9月17日(金)にJR九州ステーションホテル小倉にて、福岡北九州フェニックスの「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」正式加盟決定記者会見が行われた。
「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」とは
九州アジアリーグ(きゅうしゅうアジアリーグ)は、九州を活動地域とする日本のプロ野球独立リーグ。2021年より公式戦を実施している。一般社団法人九州アジアプロ野球機構(Baseball Fedaration Kyusyu、略称:BFK)により運営される。略称はKAL。
2021年9月からは、ヤマエ久野との命名権契約による「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」の名称を使用している。
(ここまでの出典:Wikipedia 九州アジアリーグ)
リーグを構成するのは熊本市に本拠地を置く火の国サラマンダーズと、大分市に本拠地を置く大分B-リングスの2チーム。2022年度より、福岡北九州フェニックスが参加し、計3チームとなる。
サラマンダーズの監督は、西武ライオンズをはじめパ・リーグ4球団で活躍した細川亨、そしてB-リングスは読売ジャイアンツ、ヤクルトスワローズで中継ぎ・抑え投手として活躍した廣田浩章。元NPBの二人が采配を振る。
会見では、創立者の堀江貴文氏が今後の福岡北九州フェニックスの事業展開について熱く語った。
なかでも「地方にはプロスポーツのコンテンツが足りない」「プロスポーツはすそ野が広がれば広がるほどレベルが上がっていく」「夢のアイデアより現実的なアイデアをたくさん実行する」という言葉が非常に印象に残ったので、ここでその内容を整理したい。
1.「地方にはプロスポーツのコンテンツが足りない」
堀江氏は、「地方にはプロスポーツのコンテンツがまだまだ足りない」と会見で繰り返した。
福岡県全体で見ると、プロスポーツチームは福岡ソフトバンクホークス(NPB)、アビスパ福岡、ギラヴァンツ北九州(Jリーグ)、ライジングゼファーフクオカ(Bリーグ)の4球団しかない。
※県内にはXリーグ(アメリカンフットボール)、Fリーグ(フットサル)、ラグビー新リーグのチームも存在するが、いずれも「プロリーグ」と名乗っていないのでここでは除外する
4球団のうち、北九州市に本拠を置くのはギラヴァンツ北九州のみ。
改めて考えると、北九州市にはプロスポーツのコンテンツが不足している。ギラヴァンツのホームゲームは、多くて月に3回。
市内でプロスポーツに触れる機会に乏しい北九州市民ではあるが、今回の福岡北九州フェニックス設立により「プロスポーツに触れる機会」を増やすことになる。
九州アジアリーグの試合数は2021年の計画で1チームあたり60試合。仮に2022年も同様の試合数が行われ、その半分が北九州市及び近郊で行われるとなると、北九州市民が「プロスポーツに触れることのできる機会」が30回増える。
「これからローカルのプロスポーツ、エンタテインメントがより必要とされてくる中で、そこに必要なものを作らなければならないと思っている。よく言えば使命感で、悪く言えばおせっかい」と語る堀江氏、及び球団スタッフが、北九州市民にどのような機会、体験を与えてくれるのか、楽しみに待ちたい。
2.「プロスポーツはすそ野が広がれば広がるほどレベルが上がっていく」
どうしても考えてしまうのは、「福岡にはホークスがあるじゃないか」ということ。堀江氏もよく言われるという。
この意見に対して堀江氏は「プロスポーツはすそ野が広がれば広がるほどレベルが上がっていくと確信している」と主張する。
現在、日本国内で独立リーグに所属する野球チームは福岡北九州フェニックスを含め25チーム。(無所属の琉球ブルーオーシャンズ、及び女子チームは除く)
既にNPBのチームが存在する埼玉県、神奈川県、兵庫県、大阪府でも独立リーグのチームが活動していることを考えると、今回のケースは決して珍しいことではない。
「ガチのプロ野球ファンを取り込んでいくためにまだまだやれることがあると思っている。プロ野球を大好きな人とそうじゃない人では後者の方が圧倒的に多い。後者の人たちを球場に呼んだり、試合を見てファンになってもらう余地はある」と堀江氏は語った。北九州市においても市場を開拓できる余地はあるのではないだろうか。
3.「夢のアイデアより現実的なアイデアをたくさん実行する」
会見の質疑応答で、今後のアイデアについて尋ねられた堀江氏はこう答えた。
「夢のアイデアより現実的なアイデアをたくさん実行したいと思っている。具体的な案は常にオンラインでもオフラインでも議論している。うまくいけば続け、ダメなものはやめるという小回りが利く新しい球団なりのやり方でアイデアを実行し、継続する仕組みを作りたいと考えている」
突飛なアイデアで事業を展開してきたというイメージの強い堀江氏であるが、少なくとも本球団の事業に関しては地道な活動を行うことを明言した。
「これからの地域のスポーツをどうやって盛り上げたらいいのか、実験的にいろんなことを試していきたいと思う」という堀江氏の言葉に頼もしさを感じるのは私だけだろうか。
北九州市への思い
一方で、北九州市への思いについて聞かれた堀江氏は「今回、福岡のどこかで球団を作るという流れの中で、(オンラインサロンのメンバーを含め)縁あって北九州市に本拠地を置くことになった」と発言。
「北九州市が安全な街になってきたのは、プラス材料だと思う」「九州の他県の最大都市よりも人口が多くてポテンシャルもあると考えている」などと、北九州市を高く評価した。
北九州市民が福岡市に対して複雑な気持ちを抱くことへの理解も示しており、北九州市及び近郊での活動を意欲的に行っていくことが感じられた。
今後チームがどのように北九州市内、市民に浸透していくか注目したい。
福岡北九州フェニックスとNPBとの関係
NPBとの関係については「NPBは育成制度を使って選手を囲い込んでいるが、試合経験を多く積めないのが難点。たまたまポジションが空いていないなどの理由で機会を得られない人が、経験を積む場所となっていくんじゃないかと考えている」と述べた。
福岡北九州フェニックスの本拠地
本拠地については河西代表が発表。
- 試合会場は、北九州市内か下関市を含め近隣の自治体での開催を計画している
- 来年の具体的な試合スケジュールが決まってから各球場と交渉する
- 高校野球、大学野球、社会人野球の試合の状況を踏まえて、空いているところで試合を行う
- 本拠地は北九州市だが、ホームグラウンドは当面の間持たない
これに、「将来的にはボールパークを作りたい」と堀江氏が補足した。
5月の記者会見では「北九州市民球場を中心とした活動」と発表していたが、今回の発表を聞く限り、スタジアム問題はやや後退したように感じた。
実際、北九州市民球場では、高校野球や社会人野球が数多く行われていることから、定期的な試合開催は難しいのではないだろうか。
そうなると、北九州市内でプロの興行に耐えうる野球場は、大谷球場(八幡東区)だけとなる。NPB1軍の公式戦こそ60年以上行われていないが、2軍の公式戦は1997年に実施されている。広さも両翼102m、中堅122mと申し分ない。ただ、照明施設が設置されていないため、ナイターの開催は不可能である。
大谷球場と同じく北九州市立の門司球場、桃園球場は全面土のグラウンドであり、プロの興行を行うのは難しいだろう。
北九州市内にこだわらないのであれば、宮若市の光陵グリーンスタジアムや下関市のオーヴィジョンスタジアム下関(下関球場)が候補に挙がるのではないだろうか。
福岡北九州フェニックスのチーム編成
チーム編成についても同じく河西代表が発表した。
- 監督・コーチは交渉中で、決まり次第発表する。年内には決められるのではないか
- 選手は他チームと同様、25人程度を予定している
- 個別のスカウティングも行っているし、10月30日、11月3日にはトライアウトを実施する
- チームとしてはセカンドキャリアの支援にも力を入れていきたいので、そのあたりもアピールしながらリクルーティングを行っている
特に、セカンドキャリア支援について興味深い話が出たので、別の機会に紹介したい。
福岡北九州フェニックス 今後のスケジュール
10月下旬にはチームロゴ・エンブレムが決定、そして10月30日と11月3日には球団単独でトライアウトが行われる。
トライアウトは、YouTubeでの配信が行われるとのこと。配信の費用をクラウドファンディングで募っている。
そして、気になる監督・コーチの人選は年内に発表予定。
年が明け2022年の1月中旬には175Rが唄うチームのテーマソングを公開、2月中旬~3月中旬にはキャンプやオープン戦を行い、3月下旬にはシーズンが開幕する。
「まずは来シーズンの優勝を目指す」と意気込む福岡北九州フェニックスに注目したい。
さいごに
2004年のプロ野球再編騒動は、NPBの球団削減の流れで生まれたものであったことを覚えている方も多いはず。
当時、堀江氏は「これからは地方の時代だ、地方のメジャーなレジャーがバズる」と確信してNPBへの参入を企てたとのこと。
あれから17年が経過。チームの合併や削減を免れたどころか、お客さんが入らない、儲からないといわれていたパ・リーグは、現在北海道から九州までを網羅した全国的な優良コンテンツとなっている。
福岡北九州フェニックスも、数年後には優良なエンタテインメントコンテンツとなっているかもしれない。