ギラヴァンツ北九州、鹿児島と引き分け 街で感じた「上のカテゴリ」の空気

同点ゴールを決めた永井龍選手(写真右)

10月11日(土)、ギラヴァンツ北九州はホームのミクニワールドスタジアム北九州で鹿児島ユナイテッドFCと対戦した。

0-1で迎えた後半32分、永井が右足を振り抜き同点に。その後も相手ゴールを攻めたが、逆転には至らず、1-1の引き分けとなった。


この日の入場者数は7,509人。今季の観客数としては、8月16日に行われた「ギラフェス2025」に次ぐ数字だ。

「ギラフェス2025」に次ぐ今季2番目の来場者数

それもそのはず。朝から小倉城や小倉駅のあたりを、鹿児島サポーターが大勢歩いていた。鹿児島中央駅から小倉駅まで新幹線で2時間弱。日帰り観戦も十分可能だ。

西鹿児島駅から日豊本線の特急「にちりん」で7時間以上かかった昭和後期とはわけが違う。鹿児島中央行き最終の新幹線は22時03分発。試合後、ゆうに2軒ははしごできる時間だ。

それはさておき、今年もミクスタの北サイドスタンドは、1・2階とも鹿児島サポーターでびっしり埋まっていた。

スタンドを埋め尽くした鹿児島サポーター

普段、取材の撮影位置は相手キーパーの後ろ側だ。ギラヴァンツの選手がゴールを決めた瞬間を狙いやすい。私はいつもメイン側の看板の端から3枚目あたりを陣取っている。いつも背中にいるのは自軍のサポーター。

けれどこの日は違った。北サイドスタンド全面が鹿児島サポーター。相手のチャントを背に撮影するなんて、そうそうない。圧はあるけれど、ちょっとワクワクもした。

選手はやりにくさを感じたかもしれない。でも取材者には関係ない――はずだった。油断していて、開始直後の失点シーンを見逃してしまった。無念。

後半は南サイドスタンド前へ移動。聴き慣れたチャントを背にして撮ると、気分が上がる。とはいえこの時間帯はゴール前が日陰。カメラにはつらい光の向きだ。

試合後は、ミクスタの記者会見室でアウェー→ホームの順に監督会見が行われる。監督が試合を振り返り、そのあと質疑応答。

増本浩平監督

増本監督はいつも丁寧に、言葉を選んで話す。語彙が豊かで、落ち着いたトーンで、そして毎回サポーターへの感謝を忘れない。私は増本監督の言葉を聞きに行っているようなものだ。試合直後の監督の頭の中を、そのまま聞ける。こんな贅沢な機会はない。

前回ホーム戦の高知戦から、毎回一つは質問をしようと決めた。前回は高知の監督交代の影響について。今回は、岡野凜平選手のスタメン起用の意図と評価を尋ねた。

監督は、必ず質問者に体を向けて答えてくれる。これが意外とできていない監督も多い。意図を汲みながら、聞きたかったこと以上を返してくれる。

「彼のエネルギーやチームにもたらしてくれる前向きな矢印、元気などがチームに伝わってくれるといいなと思って(起用した)」と監督。久々のスタメンで動きが大きく見えた理由が、そこで腑に落ちた。戦術だけでなく、チームの空気まで見て采配していることがよくわかる。

岡野凜平選手

試合結果は1-1。勝ち点1しか奪えなかった。
けれどこの日は、鹿児島サポーターのおかげでスタジアムの景色が少し違って見えた。

上のカテゴリの空気を、ほんの少しだけ感じた一日。
試合前後に相手サポーターがこの街を歩く光景が日常になる日も、そう遠くない気がする。


次戦は10月19日(日)、香川県立丸亀競技場でカマタマーレ讃岐との一戦に臨む。