染んできた証拠なんだと思います。
薬局がカフェへと生まれ変わった!
さて、そんなCAFE HAYASHIはどうやって誕生したのでしょうか?
お話を伺うと、こちらは元々、店主さんのおじいさまが営んでいたという薬局兼化粧品屋さん。美しいカップが並ぶ棚は実は薬品棚!そう言われれば、カップではなく薬が並んでいてもしっくりきそう。
入口にあるベンチも薬局の頃からあるものなんだとか。
基本的な内装は変えていないそうで、当時化粧品屋さんだった側の棚も、確かにそんな雰囲気。今はアート作品が飾られていますが、お客さまが熱心に見入る姿は今も昔も変わらないかもしれません。
そんな薬局から今のカフェに生まれ変わったのは、2021年の12月。その頃店主さんはのらりくらりと生活していたそうですが、お父さまやお兄さまに「いい加減にしろ」「何ができるんだ」と問い詰められたそう(笑)。
お菓子作りが好きだと答えると、気が付けばお店をつくる流れに。というのも、お父様は小倉でカフェを経営しているので、ノウハウはある。お兄様は建築系の学部を出ているので、お店をつくるのを手伝うこともできる。
そして何より、この場所がある。
そんなわけで、最初は冗談かと思った店主さんですが、少しずつ現実へと動き始めました。
ただ、薬局が閉店してから20年近く空き家だったので、天井に穴が開いていたり雨漏りしたりと状態は良くなかったそう。ですが、「儲かるかもわからないし」ということで最低限水回りと電気まわりだけを業者さんに頼んで、あとは全部自分たちで内装を手掛けました。カウンターやテーブルも、手づくり。実は床にも、手作りの苦労が見えます。墨を混ぜて塗ったところ浮いてきてしまったんだそうですが、それも味があるということでそのまま採用。むしろ、おしゃれな床に見えますよね。
コロナ禍が重なったこともあり、問い詰められてから2、3年ほどかけて現実にカフェをオープンすることになった店主さん。お店づくりももちろん初めての経験でしたが、「大変だったけど目に見えて進んでいくのは楽しかったし、全部自分たちでやったので達成感がすごかった」と語ってくれました。
オープン時に掲げたステートメント
店主さんはお店を始める際、CAFE HAYASHIをどんなお店にするか、というミッションのようなものを二つ考えたそう。
一つは門司の大里という地域でお店を通じて何かやりたい、ということ。
そしてもう一つが、お客さまや地域など、お互いにいい影響を与え合って、成長していきたいということ。
そんなミッションを早くも実現させるプロジェクトが動き出しているようです。
その名も『第0回 大里アートプロジェクト』。大里に住んでいる人たちに各々パーソナルな地図をつくってもらいそれをもとにディスカッションしたり、アーティストさんに大里をテーマにした作品をつくってもらったり。さらにCAFE HAYASHIの近くにある『関門トンネル記念館』の見学ツアーも⁉
めちゃくちゃ気になります。
プロジェクトのスタート地点にいるのは初めて、とのことですが、「うまくいくかよりやることが大事」と店主さん。門司や大里を盛り上げる一員になれたら、という思いは着実に実現へと近づいているように感じます。
アートも楽しめる癒しのカフェ
お店を始めて2年。「当初から通ってくれているお客さんも多いですし、いい刺激を与えてくれるお客さんもいて、“お客さんがいるから続けてきた”という感じです」と店主さんは語ってくれました。
メニュー表はお兄さまがつくってくれたもの、器の一部は店主さんの母方のおじいさまが営んでいた薬局に眠っていたもの、そしてお母さまがお店を手伝っていたり、父方のおじいさまの描いた作品を壁に飾っていたり、展示している絵はお父さまがプロデュースしていたり…と家族の絆も感じられるカフェです。
おひとり様でも、お客さまが少ない時間帯なら奥の広い部屋を使ってもOK!とのことですが、店主さん的には「カウンターに座ってくれるとお客さんと話せるのが嬉しい」そうです(笑)。
とても居心地の良いカフェですので、アート作品に触れつつ、のんびり過ごしてみてはいかがでしょうか。
詳細情報
北九州市門司区大里戸ノ上1丁目4-11
営業時間/水・木・日 11:30~19:00 金・土 11:30~21:00
定休日/月・火曜日
※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください
これからも一人でも初めてでも行く価値のある、そんなお店をご紹介していきますので、お楽しみに!
協力:門司港ゲストハウスポルト