2022年からプロ野球独立リーグ「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」に参入した福岡北九州フェニックス(2023年シーズンより北九州下関フェニックス)の職員さんにインタビューしてきました。第2回は球団副代表を務める藤井直樹さんにお話をうかがってきました。
ーー藤井さんがフェニックスで働くようになったきっかけをお聞かせください
前職は旅行会社JTBで修学旅行の企画や添乗に携わる仕事をしていました。9年間勤務し、ある程度の達成感と同時に、これまでの経験を活かして新しい業界へチャレンジしてみたいという気持ちが芽生え、自分の力や存在感を発揮できそうな企業への転職を考えていました。
そんなとき、小学校から続けていた「野球」と、大学(北九州市立大学)時代を過ごした「北九州」に関わることができるフェニックスの球団設立のニュースと求人を見かけ、応募しました。
ーー入社する前のイメージと違った点はありますか?
堀江貴文さんがオーナーということもあり「ホリエモン球団」というイメージで入社したので、ハイレベルで特別な能力を持った人しか通用しないのではないかと思っていました。しかし、実際に入社してみるとそのような能力よりもスタートアップの企業に必要なスピード感や実行力、費用対効果の高さなどの基礎力が日々求められています。会社のメンバーは地元出身者や様々な企業から転職をしてきた同じ境遇の方々が多く、職場の雰囲気にはすぐになじむことが出来ました。
ーー藤井さんは普段はどのような仕事をしているのでしょうか?
球団の運営に関する部分を任されています。入社当初から「球団内のことを聞けば何でも分かる存在になってほしい」と社長に言われていました。
営業、広報、総務、経理、選手の動向など、情報を満遍なく持っているようなイメージですね。野球でいうとユーティリティープレーヤーでしょうか。
シーズン中は、主に試合実施に向けた野球場利用の手続きやスタッフの役割分担、キッチンカー集めやイベント企画などをしています。オフシーズンは、企業版ふるさと納税やトークン発行型クラウドファンディング「FiNANCiE」の企画運営やお世話になっている役所・スポンサー様への営業回りをしています。
ーー今年一年を振り返って、大変だったことを教えてください
シーズン中は、初年度ということもありマニュアルが無いため、常に一歩二歩と先を見据えて準備することが難しかったです。
コロナ禍や宣伝不足などの理由で集客やボランティア募集も難航したり、複数の球場を利用するため試合時にはイベントやキッチンカーの調整が難しかったりと、大変苦労しました。雨で試合が中止になったときには関係機関への連絡にかなり気を遣っていました。
野球をする環境を作る難しさと大変さについても日々感じているところです。
私は福岡県立筑紫高校の野球部に所属していました。部が発足して5年と間もなかったため練習する環境が十分ではありませんでした。野球道具も十分にそろっておらず、練習もいろいろな場所を借りながら行っていたんです。設立間もないためにさまざまな場所で練習や試合をしているフェニックスを見て、高校時代を思い出しています。
1年を振り返ると、創立100年を越えるJTBで学ばせてもらったことを活かせた場面が多かったなと感じます。創立したばかりのフェニックスでしか経験できないことも多くあり、大変ではありますが今後も有意義にしたいです。
ーー仕事で嬉しかったことはありますか?
コロナ禍でイベント等への出演が一切なくなっていたという母校の北九州市立大学のチアリーダー部の話を耳にし、試合でのパフォーマンスをオファーしたところ、とても喜んでくれたことです。球場のお客様の前で踊っているときのキラキラしている目や笑顔を見て、とても感動し、力になれて良かったと思いました。
その他に、試合前のスターティングメンバ―登場の時に地域の少年野球チームの子どもたちが一緒にグラウンドに出る「キッズスターター」も印象的でした。子どもたちも保護者の皆様も喜んでくださり、今後は野球人口の増加に対してもフェニックスが力になれたら嬉しいです。
ーー藤井さんから見て2022年のフェニックスはどんなチームでしたか?
独立リーグに在籍している選手は、NPBに行くことを目標としていたり自分の成績を上げることを一番に考えたりと、選手が一匹狼になりやすいのかなと思っていました。しかしフェニックスは、ひとりの成功を全員で喜ぶチームでした。いつも明るく楽しそうで、見ていて自然と応援したくなるチームだと思います。プライベートも含めて選手同士の仲も素晴らしく良いんですよ。
あとは打撃力が高いので、試合を見ていてエキサイティングで楽しかったです。なんと昨シーズンはチームの1試合当たりの平均安打数が10安打でした。
ーー独立リーグの試合の特徴を教えてください
試合を行う地域にある大学のチアリーダー部やダンススタジオ、少年野球チーム、アーティストなどとコラボしながら試合を作り上げるのが独立リーグならではだと思います。
選手と一緒に守備位置につくキッズスターターが地域の少年野球チームで、ボールボーイを務めるのが地域の中学生。ダンスパフォーマンスは、地域のダンススタジオの子どもたちで、歌や演奏を披露するのは地元出身のアーティストさん。始球式を行う市長さんやスポンサー企業の社長さんもほとんどが地域の方です。ボランティアについても地域の高校生や大学生、専門学生と、それぞれの世代の方に協力してもらっています。
加えて西岡監督が発案した、攻撃中にミュージックが流れている雰囲気も斬新で魅力的ではないでしょうか。音楽を流しながらプレーするスタイルは、日本だと野球よりもバスケットボールやフットサルなどの演出に近いかもしれません。さらに、試合後に選手がお客様を球場出口でお見送りするのもNPBでは見られない光景です。選手をより近くで応援できると好評です。
野球観戦がメインではないお客様にも、アーティストの歌やダンス、キッチンカーでの食事を通して総合的に楽しんでいただけるような場の提供を心がけます。
ーー2023年の抱負をお聞かせください
昨シーズンの開幕時には1試合の動員目標を3,000名に設定していたのですが、最終的には最高で1,300人弱という結果に終わりました。2023年は、まず2,000名そしていずれは3,000名以上の集客を達成したいと思っています。
地域でのチームの認知がまだまだ足りないことを肌で感じているので、もっと多くのお客さんに見てもらうための活動をしていきたいと考えていますし、熱い応援をしてくださるスポンサー様やお客様の満足度もアップしたいです。
将来は、今後更なる経済成長が期待される中国や台湾、韓国とアジアリーグ結成を目指したいです。常にアンテナを張りながら、基盤をしっかり作る2年目にします。
ーー最後に、北九州市民の方にメッセージをお願いします。
参入初年度からリーグ戦において勝ち越しができたことには自信を持っています。西岡監督が強くて、応援したくなるような明るいチームを作っているので、ぜひ試合を観にきてください。普通にチケットを買うよりもファンクラブに加入をした方がかなりお得になりますので、ぜひホームページやTwitterからご覧ください。
2月頃にリーグ戦日程が公表となりますが、今シーズンは年間約80試合予定をしています。福岡ソフトバンクホークス3軍・4軍や昨年優勝の火の国サラマンダーズ、元福岡ソフトバンクホークスの内川選手が入団した大分B-リングス、新規参入の宮崎サンシャインズと熱戦を繰り広げ優勝を目指します。皆様、球場でお待ちしております。