北九州市に来たばかりで知り合いがいない、などの理由で、いわゆるソロ活を余儀なくされる機会も多々あるかと思いますが、初めてのお店に一人で入るのはなかなか勇気がいるものです。
そこで、一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のカウンターのあるお店をご紹介していきたいと思います。
店主さんとおしゃべりしたり、他のお客さんと仲良くなったり。 “一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。
【epidemic】
最初の一歩
モノレールの城野駅から徒歩10分ほど、国道322号線旧道沿いを歩いていくと、ぽっ、と明かりが灯ったオレンジ色の看板が見えてきます。飲食街でもなく、ひっそりと佇んでいるお店ですが、実は知る人ぞ知る、人気のカフェバー【epidemic】。
まわりにお店がないからこそ、その看板やお店からもれるあたたかな光に、なんだか安心感を覚えます。
epiを知っている人なら同意してくれるのではないかと思うのですが、この、外観からすでにあふれている温かさや安心感は、epiそのもの。
初めて訪れてもすんなり溶け込める安心感がある、ふとしたときにepiが恋しくなるようなあたたかさがある。epiは常連さんが多いお店ですが、それはもちろん、初めてのお客さんの心を掴むからでもあります。一度訪れればハマってしまう中毒性の高い【epidemic】、その秘密は何なのか、探ってみたいと思います。
中毒性の正体
木をふんだんに使用し、やわらかな印象の店内。見上げると、天井にも木がたくさん!こちらはマスターが自分で、お店をつくったときに出た廃材を張り付けたそう。
カウンター以外にテーブル席もあり、広々としていてほんのり明るいので、カフェっぽい雰囲気があり、気を張らずリラックスできます。
美味しいお酒も豊富で、カウンターの向こうにはお酒がずらり。
ん?棚に何か書いてある。
お酒の説明・・・?というより、マスターのひとりごとのような文言がつらつらと。
お察しの通り、ちょっと変わったマスターなのですが、epiの人気はマスターの人柄あってこそ、と思っています。
気さくで、軽やかで、もちろんやさしくて、シャイなところもあって、ちょっぴりお茶目。
話を引き出すのがうまいし、人と繋げるのもうまい。
居心地のいい空間と、心地いいコミュニケーション。Epiにハマってしまうのは必然な気がします。
20年で培った心尽くしのサービス
Epiは来年で20周年!当時カフェブームがあり、北九州でも巷で人気のカフェがちらほらありました。「小さいお店だけどめっちゃ人が集まってるのがかっこよかった」、それがお店をしたいと思ったきっかけなんだそう。今みたいにしっかりしたコーヒーを出す文化もなかったので、コーヒーもお酒も飲めるカフェバーをしようと、epiをオープンしました。
実はマスター、その頃はお酒が飲めなかったというから驚き!なので最初はあまりお酒もおいてなかったそうですが、毎週通ってくれる同級生が毎回同じお酒のボトルを開けてくれていて、「毎回毎回これじゃいかんな」と思ってちょっとずつお酒が増えていったんだとか。「その人のおかげでお酒の幅が増えた」と語ってくれました。
最初は食事もなかったそうですが、オープン後に料理教室にも通い始め、今ではマスターの出す料理も人気のひとつ。
この日の料理はお任せにしたのですが、なんとビリヤニが出てきました…!本格的で美味しかったです。お酒もそれに合うものをお願いしたので、ご飯もお酒も進む進む。
最近は自分でパンも焼くほどの腕前になったマスター。お酒を楽しむだけでなく、料理もしっかり味わえるのは嬉しいですよね。
締めには美味しいコーヒーもいただき、大満足。ほっとくつろげるのは、マスターがお話上手なのもありますが、“おもてなし”を感じるメニューについ長居したくなってしまう、というのもあると思います。
2020年に移転、リニューアル!
さて、そんなepiは2020年に今の場所に移転しました。もともと前の場所はオープン時から開発エリアの対象となっており、いつかは離れないといけないと決まっていました。ただ、それもあって初期投資が安かったこともあり、とりあえずお店を始め、当初は「3年くらい経ったら移転しよう」と思っていたそう。大学からも離れているし、飲食街でもない。集客もあまり期待していなかったそうですが、近所に住んでいる人や仕事で近くに来ている人なども寄ってくれ、いつしか多くの人が訪れてくれるように。結局、その場所でやるのが楽しくなってきて気付けば十数年、epiはその場所で、愛されるお店へと不動の地位を獲得していきます。
しかし、その十数年まったく聞かなかった開発の話が2020年頃になって急浮上。移転を余儀なくされます。街中に移ることも考えたそうですが、ちょうど前のお店から数分の今の場所を見つけ、無事移転オープン。
長年愛されてきた土地で再オープンしたので、常連さんも安心したことと思います。以前よりお店も広くなり、バス停もパーキングも近くなったということで、新規のお客さまもさらに来やすくなり、今後ますます人気のカフェバーになっていくかもしれません。
エピデミックの意味
ちなみになぜ「エピデミック」?
店名を考える際、マスターの友人に「言葉が短くなるのがいいよ」と言われたそう。話している中で「エピって響きがいいね」となり、エピから始まる言葉を探してピンときたのが【エピデミック】でした。実は、流行病などと訳されあまりいい意味ではないそうなのですが、外国の人に「めっちゃ人が集まってるお店だったらかっこいい」と言われたらしく、まさにそれは、お店を始めるきっかけになった憧れのお店そのもの。
他にも、フランス語でエピは麦の穂という意味で、「そう言われたらウイスキーもビールもパンも麦だな」と腑に落ちたんだそうです。
今ではお客さんもみんな「エピ」と呼んでいて、それを聞くたびに、親しい友人をニックネームで呼ぶのと同じ感覚なんだろうなぁ、愛されてるお店だなぁ、と感じます。
20年、そしてこれから
移転したことで、「ようやく下積みがおわったな、今からだ、と思った」とマスター。
そして来年で丸20年。「コロナも物価高も経験できたから、もう大丈夫なんじゃないかな。自分たちがおじいちゃんおばあちゃんになったときまであれば、相当味のあるバーになると思うし、そうそう辞めることはない」と断言してくれたので、心底安心しました。
ちなみにマスター、一ヶ月ほど育休を取ったこともあるんです。そうやって家族を大事にしているところも素敵ですが、「最近育休を取る人も多くて、自分が体験すれば共感もできるし」とのことで、家族と同じくらいお店のことも考えていることも、数十年続けてこれて、さらに愛されるお店になった所以かもしれません。
さて、しっかり長居して店を出たあと、名残惜しくてふと振り返りました。
目に入った看板をよーく見ると・・・
『くじけそうになるのは、がんばっている証拠です』の文字。
あぁ、沁みる。しばらく日常をがんばって、くじけそうになったら、またマスターに話を聞いてもらおう。
一度でもエピに行けば、その中毒性は納得してもらえると思いますが、もちろん初めての方にもおすすめです。マスターがいつでも、笑顔で出迎えてくれますよ。
詳細情報
北九州市小倉南区城野4丁目4-31
営業時間/19:10~1:00
定休日/月・火曜日
※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください
これからも一人でも初めてでも行く価値のある、そんなお店をご紹介していきますので、お楽しみに!
協力:門司港ゲストハウスポルト